◆◆◆◆ 9-71 鶴風の戦い(20) ◆◆◆◆
【 官軍の兵 】
「ぎゃっ……!?」
――ドシャッ!
ヨスガらを追う官軍の兵が、突然馬から転げ落ちる。
【 官軍の兵 】
「ぐっ……あああっ!?」
――ドサッ!
【 官軍の兵 】
「ひっ、ひいいっ……!?」
矢を受けたわけでもないのに、味方が次々と落馬していく様子に、兵たちは怯えを見せる。
【 官軍の将 】
「ぬ、ぬうっ……またかっ!?」
【 官軍の兵 】
「こ、これはっ……敵の、攻撃でしょうかっ?」
【 官軍の将 】
「うぬっ……方術の類かっ……」
兵たちが次々と斃れているのは、タシギの奇怪な妖眼の力によるものなのであるが、もとより彼らは知る由もない。
【 官軍の将 】
「え、ええいっ、好きにさせるなっ! 射放てっ!」
【 官軍の兵 】
「は、ははっ……!」
ヒュンッ……ヒュッ!
追っ手から放たれた矢が、雨あられとヨスガたちへと浴びせられていく。
しかし、その矢は届くことなく――
――ドォンッ! ドドォッ!!
【 官軍の将 】
「なっ……!?」
【 官軍の兵 】
「な、なんだっ……!?」
ことごとく、空中で爆発四散していったのだった。
【 エキセン 】
「ク……クク……たいした、ものだ――」
【 弓騎兵 】
「いえ――炮の兄者の火薬のおかげですので……」
飛来した矢の雨を撃破したのは、大振りの弓を手にした長身の美女。
エキセンの火薬を先端に装着した矢を放ち、いわば弾幕を張ることで、迫ってきた矢をことごとく撃ち払ったのだ。
【 ヨスガ 】
「さすがだな、〈裂空二娘〉……!」
【 裂空二娘 】
「は――恐悦至極でして……」
と一礼してみせたのは、裂空二娘の異名をもつ〈琅・カガノ〉。
見ての通りの弓使いで、宝玲山の一味のひとりである。
【 ヨスガ 】
「ミズキも手こずっているな……ちと援護してやれぬか?」
【 カガノ 】
「それは――いえ、やめておきましょう……」
【 ヨスガ 】
「一騎討ちを邪魔するのは、気が引けるか?」
【 カガノ 】
「いえ――そういうわけでは、なくて……」
【 カガノ 】
「――誤って、紅雪華どのに当ててしまうかもしれません……いえ、当たりますね……」
【 ヨスガ 】
「……うむ、やめておこう!」
カガノは並外れた強弓の使い手ではあるが、その一方、狙った的に当てるのはあまり上手ではない――
――はっきり言えば、下手である。
日々鍛錬を欠かさずにいるにもかかわらず、どうにも上達しないらしい。
そのぶん、どんどん威力は上昇しているらしいのだが。
【 カガノ 】
「あっ……紅雪華どのごと吹き飛ばしてよいのであれば、撃ちますが……どうしましょう?」
【 ヨスガ 】
「それはやめてくれ……!」
【 カガノ 】
「ですよね……」
適材適所というのは、なにごとにも大事だった。
【 宝玲山の将 】
「首領、山道に入ります!」
【 ヨスガ 】
「うむ――正念場、だな」
ドガッ……ドドドッ……!
ヨスガたちの騎馬の一団は、切り立った崖沿いの山道に差し掛かっていた。
【 タシギ 】
「――おらァッ!」
ヒュンッ……ヒュウゥンッ!
タシギの繰り出す変幻自在の太刀がミズキに迫る――
【 ミズキ 】
「――――ッ!」
馬上で仰け反り、身をひねり、ことごとく回避するミズキ。
【 タシギ 】
「フン、逃げ回るだけが芸かよッ!」
【 ミズキ 】
「――その刃、どうせ、毒が塗ってあるのでしょうっ? そうそう、近づけませんね……!」
【 タシギ 】
「ククッ、あのヤブ医者から聞いたかッ? あの女、どこにいるッ……!」
【 ミズキ 】
「知っていても、教えるはずがないでしょう――」
【 タシギ 】
「だったら、さっさとてめェを片付けて、クソ天子に直接尋ねてやるよッ! 指を一本一本、切り落としながらなァ……!」
【 ミズキ 】
「――――ッ」
ミズキとタシギの攻防が続く中……
【 ミズキ 】
「――そろそろ、頃合いのようですね」
【 タシギ 】
「ぬッ……!?」
ミズキは懐から筒状のものを取り出すと、すかさず空に投げ放ち、
【 ミズキ 】
「――はぁっ!」
空刀、一閃――
上空の筒が切り裂かれて、五色の煙が立ち昇った。
【 ???? 】
「おおっ、女官長殿からの合図ですなっ!」
【 ???? 】
「――――お願いしますっ!!」
【 ???? 】
「おおおおっ……!」
ドゴッ……ゴロゴロッ!
【 タシギ 】
「――なッ!?」
崖の上から、立て続けに巨大な石が転がり落ちてくる――
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