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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
361/421

◆◆◆◆ 9-61 鶴風の戦い(10) ◆◆◆◆

 ゴォオオオォォ……


 皇帝ヨスガが乗った櫓が爆発四散し、黒煙が立ち昇っている。


【 官軍の将 】

「ど、どういうことだっ……!?」


【 官軍の兵 】

「皇帝陛下はっ……自爆したのかっ!?」


 思いがけない成り行きに、呆気に取られる官軍の将兵たち。

 さらに混乱を招いたのは――


【 軍馬たち 】

『ブルッ……ヒヒィンッ!』


【 官軍の兵 】

「ひいいっ……!?」


 鳴り響いた轟音に、陣中の軍馬たちが我を失い、暴れ出したことである。

 本来、馬は非常に繊細な生き物であり、大きな音には敏感である。

 いかに訓練された軍馬でも、生まれてこのかた聞いたことがないほどの爆音を聞かされては、乗り手を振り落とさんばかりに猛ってしまうのも無理はなかった。


【 官軍の将 】

「し、鎮まれっ……!」


【 ダンテツ 】

「くっ……! こ、これは、いったいっ……!?」


 日ごろ冷静沈着なセキ・ダンテツも、暴れる乗馬に苦慮しつつ、絶句している。

 その一方で……


【 グンム 】

「どうどう……怖かったな、安心しろ」


 レイ・グンムは顔色ひとつ変えず、愛馬を鎮めている。

 と、そのとき――


 ――ワアアアァッ……!!


 突然、背後からときの声が響いた。


【 ダンテツ 】

「ぬうっ……敵襲かっ!?」


【 グンム 】

「いや、これは――」




【 ガラの悪い将 】

「見ろ、門が空いてるぞっ! 帝都はがら空きだっ!」


【 ガラの悪い将 】

「カネも女も、分捕り放題だなっ……お前らっ、早い者勝ちだぞっ!」


【 ガラの悪い兵士たち 】

『うおおおおっ……!』


 煽り立てられ、目を血走らせて沸き立っているのは、グンムらがいる上軍(先陣)の後方、中陣に配置されている将兵たち。

 彼らはグンムの呼びかけに応じて新たに加わった者であり、そのほとんどは盗賊まがいの無頼の集団である。


【 ガラの悪い兵士たち 】

『お宝っ……女ぁあっ……!』


 そんな連中であるから、欲望に駆られ、軍規などかなぐり捨てて、我先に帝都へ向かっていく。


【 官軍の将 】

「き、貴様らっ……勝手に動くなっ! 押しとどめろっ!」


 官軍の将らが泡を食って制止しようするも、皇帝爆死の衝撃はなおも兵馬を混乱させており、容易にはいかない。


【 ガラの悪い兵士たち 】

『どけっ! どけえっ! 邪魔するなぁっ!』


【 官軍の兵 】

「む、無理ですっ! あの連中の馬は、どうしてっ……!?」


 そのうえ、なぜか彼らが駆る馬は狂奔きょうほんすることもなく、まっしぐらに突き進んでいる。

 *狂奔……狂ったように駆け回るの意。


【 ガラの悪い兵士たち 】

『うおおおっ……!!』


 とうとう、数千単位の兵が上軍を突破し、そのまま一気に帝都へと迫っていく。


【 ダンテツ 】

「ちいっ……将軍、このままではっ……!」


 あの輩が帝都で略奪や破壊の限りを尽くせば、義を掲げたグンムの名声は地に落ちることになるであろう。


【 グンム 】

「ふむ……まずいな」


 それでもなお、グンムは落ち着き払っている。

 と、そこへ――


【 ガラの悪い兵士 】

「……んっ? ありゃあ――」


 今なお黒煙が立ち込める帝都の門から、騎馬の兵が飛び出してきた。

 数はわずか二百騎ばかり。

 その先頭に立つのは……


【 大柄な剣士 】

「――――っ」


 古びた甲冑姿の、大柄な剣士。


【 ガラの悪い兵士 】

「なんだっ、たかがあれっぽっちでっ!」


【 ガラの悪い兵士 】

「おおっ、邪魔するなら、蹴散らしちまえっ!」


 数に任せて、無頼の兵たちが一飲みにせんとする――


【 大柄な剣士 】

「――おおおおおおッ!」


 ドオオオォンッ!


【 ガラの悪い兵士 】

「――ぎゃああっ!?」


【 ガラの悪い兵士 】

「――ひいぃいいっ!?」


 双方が激突するや、断末魔の悲鳴を響かせ、血しぶきにまみれたのは賊兵たちであった。

 騎馬隊は凄まじい突破力で、鋭いきりのごとく、群がってきた兵を立て続けに貫き、引き裂いていく。


 ドシュッ! ザクッ! ドバァッ!


【 ガラの悪い兵士 】

「――ひぎゃあああっ!?」


【 ガラの悪い兵士 】

「う、腕がっ――助けっ……ぐぇええっ!」


 無秩序な兵たちが次々と馬上から斬り倒され、手足や首を失い、血煙をあげて地に転がっていく。


【 大柄な剣士 】

「さぁ野郎ども、もうひと暴れするよっ!」


【 仲間たち 】

『おおおおっ……!!』


 人呼んで〈白銀夜叉しろがねやしゃエイ・バイシの掛け声に応じ、騎馬隊はさらに縦横無尽に駆け回り、賊兵たちを蹂躙じゅうりんしていく――

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