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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
374/421

◆◆◆◆ 9-74 鶴風の戦い(23) ◆◆◆◆

【 ウツセ 】

「ドリュウ殿は、無事かっ?」


 追撃軍を率いるシン・ウツセは、報告を聞いて憂いの色を浮かべていた。


【 飛鷹の兵 】

「はっ、幸い命には別条がない様子……それにしてもあの武者、とんでもない手練れにて……!」


【 ウツセ 】

「むう……ドリュウ殿を寄せ付けぬとは、只者ではないな」


【 タイザン 】

「おそらくですが――〈白銀夜叉しろがねやしゃ〉と呼ばれる女賊でしょうな」


 そう告げながらやってきたのは、飛鷹の勇士〈三羽みつばのタイザン〉。


【 ウツセ 】

「おお、タイザン殿! ドリュウ殿を救われたそうで……」


【 タイザン 】

「なに、神弓姫しんきゅうき殿には及びもつきませんが……お役に立ててなによりです」


【 ウツセ 】

白銀夜叉しろがねやしゃといえば、十数年に渡って官軍と争っている賊と聞きますが……そのような者が、敵方に?」


【 タイザン 】

「他に、あれほどの武勇を持つおうながいるとは思えませんな。森羅しんらにも珍しいのでは?」

 *媼……老女の意。


【 アグラニカ 】

「ええ……敵ながらあっぱれですね!」


 森羅の女王・アグラニカも感嘆している。


【 ウツセ 】

(……と、感心している場合ではないな)


 見事な相手といえど、戦場において立ちはだかる者は、ことごとく討たねばならぬ。

 それは古今東西、あらゆる戦いにおけるさだめであった。


【 タイザン 】

「一斉射撃で射殺す、というのが無難なところですが……」


【 ウツセ 】

「……それがかなわぬゆえの現状ですからね」


 同時に放たれた無数の矢を、かの女武者はことごとく切り払い、かすり傷すら負うことはなかった。

 ゆえに白兵戦を挑んだのだが……その結果が、先ほどの有り様である。


【 ウツセ 】

(グズグズしていては、獲物を取り逃がすことになる……)


 そのこと自体はどうでもいいが、岳南や森羅の武名が貶められるのは耐えがたいことである。


【 アグラニカ 】

「使います? 使っちゃいますか、呪術?」


【 ウツセ 】

「それは……ありがたいのですが、最後の手段としましょう」


【 アグラニカ 】

「そうですか……」


 ちょっとシュンとしている。


【 タイザン 】

「ならば……どうします?」


【 ウツセ 】

「…………」


 迂回うかいしようとすれば、大幅に時間がかかる。

 犠牲をいとわず、大勢で押し切るか……

 あるいは、策を用いるか。

 と、ウツセが思案していると、


【 ???? 】

「――姉者人あねじゃびと! やつがれにお任せくださいっ!」

 *姉者人……姉を敬って呼ぶ言い方。

 *やつがれ……一人称の一種。へりくだった名乗り方。


【 アグラニカ 】

「――――!」


 アグラニカの前に進み出てきて一礼したのは、ひとりの森羅しんらの女兵であった。

 歳のころは十二、三ほど、周りの兵に比べるとかなり年少。

 他の戦士同様、全身に刺青いれずみが刻まれている。


【 年少の森羅兵 】

「かの大女の退治、どうかこのアシアンディーカにお命じくださいませ!」


【 アグラニカ 】

「それは――確かに、貴方なら格好の相手ではありましょうが……」


【 ウツセ 】

「陛下、こちらは?」


【 アグラニカ 】

「はい、この者は〈繚乱りょうらんたるアシアンディーカ〉、私の妹分というところです」


【 アシアンディーカ 】

「――――っ」


【 ウツセ 】

「…………っ」


 チラリとウツセに向けられた視線は、やけに険しい。


【 ウツセ 】

(……なにか、気に障ることをしたのだろうか?)


 これといって心当たりはないが……


【 アシアンディーカ 】

姉者人あねじゃびと、このやつがれにお命じいただけば、必ずや!」


【 アグラニカ 】

「ですが、それは……」


 言葉を濁すアグラニカ。

 無理もない、とウツセは思った。


【 ウツセ 】

(もとより、腕は立つのだろうが……)


 とはいえしかし、さすがに体格が違いすぎる。

 あの武者が大剣で素振りしただけで、かるがると吹き飛ばされてしまいそうだ。


【 アシアンディーカ 】

「もし不覚を取れば、その場でこの首、掻っ切る所存……! どうかっ……どうかっ!」


【 アグラニカ 】

「しかし……」


 チラチラと、アグラニカがウツセに目を向ける。


【 ウツセ 】

「――アシアンディーカ殿、だったか? 決して貴公の腕を疑うわけではないが、あの難敵はいささか……」


【 アシアンディーカ 】

「そなたとは話しておらぬわっ! 余計な差し出口を叩くでないっ!」


【 ウツセ 】

「…………っ」


【 アグラニカ 】

「アシアン! 無礼でありましょう……!」


【 アシアンディーカ 】

スイ公ならいざ知らず、その配下ふぜいに偉そうな口をきかれる筋合いはございませぬ!」


【 アグラニカ 】

「それ以上の暴言は許しませぬ。お下がりなさい――」


【 アシアンディーカ 】

「…………っ」


 アシアンディーカは再びウツセに刺すような視線を浴びせたのち、アグラニカに一礼して下がっていったのだった……

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