◆◆◆◆ 9-73 鶴風の戦い(22) ◆◆◆◆
ヨスガたちがタシギの追撃を振り切った頃、その後方においては――
【 バイシ 】
「さぁ、かかってきな! それとも、飛鷹ってのは腰抜けぞろいかいっ?」
吊り橋の上にただ一騎で陣取り、霙・バイシが剣を掲げ、挑発する。
【 飛鷹の兵 】
「おのれっ……死にぞこないがっ!」
ドドドッ……!
怒り心頭に達した飛鷹の騎兵が、槍を手に突進する――
【 バイシ 】
「――ぬぅんッ!」
バシュウウッ!
【 飛鷹の兵 】
「がっ……あっ!?」
大剣一閃!
胴を両断された飛鷹の戦士が、あえなく馬上から転がり落ちた。
【 他の飛鷹の兵 】
「くそっ……一斉にかかれっ!」
【 他の飛鷹の兵 】
「おおおっ!」
数人の騎兵が、同時に飛びかかる――が、
【 バイシ 】
「――――ッ!」
ザシュッ! ドバシャッ!!
【 他の飛鷹の兵 】
「ぐっ……ぎゃあっ!?」
【 他の飛鷹の兵 】
「ぐあっ……!」
バイシの剣が振るわれるたび、立て続けに生者が死者と化していく。
【 飛鷹の兵たち 】
『な――なんだ、あの老いぼれはっ……!?』
【 他の飛鷹の兵 】
『まるで、翠大王のようなっ……』
彼らの盟主たる老雄〈翠・ヤクモ〉を思わせる豪勇ぶりに、さしも勇猛果敢な騎馬の民も戦慄する。
一同が浮き足立つなか、
【 ドリュウ 】
「ぬうううっ! 下がれ! 下がっておれっ! 俺が、片付けてくれるっ!」
そう言って進み出てきたのは、〈金髭龍〉こと翠・ドリュウ。
【 飛鷹の兵 】
「おお――金髭龍っ!」
【 飛鷹の兵 】
「飛鷹屈指の強者ならばっ!」
【 ドリュウ 】
「この翠・ドリュウが、お前の、お前の相手だっ!」
気合とともに長矛を振るって、挑みかかる。
【 ドリュウ 】
「――おおおおっ!」
【 バイシ 】
「ほうっ……いい面構えだねえ!」
――ガキィィンッ!
巨躯の持ち主同士がぶつかり合い、周囲にすさまじい風圧が走る……!
【 バイシ 】
「むうっ……おっ、おおっ……!」
【 ドリュウ 】
「ぬうううっ……! おおおおおおっ……!」
ギッ……ギギギギッ……!
大剣と矛がぶつかり、つばぜり合いとなる。
【 バイシ 】
「ほほうっ……まずまずの、力自慢のようじゃないかっ……!」
【 ドリュウ 】
(――っ、な、なんだこの力っ……この俺を、押し返すだとっ!?)
大剣を矛で受け止めたものの、押し込んでくる相手の尋常ならざる力にドリュウは驚嘆する。
【 ドリュウ 】
「ぬうっ……ぐううっ!」
【 バイシ 】
「なかなかやるようだが――まだまだっ!」
――ガキッ! ギイィンッ!
距離を取り、熾烈な勢いで得物をぶつけ合う――
【 ドリュウ 】
「ちいいっ……!」
【 バイシ 】
「おおおおっ……!」
キィッ! キインッ!
大剣が空を裂き、長矛が風を切り、火花を散らす……!
【 ドリュウ 】
「なんのっ……我らの、我らの大王の名にかけてっ! うおおおおっ!」
【 バイシ 】
「たいした気迫だ――しかし!」
【 ドリュウ 】
「…………!」
【 バイシ 】
「――ぬぅんッ!」
――ゴギャアンッ!
【 ドリュウ 】
「ぐっ……ぬうああああっ!?」
ブシュウウウッ!
【 飛鷹の兵 】
「なっ……ドリュウ殿っ!?」
斬撃を受け止めたはずの長矛がまっぷたつに両断されたうえ、鎧も切り裂かれ、鮮血が噴き出している。
【 バイシ 】
「気合だけじゃあ、あたしは討てやしないってことさ……! 十年早かったねえ!」
【 ドリュウ 】
「……ぬっ……ぐ、ぐうううっ……! な、なんのっ……まだ、まだぁっ……!」
己の血にまみれながらも、ドリュウはなお戦意を失わず、踏みとどまる。
【 バイシ 】
「おお――見事っ! 飛鷹の勇、見せてもらったよっ!」
とどめを刺さんと、バイシがドリュウ目がけて大剣を振り下ろす――
【 バイシ 】
「――――むっ!」
キィンッ!
頭部を狙ってきた矢を、かろうじて弾き落とすバイシ。
その間に――
【 飛鷹の兵 】
「ドリュウ殿っ!」
【 ドリュウ 】
「…………っ」
駆けつけた騎兵によって、ドリュウは間一髪、救出されていた。
【 バイシ 】
「ふふん、命冥加な奴だね……やれやれ」
*命冥加……神仏の加護で助かるの意。
駆け去る騎馬を見送りながら、バイシは大きく息をついた――
ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!




