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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
373/421

◆◆◆◆ 9-73 鶴風の戦い(22) ◆◆◆◆

 ヨスガたちがタシギの追撃を振り切った頃、その後方においては――


【 バイシ 】

「さぁ、かかってきな! それとも、飛鷹ひようってのは腰抜けぞろいかいっ?」


 吊り橋の上にただ一騎で陣取り、エイ・バイシが剣を掲げ、挑発する。


【 飛鷹ひようの兵 】

「おのれっ……死にぞこないがっ!」


 ドドドッ……!


 怒り心頭に達した飛鷹の騎兵が、槍を手に突進する――


【 バイシ 】

「――ぬぅんッ!」


 バシュウウッ!


【 飛鷹の兵 】

「がっ……あっ!?」


 大剣一閃!

 胴を両断された飛鷹の戦士が、あえなく馬上から転がり落ちた。


【 他の飛鷹の兵 】

「くそっ……一斉にかかれっ!」


【 他の飛鷹の兵 】

「おおおっ!」


 数人の騎兵が、同時に飛びかかる――が、


【 バイシ 】

「――――ッ!」


 ザシュッ! ドバシャッ!!


【 他の飛鷹の兵 】

「ぐっ……ぎゃあっ!?」


【 他の飛鷹の兵 】

「ぐあっ……!」


 バイシの剣が振るわれるたび、立て続けに生者が死者と化していく。


【 飛鷹の兵たち 】

『な――なんだ、あの老いぼれはっ……!?』


【 他の飛鷹の兵 】

『まるで、スイ大王のようなっ……』


 彼らの盟主たる老雄〈スイ・ヤクモ〉を思わせる豪勇ぶりに、さしも勇猛果敢な騎馬の民も戦慄する。

 一同が浮き足立つなか、


【 ドリュウ 】

「ぬうううっ! 下がれ! 下がっておれっ! 俺が、片付けてくれるっ!」


 そう言って進み出てきたのは、〈金髭龍きんひげりゅう〉ことスイ・ドリュウ。


【 飛鷹の兵 】

「おお――金髭龍っ!」


【 飛鷹の兵 】

「飛鷹屈指の強者ならばっ!」


【 ドリュウ 】

「このスイ・ドリュウが、お前の、お前の相手だっ!」


 気合とともに長矛を振るって、挑みかかる。


【 ドリュウ 】

「――おおおおっ!」


【 バイシ 】

「ほうっ……いい面構えだねえ!」


 ――ガキィィンッ!


 巨躯の持ち主同士がぶつかり合い、周囲にすさまじい風圧が走る……!


【 バイシ 】

「むうっ……おっ、おおっ……!」


【 ドリュウ 】

「ぬうううっ……! おおおおおおっ……!」


 ギッ……ギギギギッ……!


 大剣と矛がぶつかり、つばぜり合いとなる。


【 バイシ 】

「ほほうっ……まずまずの、力自慢のようじゃないかっ……!」


【 ドリュウ 】

(――っ、な、なんだこの力っ……この俺を、押し返すだとっ!?)


 大剣を矛で受け止めたものの、押し込んでくる相手の尋常ならざる力にドリュウは驚嘆する。


【 ドリュウ 】

「ぬうっ……ぐううっ!」


【 バイシ 】

「なかなかやるようだが――まだまだっ!」


 ――ガキッ! ギイィンッ!


 距離を取り、熾烈な勢いで得物をぶつけ合う――


【 ドリュウ 】

「ちいいっ……!」


【 バイシ 】

「おおおおっ……!」


 キィッ! キインッ!


 大剣が空を裂き、長矛が風を切り、火花を散らす……!


【 ドリュウ 】

「なんのっ……我らの、我らの大王の名にかけてっ! うおおおおっ!」


【 バイシ 】

「たいした気迫だ――しかし!」


【 ドリュウ 】

「…………!」


【 バイシ 】

「――ぬぅんッ!」


 ――ゴギャアンッ!


【 ドリュウ 】

「ぐっ……ぬうああああっ!?」


 ブシュウウウッ!


【 飛鷹の兵 】

「なっ……ドリュウ殿っ!?」


 斬撃を受け止めたはずの長矛がまっぷたつに両断されたうえ、鎧も切り裂かれ、鮮血が噴き出している。


【 バイシ 】

「気合だけじゃあ、あたしは討てやしないってことさ……! 十年早かったねえ!」


【 ドリュウ 】

「……ぬっ……ぐ、ぐうううっ……! な、なんのっ……まだ、まだぁっ……!」


 己の血にまみれながらも、ドリュウはなお戦意を失わず、踏みとどまる。


【 バイシ 】

「おお――見事っ! 飛鷹の勇、見せてもらったよっ!」


 とどめを刺さんと、バイシがドリュウ目がけて大剣を振り下ろす――


【 バイシ 】

「――――むっ!」


 キィンッ!


 頭部を狙ってきた矢を、かろうじて弾き落とすバイシ。

 その間に――


【 飛鷹の兵 】

「ドリュウ殿っ!」


【 ドリュウ 】

「…………っ」


 駆けつけた騎兵によって、ドリュウは間一髪、救出されていた。


【 バイシ 】

「ふふん、命冥加いのちみょうがな奴だね……やれやれ」

 *命冥加……神仏の加護で助かるの意。


 駆け去る騎馬を見送りながら、バイシは大きく息をついた――

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