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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
376/421

◆◆◆◆ 9-76 鶴風の戦い(25) ◆◆◆◆

【 無頼漢 】

「ふ、副頭目っ……!」


【 バイシ 】

「あんたらは下がってなっ……このお嬢ちゃん、かなり厄介だっ!」


 無頼漢たちを押しとどめ、バイシは単騎で敵を迎え撃つ。


【 アシアンディーカ 】

「――はぁあっ!」


【 バイシ 】

「む――」


 アシアンディーカが放った物体が、バイシ目がけて飛来する。


 ――キィンッ!


【 バイシ 】

「こいつは――円月輪えんげつりんかっ!」


 円月輪とは金属製の輪っかであり、その外側に刃が装着された武器を指す。

 アシアンディーカはこの飛び道具を続けざまに放ち、迫ってきた無頼漢たちを一掃したのだ。


【 アシアンディーカ 】

「さすがに、そう易々とは――ならばっ!」


 ヒュッ――ヒュンッ!


 息をつかせぬ、アシアンディーカの投擲とうてき


【 バイシ 】

「――ちいっ!」


 キィンッ! パキィッ!


 しかしバイシもさるもの、そのことごとくを撃ち払っていく――




【 アグラニカ 】

「――っ、アシアン……!」


【 ウツセ 】

「むむ……すでに、始まっていますな」


 ウツセらが押っ取り刀で駆けつけた。

 *押っ取り刀……刀を腰に差さずに手に持つということから、急ぎ慌てるの意。


【 ウツセ 】

「助太刀を――」


【 アグラニカ 】

「……いえ、ここは、あの娘にお任せください」


【 ウツセ 】

「しかし、彼女ひとりでは……」


【 アグラニカ 】

「手を出された! 生き恥だ! と、それだけで己の首を掻っ切りかねない娘ですので……」


【 ウツセ 】

「…………」


 今は、静観するしかないようであった。




【 アシアンディーカ 】

「ふん、少しはやるようだな……!」


 ひとしきり円月輪を投げ放ったアシアンディーカだったが、バイシの身には傷一つつけることはできなかった。


【 バイシ 】

「小細工は終わりかい? だったら、こっちからいくよ!」


 大剣を振りかざし、バイシが一気に距離を詰める――


【 アシアンディーカ 】

「――バカめっ!」


【 バイシ 】

「――――!」


 ヒュンッ――ドシュウッ!


【 バイシ 】

「ぬっ……ぐううっ!?」


 苦悶の声とともに、鮮血がほとばしった。


【 無頼漢たち 】

『なっ……副頭目っ!?』


 バイシの太股に、先ほど弾き飛ばしたはずの円月輪が、深々と食い込んでいる……!


【 アシアンディーカ 】

「我が円月輪をただの飛び道具と見たのが、貴様の不覚よ……!」


【 バイシ 】

「くっ……そうか、こいつはっ……森羅しんらの呪術っ!」


 呪力を帯びた円月輪を遠隔操作し、バイシの虚を突いたのである。


【 アシアンディーカ 】

「今ごろ気づいても遅いっ……喰らうがいいっ!」


 地上に転がっていた円月輪がさらに浮き上がり、次々にバイシを襲う――


 ザクッ! バシュウッ! ドシュッ!


【 バイシ 】

「ぐっ……うっ……!」


 縦横無尽に飛び回る刃によって、装甲の隙間が切り裂かれ、血が噴き出す――


【 無頼漢たち 】

『ふ、副頭目っ……!』


【 アシアンディーカ 】

「フフフ……他愛もないなっ!」


 ヒュン……ヒュン……


 周囲に円月輪を飛ばしつつ、勝ち誇るアシアンディーカ。


【 バイシ 】

「ふ、ふふっ……なかなか、味な真似をするじゃあないか……! たいしたもんだ、お嬢ちゃん!」


 全身から血を流しながらも、バイシはなおも不敵な笑みをうかべる。


【 アシアンディーカ 】

「ぬぬっ……まだそんな口を叩けるかっ……! ならば――これで、仕留めてくれるっ!」


 ヒュンッ……ヒュルルッ!


 空中に舞う円月輪たちが、一斉にバイシに迫る――


【 無頼漢たち 】

『あああっ……!』


【 バイシ 】

「…………っ!」


 ドスッ! バシュッ! ザクゥッ!


 バイシの全身に、次々と刃が吸い込まれていった――

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