◆◆◆◆ 9-65 鶴風の戦い(14) ◆◆◆◆
鶴風城からランブたちが脱出を図ろうとしていたころ、帝都の南門近辺においては――
【 バイシ 】
「そぉらあっ!」
ドシュッ!
【 ガラの悪い兵士 】
「ぎゃああっ!?」
バイシが袈裟がけに振り下ろした大剣が、たやすく賊兵を馬上から斬り落とす。
【 宝玲山の将 】
「姐さんには負けてられねえなっ!」
【 宝玲山の将 】
「おおおっ! 続けえっ!」
ザシュウッ! ドスッ!
【 ガラの悪い兵士 】
「ぐええっ!?」
【 ガラの悪い兵士 】
「ぎゃああっ!?」
霙・バイシ率いる部隊が、帝都を狙って飛び出してきた賊兵の一団を完膚なきまでに蹴散らしていた。
*完膚……傷のない肌の意。
【 ガラの悪い兵士たち 】
『ひいいっ……お、お助けぇえっ……!』
命からがら、ほうほうの体で逃げ散っていく賊兵たち。
*ほうほうの体……這うように、慌てる意。
【 バイシ 】
「ふぅっ……さて、こんなところかねえ?」
一仕事を終え、汗をぬぐうバイシ。
【 宝玲山の将 】
「まっ、十分じゃあないですか? ……おっ? ありゃあ、新手かっ?」
【 宝玲山の将 】
「いや、あれは――」
【 ガラの悪い将 】
「お見事です、霙の姉妹――」
敵軍に潜入していた面々が、合流してくる。
彼らが煽動したことで、賊上がりの兵たちが突撃してきたのである。
【 バイシ 】
「おお、ご苦労だったねえ。いい仕事してくれたよ」
【 ガラの悪い将 】
「ははっ……!」
【 宝玲山の将 】
「姐さん、これからどうするんで?」
【 バイシ 】
「ふむ、一撃を食らわせたら、さっさとお頭と合流する……ってことになってるが」
【 バイシ 】
「せっかくだ、謀叛人のツラを見に行ってやるのもいいかもねえ――」
と、グンムの本陣に剣の切っ先を向ける。
【 宝玲山の将 】
「おおっ、そいつは豪気だっ!」
【 宝玲山の将 】
「いいですねえ、目にもの見せてやりましょうっ!」
【 バイシ 】
「あっはははっ! そうこなくっちゃあね――」
などと、一同が盛り上がっているところへ、
【 ???? 】
「な ら ん っ ! !」
と、割れんばかりの一喝が響いた。
【 宝玲山の将兵 】
『…………っ!?』
【 バイシ 】
「んっ?」
ドドドッ……!
騎馬の一団が駆け寄ってくる。
その先頭にいるのは、
【 宝玲山の将 】
「おお、お頭かっ!」
【 ヨスガ 】
「――我の言ったとおりであろうっ? 急がねば大変なことになる、となっ!」
【 ミズキ 】
「……やれやれですね」
ヨスガの言葉に、共に馬を駆けさせるミズキは呆れ顔。
【 バイシ 】
「おお、お頭か。丸焼けにはなってないみたいだねえ?」
【 ヨスガ 】
「当たり前だっ。……しかし、火薬の量が多かった気はするが!」
そうボヤくヨスガは、火傷などは負っていないが、髪は乱れ、煤まみれになっている。
もとより先ほどの爆発は自爆ではなく、ヨスガたちは間一髪、脱出を果たしていたのだった。
【 エキセン 】
「クク……いささか、張り切りすぎたかもしれず……」
どこか自慢げなのは、ヨスガと同行してきた〈霹靂匠〉こと、火薬使いの炮・エキセン。
先ほどの爆破も、彼の仕事であった。
【 ヨスガ 】
「いささかで済む話かっ……!?」
【 バイシ 】
「さて……どうするね、お頭? あちらが体勢を立て直すまで、もうしばらくかかりそうだが」
【 ヨスガ 】
「ふん、我とて、もう一発ぶん殴ってやりたいのはやまやまだが……そうもいくまいよ。あれを見ろ」
【 バイシ 】
「ン……?」
ドドドッ……!
まだ混乱から立ち直っていないグンムの陣から、騎馬の軍勢が躍り出てくる。
その数、千はくだらないであろう。
【 バイシ 】
「おっ、もう追撃の軍をまとめたみたいだねえ。さすがにやるもんだ」
【 ヨスガ 】
「ゆえに、我らはこのまま北西に――宝玲山に向かう!」
【 宝玲山の将兵 】
『おおおっ……!』
【 宝玲山の将 】
「しかし、ランブ殿たちを待たずともよいのでっ?」
【 バイシ 】
「なぁに、あの連中ならうまくやるさ――さあ、いくよっ!」
【 宝玲山の将兵 】
『おおおおおっ!!』
【 ヨスガ 】
「しばしの別れだ――さらば、帝都よ!」
ドドッ……ドドドドッ!
ヨスガらはそのまま、一目散に北西へと駆け始める。
――これが、彼女たちの長きに渡る逃避行の、はじまりに他ならなかった――
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