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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
379/421

◆◆◆◆ 9-79 鶴風の戦い(28) ◆◆◆◆

 ――〈繚乱りょうらんたるアシアンディーカ〉は、本来ならば、とうにこの世の者ではなかった。


 数年前、森羅しんらの国は内乱状態に陥った。

 このとき、彼女が属する〈天〉の一族は最大勢力を誇っていた。

 アシアンディーカは一族の中でも高貴な生まれであり、次期女王候補とすら目されていたのである。


 ……だが、最終的に内乱を勝ち残り、森羅の覇権を握ったのは、現女王・〈たおやかなるアグラニカ〉が率いる〈火〉の一族であった。


 母や姉たちはことごとく戦場にたおれ、生き残ったアシアンディーカもまた、囚われの身となった。


 彼女はまだ幼かったが、叛逆者の子として首を斬られるさだめであった。

 しかし……


【 アグラニカ 】

『――この娘に、なんのとががありましょう? わらわが責任をもって、彼女を導きましょう――』


 戦後処理において、アグラニカによって助命されたのである。


 そればかりか、女王はアシアンディーカを罪人ではなく、妹分として身近に置いたのだ。


 これは政治的な判断――天の一族がなお無視できないほど大きな影響力を持っていること――もあったが、アグラニカの温情にほかならない。

 もっとも、アシアンディーカがそれを素直に受け止めたかといえば、そうではない。


【 アシアンディーカ 】

『幼いからとて、情けをかけ、生き恥をさらさせるとは……!』


 と、当初は女王に反発していた。


 しかしあるとき、森羅全土を流行り病が襲った際、心身を削って人々を癒すアグラニカの姿を見て、心服し……命を捧げるに相応しい相手とすら思うようになったのである。


 そして、今――




【 アシアンディーカ 】

「本来、なかった命を……姉者人あねじゃびとに、拾っていただいたっ!」


【 アシアンディーカ 】

「ならばっ……その恩に報いるのが――やつがれのっ……さだめっ!」


【 バイシ 】

「ぬうっ……この、気迫っ……!」


 ――ガキィンッ! ギィィンッ!


 文字通り命を削る猛攻を見せるアシアンディーカ……しかし、それでもなお、その太刀はバイシには届かない。


【 アシアンディーカ 】

「……はーっ……ハァ、ハァアッ……!」


 限界を超えて酷使された肉体は悲鳴を上げ、あちこちから血がしたたり、痙攣けいれんが起きている。


【 アシアンディーカ 】

「もはや……ここまで、かっ……ならばっ!」


【 アシアンディーカ 】

「せめて、貴様もろともっ……地の底に、引きずり込んでくれるっ……!」


 最期の突進を繰り出さんと、左右の剣を掲げ、身構える。


【 バイシ 】

「――哀れな、お嬢ちゃんだ。ならばせめて――」


【 バイシ 】

「一太刀で、終わらせようじゃないか……!」


 バイシもまた、これに応じて大剣を構える。




【 アグラニカ 】

「…………っ」


【 ???? 】

『姉者――人――』


 妹分の奮戦を見守るアグラニカの頭の中に、直接声が響く。


【 アグラニカ 】

「……っ! アシアン……!?」


 アシアンディーカが、とぎれとぎれな念を送ってきたのだ。


【 アグラニカ 】

『アシアン……もう十分です! あなたの誇りは、十分に示せました……!』


 念を返すアグラニカだったが、アシアンディーカはそれには答えず……


【 アシアンディーカ 】

『お願い――が――あります――』


【 アグラニカ 】

『…………っ?』




【 アシアンディーカ 】

「受けられるものなら、受けてみよっ……やつがれの、最後にして、最大の、一撃……!」


 目に見えるほどの闘気が、アシアンディーカの肉体から噴き上がる……!


【 バイシ 】

「いいさ……かかってきなっ!」


 バイシもまた、残った力を振り絞り、アシアンディーカが放つであろう渾身の一撃を受け止めるべく、気合をみなぎらせる。


【 バイシ 】

(……己の誇りのために、命を燃やし尽くす、か。それもよかろうさ)


【 バイシ 】

(だったら、その誇り、貫いてみせな……!)


【 アシアンディーカ 】

「うっ……おっ、おおおおおっ……!」


 ――ドォンッ!


 捨て身の突撃で、一気に間合いを詰める……!


【 アシアンディーカ 】

「もらったっ……!」


【 バイシ 】

「やらせる……かっ!」


 ――ドシュウッ!


【 バイシ 】

「ぬっ……ぐっ!」


 アシアンディーカ渾身の一撃が、鎧をも貫き、バイシの心臓に突き立つ――

 しかし、


【 バイシ 】

「狙いは――」


【 アシアンディーカ 】

「…………っ!」


【 バイシ 】

「――良かった、ねえっ……!」


 内丹ないたんで硬質化した筋肉に、半ばで食い止められる……!


【 バイシ 】

「これまでだっ……お嬢ちゃんっ!」


 そのまま、バイシの斬撃がアシアンディーカを両断する――

 と、見えた、そのとき。


 ――――ドスッ!!


【 バイシ 】

「……ぐッ……!?」


 バイシの心臓に刺さった剣の柄に、矢が突き立っていた。

 ギリギリで食い止めていた切っ先が、心臓にズブリと食い込む……!

 さしものバイシも動きが停まったところへ、


【 アシアンディーカ 】

「……うっ……ああああああぁっ!」


 シュバァッ!


 もう一振りの剣の切っ先が、バイシの首をえぐる!


【 バイシ 】

「――――ッ」


 ――ブシュウウウウッ!!


 大量の血が、噴水のごとくほとばしった――

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