◆◆◆◆ 9-57 鶴風の戦い(6) ◆◆◆◆
――ガキィンッ!
【 ライケン 】
「……ぬぉおっ!?」
【 催命翔鬼 】
「ちいッ!」
催命翔鬼の放った痛烈な斬撃を、間一髪、蛟・ライケンは槍の柄で受け止めていた。
【 副官 】
「蛟司馬っ!?」
【 ライケン 】
「あ、あっぶねぇ~っ! こんな化け物が混じってるなんて、聞いてなかったってのっ……!」
【 催命翔鬼 】
「フン、運良く防いだもんだっ! 見かけによらず、ちょっとはやるみたいだねぇ~……!」
パタパタと翼をはためかせて空中に浮きながら、ニヤリと笑う催命翔鬼。
【 兵士 】
「な、なんだっ、ありゃあ……妖魔かっ!?」
【 兵士 】
「偽皇帝は、妖魔を飼ってるのか……!?」
【 催命翔鬼 】
「はあ~? 誰が妖魔だっ! あんな下等な連中と一緒にするんじゃあねぇよっ!」
【 副官 】
「お、おのれっ……撃ち落とせっ!」
【 弓兵たち 】
『はっ……!』
弓兵隊が弓をつがえ、一斉に矢を浴びせる――
ドスッ! グサッ! ドシュウッ!
【 催命翔鬼 】
「――――っ」
催命翔鬼は躱すこともなく、たちまち全身に矢を浴びせられる――
【 副官 】
「やったっ……!」
【 ライケン 】
「……いや、やべぇなっ……皆、気をつけろっ!」
【 弓兵たち 】
『…………!?』
【 催命翔鬼 】
「……ケッ……ケケッ……ケッタァ――!!」
ドシュッ! ドシュウッ!!
【 弓兵たち 】
『ぎゃっ……あああああっ!?』
催命翔鬼を貫いていた矢が、反転し、弓兵たちに浴びせられる……!
【 催命翔鬼 】
「ケ~タケタケタ! そんなオモチャで、このあたしを止められるわけが……ねえだろうがあっ!!」
高笑いしながら滑空し、剣を振るって兵たちに肉薄する。
【 兵士たち 】
『ひいいいっ……!?』
【 催命翔鬼 】
「ケッタァーーッ!!」
ザクッ! バシュウッ!!
【 兵士 】
「ぎゃあああっ!?」
白刃がやすやすと兵の腹を裂き、腸を飛び散らせる。
【 催命翔鬼 】
「ケ~~タケタケタッ!」
ズバァッ!
【 兵士 】
「ぐぎゃっ……あああっ!」
逆袈裟で裂かれた人体から、真っ赤な鮮血がほとばしり、催命翔鬼に降りかかる。
*逆袈裟……袈裟斬りの逆。下から上へ斬り上げる。
【 催命翔鬼 】
「ケ~タケタケタッ! いいねえ~っ! 命も魂も、味わい放題だっ!」
【 兵士たち 】
『ひいいいっ……!?』
返り血に染まって笑う催命翔鬼の異様な姿に、たまらず浮き足立つ兵士たち。
【 副官 】
「こ、蛟司馬っ……!」
【 ライケン 】
「やれやれだっ……とんだ貧乏クジだなっ!」
我が身の不運を、呪わずにはいられないライケンであった。
――鶴風城にて熾烈な戦いが続く中、グンムの本軍は帝都に迫りつつあった。
【 ダンテツ 】
「例の小城ですが、思った以上に抵抗が激しいようです」
【 グンム 】
「ふむ……まぁ、急かすことはあるまい」
と、そこへ、帝都へ派遣していた斥候が戻ってくる。
【 斥候 】
「帝都を出た万余の兵が西へ向かっております。その先には、凍公堰が――」
*堰……河を横切って設けられた水流調整のための建造物。要するにダムの意。
【 グンム 】
「なに、凍公堰……?」
凍公堰とは、帝都の近くを流れる〈央河〉の水量を調整するため、古代に築かれた堰である。
【 ダンテツ 】
「もしや、堰を破壊して、こちらに水攻めを仕掛けるつもりでは?」
【 グンム 】
「ふむ、よもやではあるが……ないとは言い切れぬな」
堰を壊され、大河の水が押し寄せてきたならば、もはや進軍どころの騒ぎではない。
【 グンム 】
「そんな暴挙を行えば、天子の評判は地に落ちるが……」
【 ダンテツ 】
「追い詰められて、打つ手は選ばぬ、ということでしょうか?」
【 グンム 】
「さてな……どうあれ、放ってはおけぬ。兵を割いて、そちらへ差し向けるとしよう」
【 ケイヨウの部下 】
「閣下、嶺将軍の軍の一部が、こちらに……!」
禁軍(近衛兵)を率いて帝都を出た八白・ケイヨウのもとに、報告がもたらされる。
【 ケイヨウ 】
「ふむふむ……食いついてきたようだのォ。なに、急ぐことはない。ゆるりと行くとしよう」
【 ケイヨウの部下 】
「はっ……」
【 ケイヨウ 】
(さて、陛下……ここまでは予定通りですかなァ?)
ケイヨウは白い髭を撫でつつ、宮城の方へと目を向けた……
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