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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
385/421

◆◆◆◆ 9-85 鶴風の戦い(34) ◆◆◆◆

【 ギョクレン 】

「ええいっ、小牛姫しょうぎゅうきっ! これしきの結界、ぶち破ってみせるのでございます!」


【 小牛姫 】

「メェェェ……!」


 ギョクレンの命に応じて、霊獣・小牛姫が飛翔する――


 ――ボワワン……


【 小牛姫 】

「ンメェェェ……!」


【 ギョクレン 】

「……ぬわっ!?」


 空気の壁にぶつかり、あえなく跳ね返されてしまう。


【 獰鵬天聖 】

「ま……そう簡単に破れはせんよ。我が〈烏籠からすかご〉の陣は」


【 ギョクレン 】

「ぐぬぬっ……! ずる賢い真似をっ!」


【 黒猫 】

「…………」


 獰鵬天聖の肩の上の黒猫が、興味なさそうにどこか遠くを見ている。


【 獰鵬天聖 】

「さて……このまま、しばらく君を閉じ込めておけば、それで私の役目は終わりなのだが――」


【 獰鵬天聖 】

「――しかし、それだけでは、つまらんだろう?」


 バサッ……


 獰鵬天聖の翼が広がる。


【 ギョクレン 】

「…………っ!」


【 獰鵬天聖 】

「――“ラン”!」


 ――ゴオオオッ!!


【 ギョクレン 】

「……んぐううっ!?」


【 小牛姫 】

「メヘェェェッ……!?」


 結界内に、突如、凄まじい強風が吹き荒れる……!

 密閉された空間の中に嵐が巻き起これば、その中にいる者がどうなるかは明白で――


 ――ドカッ! ドォンッ!


【 ギョクレン 】

「――んぐっ!? くうううっ……!?」


【 小牛姫 】

「ンメェヘェッ……!?」


 ギョクレンは霊獣ともども、空気の壁に幾度となく叩きつけられる!

 一度の衝撃は弱くとも、何度も叩きつけられれば、積み重ねられる痛手は尋常ではない。


【 獰鵬天聖 】

「足止めしろ、と言われているが――」


【 獰鵬天聖 】

「――別に、片付けてはならぬ、とは言われていないのでね」


【 ギョクレン 】

「……ぐっ! うっ、このっ……うぐっ!?」


【 獰鵬天聖 】

「神仙だの方士だのというのは、不老不死になるのが大目的だ。それ以外のことは、ま、所詮は、余技よぎにすぎん」

 *余技……専門外の技術の意。


 悶絶するギョクレンたちを見ながら、獰鵬天聖は淡々と続ける。


【 獰鵬天聖 】

「だが、せっかく磨いた術――使ってみたいと思うのは、当然ではないかな?」


【 ギョクレン 】

「ぐっ……ぬううっ……!」


【 獰鵬天聖 】

「さて……こんなところか?」


 風が収まった。


【 ギョクレン 】

「くっ……はっ……小牛姫っ……大丈夫でございますかっ……」


 さんざん空気の壁に叩きつけられ、ギョクレンは朦朧となっている。


【 小牛姫 】

「……ン……メェェェ……」


 小牛姫と呼ばれた霊獣は、すっかり疲弊ひへいし、息も絶え絶えというありさま。


【 獰鵬天聖 】

「ふむ……やはり、損害はさほどではないようだ。風の壁で囲んでいる以上、仕方ないが」


【 ギョクレン 】

「ぐ、ぬぬっ……あんたっ……調子に乗るのもっ、いいかげんにするでございますっ……!」


【 獰鵬天聖 】

「多少は痛めつけることができても、致命傷にはならぬか……ならば、これならどうかな――“ゴウ”」


 ――ゴゴォオオオッ!


【 ギョクレン 】

「ぐっ!? ううぅっ……!?」


 先ほどの数倍の勢いの猛烈な烈風が、結界内を暴れ回る!

 そうなれば、ギョクレンたちは――


 ――ドォンッ! ドドドッ! バァンッ!


【 ギョクレン 】

「…………っ!」


 嵐に舞う木の葉のごとく翻弄され、何度となく空気の壁に打ちつけられていく……!

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