◆◆◆◆ 9-61 鶴風の戦い(10) ◆◆◆◆
ゴォオオオォォ……
皇帝ヨスガが乗った櫓が爆発四散し、黒煙が立ち昇っている。
【 官軍の将 】
「ど、どういうことだっ……!?」
【 官軍の兵 】
「皇帝陛下はっ……自爆したのかっ!?」
思いがけない成り行きに、呆気に取られる官軍の将兵たち。
さらに混乱を招いたのは――
【 軍馬たち 】
『ブルッ……ヒヒィンッ!』
【 官軍の兵 】
「ひいいっ……!?」
鳴り響いた轟音に、陣中の軍馬たちが我を失い、暴れ出したことである。
本来、馬は非常に繊細な生き物であり、大きな音には敏感である。
いかに訓練された軍馬でも、生まれてこのかた聞いたことがないほどの爆音を聞かされては、乗り手を振り落とさんばかりに猛ってしまうのも無理はなかった。
【 官軍の将 】
「し、鎮まれっ……!」
【 ダンテツ 】
「くっ……! こ、これは、いったいっ……!?」
日ごろ冷静沈着な汐・ダンテツも、暴れる乗馬に苦慮しつつ、絶句している。
その一方で……
【 グンム 】
「どうどう……怖かったな、安心しろ」
嶺・グンムは顔色ひとつ変えず、愛馬を鎮めている。
と、そのとき――
――ワアアアァッ……!!
突然、背後から鬨の声が響いた。
【 ダンテツ 】
「ぬうっ……敵襲かっ!?」
【 グンム 】
「いや、これは――」
【 ガラの悪い将 】
「見ろ、門が空いてるぞっ! 帝都はがら空きだっ!」
【 ガラの悪い将 】
「カネも女も、分捕り放題だなっ……お前らっ、早い者勝ちだぞっ!」
【 ガラの悪い兵士たち 】
『うおおおおっ……!』
煽り立てられ、目を血走らせて沸き立っているのは、グンムらがいる上軍(先陣)の後方、中陣に配置されている将兵たち。
彼らはグンムの呼びかけに応じて新たに加わった者であり、そのほとんどは盗賊まがいの無頼の集団である。
【 ガラの悪い兵士たち 】
『お宝っ……女ぁあっ……!』
そんな連中であるから、欲望に駆られ、軍規などかなぐり捨てて、我先に帝都へ向かっていく。
【 官軍の将 】
「き、貴様らっ……勝手に動くなっ! 押しとどめろっ!」
官軍の将らが泡を食って制止しようするも、皇帝爆死の衝撃はなおも兵馬を混乱させており、容易にはいかない。
【 ガラの悪い兵士たち 】
『どけっ! どけえっ! 邪魔するなぁっ!』
【 官軍の兵 】
「む、無理ですっ! あの連中の馬は、どうしてっ……!?」
そのうえ、なぜか彼らが駆る馬は狂奔することもなく、まっしぐらに突き進んでいる。
*狂奔……狂ったように駆け回るの意。
【 ガラの悪い兵士たち 】
『うおおおっ……!!』
とうとう、数千単位の兵が上軍を突破し、そのまま一気に帝都へと迫っていく。
【 ダンテツ 】
「ちいっ……将軍、このままではっ……!」
あの輩が帝都で略奪や破壊の限りを尽くせば、義を掲げたグンムの名声は地に落ちることになるであろう。
【 グンム 】
「ふむ……まずいな」
それでもなお、グンムは落ち着き払っている。
と、そこへ――
【 ガラの悪い兵士 】
「……んっ? ありゃあ――」
今なお黒煙が立ち込める帝都の門から、騎馬の兵が飛び出してきた。
数はわずか二百騎ばかり。
その先頭に立つのは……
【 大柄な剣士 】
「――――っ」
古びた甲冑姿の、大柄な剣士。
【 ガラの悪い兵士 】
「なんだっ、たかがあれっぽっちでっ!」
【 ガラの悪い兵士 】
「おおっ、邪魔するなら、蹴散らしちまえっ!」
数に任せて、無頼の兵たちが一飲みにせんとする――
【 大柄な剣士 】
「――おおおおおおッ!」
ドオオオォンッ!
【 ガラの悪い兵士 】
「――ぎゃああっ!?」
【 ガラの悪い兵士 】
「――ひいぃいいっ!?」
双方が激突するや、断末魔の悲鳴を響かせ、血しぶきにまみれたのは賊兵たちであった。
騎馬隊は凄まじい突破力で、鋭い錐のごとく、群がってきた兵を立て続けに貫き、引き裂いていく。
ドシュッ! ザクッ! ドバァッ!
【 ガラの悪い兵士 】
「――ひぎゃあああっ!?」
【 ガラの悪い兵士 】
「う、腕がっ――助けっ……ぐぇええっ!」
無秩序な兵たちが次々と馬上から斬り倒され、手足や首を失い、血煙をあげて地に転がっていく。
【 大柄な剣士 】
「さぁ野郎ども、もうひと暴れするよっ!」
【 仲間たち 】
『おおおおっ……!!』
人呼んで〈白銀夜叉〉霙・バイシの掛け声に応じ、騎馬隊はさらに縦横無尽に駆け回り、賊兵たちを蹂躙していく――
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