◆◆◆◆ 9-76 鶴風の戦い(25) ◆◆◆◆
【 無頼漢 】
「ふ、副頭目っ……!」
【 バイシ 】
「あんたらは下がってなっ……このお嬢ちゃん、かなり厄介だっ!」
無頼漢たちを押しとどめ、バイシは単騎で敵を迎え撃つ。
【 アシアンディーカ 】
「――はぁあっ!」
【 バイシ 】
「む――」
アシアンディーカが放った物体が、バイシ目がけて飛来する。
――キィンッ!
【 バイシ 】
「こいつは――円月輪かっ!」
円月輪とは金属製の輪っかであり、その外側に刃が装着された武器を指す。
アシアンディーカはこの飛び道具を続けざまに放ち、迫ってきた無頼漢たちを一掃したのだ。
【 アシアンディーカ 】
「さすがに、そう易々とは――ならばっ!」
ヒュッ――ヒュンッ!
息をつかせぬ、アシアンディーカの投擲!
【 バイシ 】
「――ちいっ!」
キィンッ! パキィッ!
しかしバイシもさるもの、そのことごとくを撃ち払っていく――
【 アグラニカ 】
「――っ、アシアン……!」
【 ウツセ 】
「むむ……すでに、始まっていますな」
ウツセらが押っ取り刀で駆けつけた。
*押っ取り刀……刀を腰に差さずに手に持つということから、急ぎ慌てるの意。
【 ウツセ 】
「助太刀を――」
【 アグラニカ 】
「……いえ、ここは、あの娘にお任せください」
【 ウツセ 】
「しかし、彼女ひとりでは……」
【 アグラニカ 】
「手を出された! 生き恥だ! と、それだけで己の首を掻っ切りかねない娘ですので……」
【 ウツセ 】
「…………」
今は、静観するしかないようであった。
【 アシアンディーカ 】
「ふん、少しはやるようだな……!」
ひとしきり円月輪を投げ放ったアシアンディーカだったが、バイシの身には傷一つつけることはできなかった。
【 バイシ 】
「小細工は終わりかい? だったら、こっちからいくよ!」
大剣を振りかざし、バイシが一気に距離を詰める――
【 アシアンディーカ 】
「――バカめっ!」
【 バイシ 】
「――――!」
ヒュンッ――ドシュウッ!
【 バイシ 】
「ぬっ……ぐううっ!?」
苦悶の声とともに、鮮血がほとばしった。
【 無頼漢たち 】
『なっ……副頭目っ!?』
バイシの太股に、先ほど弾き飛ばしたはずの円月輪が、深々と食い込んでいる……!
【 アシアンディーカ 】
「我が円月輪をただの飛び道具と見たのが、貴様の不覚よ……!」
【 バイシ 】
「くっ……そうか、こいつはっ……森羅の呪術っ!」
呪力を帯びた円月輪を遠隔操作し、バイシの虚を突いたのである。
【 アシアンディーカ 】
「今ごろ気づいても遅いっ……喰らうがいいっ!」
地上に転がっていた円月輪がさらに浮き上がり、次々にバイシを襲う――
ザクッ! バシュウッ! ドシュッ!
【 バイシ 】
「ぐっ……うっ……!」
縦横無尽に飛び回る刃によって、装甲の隙間が切り裂かれ、血が噴き出す――
【 無頼漢たち 】
『ふ、副頭目っ……!』
【 アシアンディーカ 】
「フフフ……他愛もないなっ!」
ヒュン……ヒュン……
周囲に円月輪を飛ばしつつ、勝ち誇るアシアンディーカ。
【 バイシ 】
「ふ、ふふっ……なかなか、味な真似をするじゃあないか……! たいしたもんだ、お嬢ちゃん!」
全身から血を流しながらも、バイシはなおも不敵な笑みをうかべる。
【 アシアンディーカ 】
「ぬぬっ……まだそんな口を叩けるかっ……! ならば――これで、仕留めてくれるっ!」
ヒュンッ……ヒュルルッ!
空中に舞う円月輪たちが、一斉にバイシに迫る――
【 無頼漢たち 】
『あああっ……!』
【 バイシ 】
「…………っ!」
ドスッ! バシュッ! ザクゥッ!
バイシの全身に、次々と刃が吸い込まれていった――
ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!




