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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
371/421

◆◆◆◆ 9-71 鶴風の戦い(20) ◆◆◆◆

【 官軍の兵 】

「ぎゃっ……!?」


 ――ドシャッ!


 ヨスガらを追う官軍の兵が、突然馬から転げ落ちる。


【 官軍の兵 】

「ぐっ……あああっ!?」


 ――ドサッ!


【 官軍の兵 】

「ひっ、ひいいっ……!?」


 矢を受けたわけでもないのに、味方が次々と落馬していく様子に、兵たちは怯えを見せる。


【 官軍の将 】

「ぬ、ぬうっ……またかっ!?」


【 官軍の兵 】

「こ、これはっ……敵の、攻撃でしょうかっ?」


【 官軍の将 】

「うぬっ……方術の類かっ……」


 兵たちが次々とたおれているのは、タシギの奇怪な妖眼ようがんの力によるものなのであるが、もとより彼らは知るよしもない。


【 官軍の将 】

「え、ええいっ、好きにさせるなっ! 射放てっ!」


【 官軍の兵 】

「は、ははっ……!」


 ヒュンッ……ヒュッ!


 追っ手から放たれた矢が、雨あられとヨスガたちへと浴びせられていく。

 しかし、その矢は届くことなく――


 ――ドォンッ! ドドォッ!!


【 官軍の将 】

「なっ……!?」


【 官軍の兵 】

「な、なんだっ……!?」


 ことごとく、空中で爆発四散していったのだった。




【 エキセン 】

「ク……クク……たいした、ものだ――」


【 弓騎兵きゅうきへい 】

「いえ――ホウの兄者の火薬のおかげですので……」


 飛来した矢の雨を撃破したのは、大振りの弓を手にした長身の美女。

 エキセンの火薬を先端に装着した矢を放ち、いわば弾幕を張ることで、迫ってきた矢をことごとく撃ち払ったのだ。


【 ヨスガ 】

「さすがだな、〈裂空二娘れっくうじじょう〉……!」


【 裂空二娘 】

「は――恐悦至極きょうえつしごくでして……」


 と一礼してみせたのは、裂空二娘の異名をもつ〈ロウ・カガノ〉。

 見ての通りの弓使いで、宝玲山ほうれいざんの一味のひとりである。


【 ヨスガ 】

「ミズキも手こずっているな……ちと援護してやれぬか?」


【 カガノ 】

「それは――いえ、やめておきましょう……」


【 ヨスガ 】

「一騎討ちを邪魔するのは、気が引けるか?」


【 カガノ 】

「いえ――そういうわけでは、なくて……」


【 カガノ 】

「――誤って、紅雪華こうせっかどのに当ててしまうかもしれません……いえ、当たりますね……」


【 ヨスガ 】

「……うむ、やめておこう!」


 カガノは並外れた強弓ごうきゅうの使い手ではあるが、その一方、狙った的に当てるのはあまり上手ではない――

 ――はっきり言えば、下手である。

 日々鍛錬を欠かさずにいるにもかかわらず、どうにも上達しないらしい。

 そのぶん、どんどん威力は上昇しているらしいのだが。


【 カガノ 】

「あっ……紅雪華どのごと吹き飛ばしてよいのであれば、撃ちますが……どうしましょう?」


【 ヨスガ 】

「それはやめてくれ……!」


【 カガノ 】

「ですよね……」


 適材適所というのは、なにごとにも大事だった。


【 宝玲山の将 】

「首領、山道に入ります!」


【 ヨスガ 】

「うむ――正念場、だな」




 ドガッ……ドドドッ……!


 ヨスガたちの騎馬の一団は、切り立った崖沿いの山道に差し掛かっていた。


【 タシギ 】

「――おらァッ!」


 ヒュンッ……ヒュウゥンッ!


 タシギの繰り出す変幻自在の太刀がミズキに迫る――


【 ミズキ 】

「――――ッ!」


 馬上で仰け反り、身をひねり、ことごとく回避するミズキ。


【 タシギ 】

「フン、逃げ回るだけが芸かよッ!」


【 ミズキ 】

「――その刃、どうせ、毒が塗ってあるのでしょうっ? そうそう、近づけませんね……!」


【 タシギ 】

「ククッ、あのヤブ医者から聞いたかッ? あの女、どこにいるッ……!」


【 ミズキ 】

「知っていても、教えるはずがないでしょう――」


【 タシギ 】

「だったら、さっさとてめェを片付けて、クソ天子に直接尋ねてやるよッ! 指を一本一本、切り落としながらなァ……!」


【 ミズキ 】

「――――ッ」


 ミズキとタシギの攻防が続く中……


【 ミズキ 】

「――そろそろ、頃合いのようですね」


【 タシギ 】

「ぬッ……!?」


 ミズキは懐から筒状のものを取り出すと、すかさず空に投げ放ち、


【 ミズキ 】

「――はぁっ!」


 空刀そらがたな、一閃――

 上空の筒が切り裂かれて、五色の煙が立ち昇った。




【 ???? 】

「おおっ、女官長殿からの合図ですなっ!」


【 ???? 】

「――――お願いしますっ!!」


【 ???? 】

「おおおおっ……!」


 ドゴッ……ゴロゴロッ!


【 タシギ 】

「――なッ!?」


 崖の上から、立て続けに巨大な石が転がり落ちてくる――

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