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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
355/421

◆◆◆◆ 9-55 鶴風の戦い(4) ◆◆◆◆

 鶴風城をグンムがたの数万の兵が取り囲み、四方の門へと押し寄せている。


 そのうち、まず北門には――


【 グンロウ 】

「我こそは義軍の先鋒、レイ・グンロウなりっ! これしきの小城、一蹴してくれようぞっ! 者ども、続けいっ!!」


【 官軍 】

『おおおおおおッ!!』


 レイ・グンロウ率いる軍が、早くも戦意をみなぎらせ、猛攻を仕掛けている。


 そして、東門に目を向けると――


【 ミナモ 】

「さぁ、参りますわよっ! 我らの実力、満天下まんてんかに知らしめてさしあげますわっ!」

 *満天下……世の中すべての意。


【 岳南がくなん軍 】

『うおおおおおおッ!!』


 スイ・ミナモを先頭に、岳南の軍が一斉に城壁へと弓を射かけていく。


 また一方、南門では――


【 ヴァンドーラ 】

ちゅうの弱兵、なにするものぞ! いざ、森羅しんらの武、馳走ちそうしてくれるっ! ゆくぞっ!!」


【 森羅しんら軍 】

『おおおおッ――』


 〈さときヴァンドーラ〉らに率いられた森羅の女兵たちが、甲高い喊声かんせいを放ち、襲いかかる。


 北、東、南の門がたちまち修羅場と化す中、西門においては……


【 冴えない武将 】

「……ふぁ~あ……」


【 副官 】

コウ司馬、攻撃命令を……!」


【 コウ司馬 】

「おい、大声を出すな……二日酔いで頭が痛いんだよ……あふぅ」


 馬上で大あくびをしているのは、〈コウ・ライケン〉……

 グンムに仕える部将のひとりであり、西門の攻撃の担当であった。


【 副官 】

コウ司馬っ……!」


【 ライケン 】

「あぁ、わかったわかった、よ~し、攻撃開始ぃ~」


【 官軍 】

『おっ……おおおっ!』


 気のない攻撃命令に戸惑いを見せつつも、兵たちが城壁へ突進していく。

 そんな様子を眺めながら、


【 ライケン 】

(やれやれだ……話が違うんだよなぁ)


 ライケンは、そんなことを考えていた。

 彼がこれまでグンムについてきたのは、お互いの考え方に、相通じるものがあったからである。


【 ライケン 】

(無理せず、ほどほどにやればいい……ってのが、俺たちの流儀ってもんだったでしょうに)


 にもかかわらず、グンムは今や、朝廷を牛耳ろうという大それた野心を隠そうともしていない。


【 ライケン 】

(ま、こっちは、ほどほどにしておくかねぇ~……)




【 ダンテツ 】

「……レイ将軍、コウ司馬に一軍を任せてよろしかったのですか?」


 グンムの本陣にて、ダンテツがグンムに問うていた。


【 グンム 】

「不服か?」


【 ダンテツ 】

「いえ……そういうわけではありませんが」


【 グンム 】

「あの男は、いささか――いや、だいぶ覇気には欠けるが、そつのない仕事をする。問題はなかろうさ」


【 グンム 】

「それに、包囲しつつも一方だけは攻め手を緩める……というのは、常套じょうとう手段だろう?」


【 ダンテツ 】

「それは、わかりますが……」


 城攻めにおいて、四方八方から激しく攻め立てられ、逃げ場がないとなると、それだけ防御側は死に物狂いとなり、攻撃側の犠牲も増える。

 その点、一方だけでも弱い箇所を置いておけば、そこから逃亡を図る者もいる……と、いうわけだ。


【 グンム 】

「城攻めから外されたのが、納得いかぬか?」


【 ダンテツ 】

「いえ……仕方のないことでありましょう。私は、先代のナギ将軍の薫陶くんとうを受けた者ですので」

 *薫陶……人徳で影響を与える、の意。


 先代とはつまり、ランブの亡父〈ナギ・ジンブ〉のことに他ならない。

 ジンブはかつて〈大宙四天将だいちゅうしてんしょう〉のひとりに数えられた名将であり、部下だったダンテツを一人前に育てた張本人である。


【 ダンテツ 】

「一兵卒でしかなかった私に、あの方は目をかけてくださり、将に抜擢ばってきしてくださった……そのご恩は、今も忘れておりません」


【 グンム 】

「……心情的には、むしろあちら側につきたいのではないか?」


【 ダンテツ 】

「お戯れを。今の私は官軍の将。矛をさかしまにすることなど、できませぬ」


【 グンム 】

「そうか。ならばいっそ、ランブ殿の首、挙げてくるか?」


【 ダンテツ 】

「ご命令とあらば、そういたしましょう。戦場においては親も子もなく死命を決するのが、武人というものですので」


【 グンム 】

「……そんな顔で睨むな。戯れだよ。貴公には、別の役目を任せたい。グンロウたちならば、手ごろな相手であろう」


【 ダンテツ 】

「はっ……」


【 グンム 】

「…………」




【 グンロウ 】

衝車しょうしゃを出せっ! 城門を突き破るのだっ!!」


 衝車とは破城槌はじょうつい、つまり城門や城壁を破壊することに特化した攻城兵器である。


 ゴロゴロ……


 グンロウの命に応じて、工兵たちが衝車を移動させてきた。

 そして今まさに、その切っ先が城門へと向けられたとき……


 ――ブォンッ!


【 グンロウ 】

「ぬっ……!?」


 城内から、巨大なものが落下してきて――


 ――バキャアアッ!!


【 工兵たち 】

『ひいいいっ……!?』


 一撃のもとに、衝車が粉砕されていた。


【 グンロウ 】

「うぬっ……投石機かっ!?」


 いや、よく見れば、飛んできたのは巨石ではなく……


【 グンロウ 】

「これは……つちだとっ!?」


 戸惑うところへ、


 ギイイイイ……


 城門が開け放たれた。

 そして、その奥から――


【 小山のような巨人 】

『ゴオオッ……ゴゴゴォオオオォ……!』


【 グンロウ 】

「ぬうっ……!」


 並外れた巨漢であるグンロウをも遥かに凌駕する、雲を突くような巨人が姿を現したのだった――

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