◆◆◆◆ 9-63 鶴風の戦い(12) ◆◆◆◆
――その頃、鶴風城では。
【 ランブの部下 】
「隊長、あれをっ……!」
【 ランブ 】
「む――」
帝都方面から立ち昇る黒煙は、城壁からはっきりと見ることができた。
【 ランブ 】
「ここまでのようだな。――ウヅキ殿、頼む!」
【 屍冥幽姫 】
「シシシ……お任せを……!」
ランブの言葉に応じたのは、方士〈屍冥幽姫〉。
【 屍冥幽姫 】
「――“醒”!」
と、彼女が印を結ぶや、周囲にドス黒い妖気が立ち込め、たちどころに城全体にまで広がり、地へと潜っていく――
【 屍冥幽姫 】
「来たれ――我が、兵たちよ……!」
ボコッ……ボコォッ……!
【 ライケン 】
「――うおっ!? なんだ、こりゃあっ!?」
西門で苦闘を続けていた蛟・ライケンは、絶句した。
【 異様な兵 】
『オオオッ……グゥオォ……!』
【 異様な兵 】
『グウッ……オオオオッ……!!』
突如、地面から異様な姿の兵が這い出てきて、彼らに襲いかかってきたのである。
【 官軍の兵 】
「ひいいっ……な、なんだっ!?」
【 官軍の将 】
「あ、あの妖魔の仕業かっ……!?」
催命翔鬼の猛威によってただでさえ恐慌状態に陥っていた将兵は、さらに怯えおののく。
【 副官 】
「ええいっ、ひるむなっ! このっ……!」
――ザクゥッ!
【 異様な兵 】
『グウッ……ウウゥッ……!!』
【 官軍の兵 】
「ぎゃあああっ!?」
【 官軍の兵 】
「な、なんだこいつらっ……斬っても刺しても、死なないっ……!?」
【 副官 】
「こ、これはっ……!?」
【 ライケン 】
「こいつはっ……もしや、僵尸ってやつかっ?」
動く死体……僵尸と呼ばれる存在は知っていたが、お目にかかるのは初めてだった。
【 催命翔鬼 】
「――ふん、もう遊びは終わりってかぁ? あ~あ、つまんね~のっ……あばよ、後は死体どもと遊んでな!」
そう言い残して、催命翔鬼はいずこかへと飛び去っていった。
【 ライケン 】
「助かった……ってこたぁないなっ。おい、いったん退くぞっ! こんなもん、相手にしてられるかっ!」
【 副官 】
「は、ははっ……!」
【 ヴァンドーラ 】
「ぬううっ……死者を冒涜するとは、許しがたしっ……! 邪なる者の呪縛よ、去れ!」
カッ……!
屍兵に向かってヴァンドーラが手をかざすと、彼女の手から白い蛇のごときものが浮かび上がり、巻きついていく。
【 僵尸兵 】
『グアッ……ア、アアアッ……!』
森羅に伝わる呪術によって、僵尸兵がもとの屍に戻る――が、相手はあまりに多く、いちいち相手にはしていられない。
【 森羅兵 】
「くうっ……ヴァンドーラ様っ、どうかお下がりをっ!」
【 ヴァンドーラ 】
「ぬううっ……女王がおられれば、このような輩っ……!」
門からの後退を余儀なくされ、歯噛みするヴァンドーラであった。
【 岳南兵 】
「な、なんだこりゃあっ!? ひいっ、近づくなっ……!」
【 ミナモ 】
「なんですのっ……伏兵っ? ええいっ、小賢しい真似をしてくれますわねっ! これがそちらの天子のやり方ですのっ!?」
【 カズサ 】
「正直、こういうのはわたしもどうかと思うけれどもっ! 背に腹は代えられないのよっ……勝負は、預けるわっ!」
【 ミナモ 】
「ああっ! 背中を見せる気ですのっ……くっ、このっ、足に絡みついてっ……ぐぬぬっ、最悪ですわ~っ!」
東門に、ミナモの無念の叫びがこだました――
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