◆◆◆◆ 9-86 鶴風の戦い(35) ◆◆◆◆
【 獰鵬天聖 】
「……むう……?」
獰鵬天聖は、首を傾げた。
【 獰鵬天聖 】
(……なすがままとは、どういうことだ?)
先ほど、暴風雨を起こして大軍を惑わせたのを見ても、この方士が非凡な力を持っているのは明らかだった。
にもかかわらず、
【 獰鵬天聖 】
(まるで、一方的にやられっぱなしとは……)
どうにも解せない。
【 獰鵬天聖 】
(あるいは……方術合戦の経験は浅い、か?)
いかに方術に長けていても、それを相手に応じて臨機応変に使いこなせなければ意味がない。
【 獰鵬天聖 】
(それなら、それで――)
こちらのやりたいようにやらせてもらうだけだ……と思った、その矢先。
――ポムッ……ボヨンッ……
【 獰鵬天聖 】
「……っ? なんだ、この音は――」
目を凝らすと、
【 獰鵬天聖 】
「――! これはっ……」
――ポヨンッ……ポヨヨンッ……
ギョクレンと霊獣の肉体が、綿のごとく柔らかくなっており、壁にぶつかる衝撃を拡散している……!
【 獰鵬天聖 】
「なるほど、肉体を変化させたか……! なるほど、それならしばらくの間はしのぎきれようが――」
――ゴォンッ! ゴオォッ……!!
【 獰鵬天聖 】
「……っ!? これはっ……風が、加速してっ……!?」
結界内の風勢がさらに激しくなり、ギョクレンたちの肉体がすさまじい勢いで風の壁に当たる――否、自分から激突していく!
【 獰鵬天聖 】
「なんとっ……風をみずから巻き起こしてっ――」
そしてついに、
――ドバァアッ!!
【 獰鵬天聖 】
「…………!」
内側から、風の結界が打ち破られた。
【 ギョクレン 】
「……ふぅっ……はぁっ……」
【 獰鵬天聖 】
「なんと、強引なっ……」
己の陣を力づくで破られ、獰鵬天聖は呆れつつ、旗色わるしとみて、
【 獰鵬天聖 】
「ま、時間稼ぎは十分のようだ……これにて失礼しよう――」
と、翼をはためかせて飛び去ろうとするが、
【 ギョクレン 】
「……逃がさない……」
【 獰鵬天聖 】
「……ううっ!?」
身体が動かない――
手足が、風でその場に釘付けにされている……!
【 ギョクレン 】
「……なかなか、便利な術……」
【 獰鵬天聖 】
「これはっ……我が〈烏籠〉を応用してっ……!?」
【 ギョクレン 】
「…………」
バリッ……バリバリッ……!
ギョクレンの手に、稲光が輝く。
【 獰鵬天聖 】
「……ま、待て、傷は負っていまい? ここは方士どうし、穏便に――」
【 ギョクレン 】
「……確かに、ケガはない。しかし――」
【 ギョクレン 】
「小牛姫を痛めつけたのは……許さない!」
――ドシュウッ!
【 獰鵬天聖 】
「……ぐっ! がっ……あっ……」
ギョクレンの放った雷が、槍のごとく獰鵬天聖の胴を貫く……!
【 獰鵬天聖 】
「……こ、好奇心、は……大敵……と、いうこと、かっ……」
そのまま、獰鵬天聖は力を失い、地上へと落下していった――
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