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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
357/421

◆◆◆◆ 9-57 鶴風の戦い(6) ◆◆◆◆

 ――ガキィンッ!


【 ライケン 】

「……ぬぉおっ!?」


【 催命翔鬼さいめいしょうき 】

「ちいッ!」


 催命翔鬼の放った痛烈な斬撃を、間一髪、コウ・ライケンは槍の柄で受け止めていた。


【 副官 】

コウ司馬っ!?」


【 ライケン 】

「あ、あっぶねぇ~っ! こんな化け物が混じってるなんて、聞いてなかったってのっ……!」


【 催命翔鬼 】

「フン、運良く防いだもんだっ! 見かけによらず、ちょっとはやるみたいだねぇ~……!」


 パタパタと翼をはためかせて空中に浮きながら、ニヤリと笑う催命翔鬼。


【 兵士 】

「な、なんだっ、ありゃあ……妖魔ばけものかっ!?」


【 兵士 】

ニセ皇帝は、妖魔を飼ってるのか……!?」


【 催命翔鬼 】

「はあ~? 誰が妖魔だっ! あんな下等な連中と一緒にするんじゃあねぇよっ!」


【 副官 】

「お、おのれっ……撃ち落とせっ!」


【 弓兵たち 】

『はっ……!』


 弓兵隊が弓をつがえ、一斉に矢を浴びせる――


 ドスッ! グサッ! ドシュウッ!


【 催命翔鬼 】

「――――っ」


 催命翔鬼はかわすこともなく、たちまち全身に矢を浴びせられる――


【 副官 】

「やったっ……!」


【 ライケン 】

「……いや、やべぇなっ……皆、気をつけろっ!」


【 弓兵たち 】

『…………!?』


【 催命翔鬼 】

「……ケッ……ケケッ……ケッタァ――!!」


 ドシュッ! ドシュウッ!!


【 弓兵たち 】

『ぎゃっ……あああああっ!?』


 催命翔鬼を貫いていた矢が、反転し、弓兵たちに浴びせられる……!


【 催命翔鬼 】

「ケ~タケタケタ! そんなオモチャで、このあたしを止められるわけが……ねえだろうがあっ!!」


 高笑いしながら滑空し、剣を振るって兵たちに肉薄にくはくする。


【 兵士たち 】

『ひいいいっ……!?』


【 催命翔鬼 】

「ケッタァーーッ!!」


 ザクッ! バシュウッ!!


【 兵士 】

「ぎゃあああっ!?」


 白刃がやすやすと兵の腹を裂き、はらわたを飛び散らせる。


【 催命翔鬼 】

「ケ~~タケタケタッ!」


 ズバァッ!


【 兵士 】

「ぐぎゃっ……あああっ!」


 逆袈裟ぎゃくげさで裂かれた人体から、真っ赤な鮮血がほとばしり、催命翔鬼に降りかかる。

 *逆袈裟……袈裟斬りの逆。下から上へ斬り上げる。


【 催命翔鬼 】

「ケ~タケタケタッ! いいねえ~っ! 命も魂も、味わい放題だっ!」


【 兵士たち 】

『ひいいいっ……!?』


 返り血に染まって笑う催命翔鬼の異様な姿に、たまらず浮き足立つ兵士たち。


【 副官 】

「こ、コウ司馬っ……!」


【 ライケン 】

「やれやれだっ……とんだ貧乏クジだなっ!」


 我が身の不運を、呪わずにはいられないライケンであった。




 ――鶴風かくふう城にて熾烈な戦いが続く中、グンムの本軍は帝都に迫りつつあった。


【 ダンテツ 】

「例の小城ですが、思った以上に抵抗が激しいようです」


【 グンム 】

「ふむ……まぁ、急かすことはあるまい」


 と、そこへ、帝都へ派遣していた斥候せっこうが戻ってくる。


【 斥候 】

「帝都を出た万余の兵が西へ向かっております。その先には、凍公堰トウこうせきが――」

 *堰……河を横切って設けられた水流調整のための建造物。要するにダムの意。


【 グンム 】

「なに、凍公堰……?」


 凍公堰とは、帝都の近くを流れる〈央河おうが〉の水量を調整するため、古代に築かれた堰である。


【 ダンテツ 】

「もしや、堰を破壊して、こちらに水攻めを仕掛けるつもりでは?」


【 グンム 】

「ふむ、よもやではあるが……ないとは言い切れぬな」


 堰を壊され、大河の水が押し寄せてきたならば、もはや進軍どころの騒ぎではない。


【 グンム 】

「そんな暴挙を行えば、天子の評判は地に落ちるが……」


【 ダンテツ 】

「追い詰められて、打つ手は選ばぬ、ということでしょうか?」


【 グンム 】

「さてな……どうあれ、放ってはおけぬ。兵を割いて、そちらへ差し向けるとしよう」




【 ケイヨウの部下 】

「閣下、レイ将軍の軍の一部が、こちらに……!」


 禁軍(近衛兵)を率いて帝都を出た八白ハチハク・ケイヨウのもとに、報告がもたらされる。


【 ケイヨウ 】

「ふむふむ……食いついてきたようだのォ。なに、急ぐことはない。ゆるりと行くとしよう」


【 ケイヨウの部下 】

「はっ……」


【 ケイヨウ 】

(さて、陛下……ここまでは予定通りですかなァ?)


 ケイヨウは白い髭を撫でつつ、宮城の方へと目を向けた……

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