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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
378/421

◆◆◆◆ 9-78 鶴風の戦い(27) ◆◆◆◆

【 アシアンディーカ 】

「…………ッ!」


 ――ドシャアッ!


【 無頼漢たち 】

『や、やったっ……!』


 血しぶきとともにアシアンディーカが落馬したのを見て、バイシの背後から歓声があがる。


【 バイシ 】

「ふん……奥の手があるだろうとは、思ったがね……」


 バイシの額からは、血が流れている。

 とっさに内丹ないたんで頭部を硬質化させ、頭突きで剣を砕いたわけだが……さすがに、無傷とはいかない。

 とはいえ、これにてもはや勝負あり――と思われたが、


【 バイシ 】

「――――っ」


【 アシアンディーカ 】

「……ぐっ、うっ、ううっ……!」


 落馬したアシアンディーカは、かろうじて自分の足で立ち上がる。


【 無頼漢 】

「なっ……!?」


【 無頼漢 】

「あ、あの小娘っ……不死身かよっ?!」


 バイシの凄まじい一閃を喰らいながらも、その傷は骨や内臓までには達していなかった。


【 バイシ 】

「ほう……手ごたえはあったが……?」


【 アシアンディーカ 】

「……っ、はぁっ、はぁあっ……間一髪……だったっ……!」


 気づけば、アシアンディーカの全身を覆っていた刺青いれずみが、目に見えてその数を減らしていた。


【 バイシ 】

「なるほど、森羅の呪術のタネはその刺青にこもってるとか……ありったけで防いだってわけだ」


 とっさに大量の呪力を解放し、防御に回したおかげで、かろうじて致命傷はまぬがれたのである。

 しかし、それでも深手には違いなく、そのうえ、頼みの刺青ももはやほとんどないとあっては……


【 バイシ 】

「そろそろ、打つ手なしじゃあないのかい?」


【 アシアンディーカ 】

「な、なんのっ……! まだ、やつがれはっ……やれるっ……!」


 ……フワッ……


 残った力を振り絞り、飛び散った刃の破片を浮き上がらせるアシアンディーカ。


【 バイシ 】

「まだやる気かい――結構! だが、それっぽっちじゃあ、かすり傷だってつけられまい?」


【 アシアンディーカ 】

「言われずともっ……もとより、貴様を傷つけるためではない……!」


【 バイシ 】

「なに――?」


【 アシアンディーカ 】

「――――やれっ!」


 ザシュッ! ブシュウッ!


【 バイシ 】

「…………っ!?」


【 アシアンディーカ 】

「んぐっ……ぐうううっ!」


 破片たちが切り刻んだのは、他ならぬアシアンディーカの肌であった。


【 無頼漢 】

「!? な、なにやってるんだっ!?」


【 無頼漢たち 】

「イカレちまったかっ……!?」


 突然の自傷行為に戸惑う一同……しかし、


【 バイシ 】

「……っ! これは――」


【 アシアンディーカ 】

「ぐっ……うっ……! はぁっ、はぁあっ……」


 アシアンディーカの肌に刻まれたのは、ただの切り傷ではなく――


【 バイシ 】

(なんだ……文字? 記号かっ……?)


【 アシアンディーカ 】

「――我らが母なる天、母なる大地よ……やつがれに……力をっ……!」


 ポワアアア……!


 アシアンディーカの祈りに応じ、皮膚に記された文字や記号が妖しげな光を放ち、彼女の全身を包み込んでいく。


【 アシアンディーカ 】

「おお――異郷の地なれども、我が血、我が肉に、偉大なる母たちの力が……みなぎってゆく……!」


 先ほどまで息も絶え絶えだったアシアンディーカに生気が満ち、その目に闘志が燃え上がる。


【 アシアンディーカ 】

「――ゆくぞッ!」


 馬の鞍から予備の双剣をとり、バイシへとまっしぐらに斬りつける――


【 アシアンディーカ 】

「はあああっ!」


【 バイシ 】

「――――っ!」


 ――ガキイィンッ! ギイィンッ!


【 バイシ 】

「――くうっ!? こ、この、重さはっ……!?」


 強烈なる左右の打ち込みで、バイシをたじろがせる……!


【 アシアンディーカ 】

「先ほどまでと同じと思うな……! 今のやつがれは、母なる神々と一体になったも同然!」


【 アシアンディーカ 】

「勝負は……これからだッ!」




【 アグラニカ 】

「……っ、アシアン……そこまでしてっ……」


【 ウツセ 】

「あれは……どういうことです?」


【 アグラニカ 】

「己の身に、直接、呪文を刻み込んだのです。ああすることで、神々の加護を得て、肉体を格段に強化できます――が」


【 アグラニカ 】

「……あれでは、長くはもちません。やがて肉が裂け、骨が砕け、臓が破れてしまうっ……!」


【 ウツセ 】

「…………っ」




【 アシアンディーカ 】

「森羅の戦士に受け継がれし力っ……思い知るがいいっ!」


 キィンッ! ガキッ! キイィンッ!


【 バイシ 】

「ぬうっ……速いっ! しかもっ、この、打撃の重さは……!」


 軽量のアシアンディーカからはありえないほどの重い斬撃に、バイシも受け流すの精一杯というありさま。


【 無頼漢 】

「副頭目が押されてるだとっ……!?」


【 無頼漢 】

「な、なんだ、あのデタラメな強さは……!?」


 速度……重さ……ともにバイシに劣らぬ斬撃を繰り出し続けるアシアンディーカ。

 しかし、その代償は明らかであり――


 ――ブシュウッ!


【 アシアンディーカ 】

「んぐっ……! な、なんのっ……この程度でっ!」


 肉が裂け、鮮血が飛び、骨がきしむ……


【 バイシ 】

「なぜそこまで――生き急ぐっ!」


【 アシアンディーカ 】

「やっ……やつがれにはっ……これより他に、道は……ないっ!」


【 アシアンディーカ 】

「そう……この命はっ……姉者人あねじゃびとに、拾っていただいたものなのだからっ……!」


 繚乱たるアシアンディーカの刃が、さらに加速して、バイシを襲う――

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