◆◆◆◆ 9-72 鶴風の戦い(21) ◆◆◆◆
ドゴッ! ゴロゴロッ!!
【 官軍の兵 】
「ひいいいっ!?」
――グシャアッ!
【 官軍の兵 】
「ぎゃあああっ!?」
崖の上から次々と落下してくる巨石に、官軍の人馬が無情にも押しつぶされていく――
【 官軍の将 】
「く、くそっ、伏兵かっ……! 避けろっ!」
【 官軍の兵 】
「そ、そんなこと言われても――ひぎゃあっ!?」
――ゴシャアッ!!
たちまち、山道は悲鳴と怒号が鳴り響く、阿鼻叫喚の図と化す。
ゴロゴロッ……ドドッ!
【 タシギ 】
「ちいいいッ……クソがッ! 洒落た真似をッ!」
巨石群は、タシギたちにも容赦なく襲いかかってくる。
いかに傷を他人に移せるとしても、石の下敷きになっては意味がない。
転がってくる巨石を避けるべく、ミズキとの距離を取ろうとした瞬間――
【 ミズキ 】
「――はあッ!」
その隙を狙いすましていたミズキの一撃が、タシギを襲った。
――ドシュウッ!
【 タシギ 】
「……ぬッ……ぐうッ!?」
タシギの下っ腹に、直撃する。
【 タシギ 】
「ちいッ……こんなものッ……!」
タシギの左眼が妖美に輝く――
【 タシギ 】
「――ぐうッ!? がッ……ああッ!?」
ブシャアッ!
真っ赤な鮮血と、苦悶の声がほとばしる。
【 タシギ 】
「ぐッ……がッ!? な、なんだッ……これ、はッ!?」
――ギュルルッ……!
ミズキの放ったのは、空刀――ではなく。
回転する独楽であった。
【 タシギ 】
「ぐ、ぎィッ……!? なんだッ……ぐうッ!? 傷が、移せなッ……が、ああああッ!?」
【 ミズキ 】
「――貴方のようにしぶとい相手は、ただ斬るだけでは手に負えませんからね。工夫が必要でした」
先日の催命翔鬼との戦いを経て思いついた、不死身めいた相手への対処法……
すなわち、どうせ再生されてしまうならば、斬撃を与え続ければいい――
そこで思い至ったのが、独楽に闘気をまとわせ、投げつけるという手段であった。
【 タシギ 】
「ぎいいッ……!? ぐ、がッ……アッ! があああッ!」
タシギの体内に食い込んだ独楽が回転しながら、肉を、臓腑を、刻んでいく……!
【 タシギ 】
「て、てめええッ……あッ、ぐッ……アアアアッ!」
激しい苦痛に襲われ、たまらずタシギの動きが止まる。
【 ミズキ 】
「もっとも、それだけでは、とどめにはなりませんので……」
ミズキが馬を駆り、ひらりと身を躱した、直後。
――ドゴォオッ!
【 タシギ 】
「…………ッ!」
転がり落ちてきた巨石が、目前に迫り――
【 タシギ 】
「ク――――クソがァァァァァッ!!」
――ゴシャアアッ!!
銀・タシギの姿は、見えなくなった。
【 セイレン 】
「わははははっ! いかがでしたかっ、我が落石の計っ! ズバリと決まったでしょうっ! まさに謀計百出っ!!」
*百出……数多く、たくさん出るの意。なお、数が多ければいいというものではない。肝心なのは質である。
【 ホノカナ 】
「女官長さま――じゃない、紅雪華殿の合図に従っただけでしたよね……!?」
【 ヨスガ 】
「――まあ、首尾よくいったのは確かだな!」
新たに加わったホノカナやセイレンらと共に、山道を駆け続けるヨスガ一行。
先ほどの落石は、あらかじめ逃走経路として選んでおいたこの道に、ホノカナらが仕掛けていた罠であった。
もとより計画・立案したのはヨスガであって、セイレンが計を立てたわけではない。
【 ミズキ 】
「お見事でした、副頭目、皆さま方。――ああ、藍老師も」
ミズキが追いついてきて、一同をねぎらう。
【 セイレン 】
「なんだか、ことのついでに感謝されてるみたいなのですが!?」
【 ホノカナ 】
「女官長さま……いえ、紅雪華殿も、お見事でしたっ……!」
【 ヨスガ 】
「例の女、仕留めたのか?」
【 ミズキ 】
「さて……どうでしょうか。あの手の輩は、しぶといので」
【 セイレン 】
「なぁに、あれだけ大きな石に押しつぶされたのですから、どれだけの再生能力があろうと無駄というものですよ! ええっ、断言します!」
【 ホノカナ 】
「セイレンさんが自信満々に断言すると、すごく不安になるんですけど……!?」
【 ヨスガ 】
「いずれにせよ、今は構っておれぬ。先を急ぐぞ」
【 ミズキ 】
「はっ――」
一同はさらに帝都を離れ、北西へと馬を駆けさせていく――
ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!




