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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
354/421

◆◆◆◆ 9-54 鶴風の戦い(3) ◆◆◆◆

 その頃、宮城においては……


【 人相の悪い男 】

「――報告いたしやす。レイ将軍の軍が鶴風かくふう城への攻撃を開始しやした。その数、ざっと三万ってところです」


【 ヨスガ 】

「ふむ、心得た。引き続き、調査を頼む」


【 人相の悪い男 】

「お安い御用でさァ――」


 皇帝ヨスガに一礼し、男は宮殿の一室から足早に出ていった。


【 バイシ 】

「悪いね、ガラが悪い連中ばかりでさ」


 エイ・バイシが苦笑する。


【 ヨスガ 】

「是非もありません。彼らにも骨を折って貰わねば」


 我影也しのびのものシラクサが不在の中、忍びの仕事を任されているのは、宝玲山ほうれいざんの一味のうち、盗人ぬすびと上がりの者たちであった。

 世間からはコソ泥呼ばわりされ、さげすまれる輩だが、


【 ヨスガ 】

我影也しのびのものには及ばぬにせよ、情報伝達や調査に働いてくれていますので」


【 バイシ 】

「ふむ。ま、荒事あらごとには向かないが、適材適所ってところだね。ナギセンの姉妹たちも、うまくやるだろうさ」


 と、祖母と孫が話しているところへ……


 バーンッ!!


【 ???? 】

「大首領っ! こちらでございますかっ!」


 荒っぽく扉を開け放ってやってきたのは、人呼んで〈小幻魔しょうげんま〉、方士のセイ・ギョクレンである。


【 ヨスガ 】

「副軍師補佐か、どうした? もしや、またセイレンが逃げ出したのか?」


【 ギョクレン 】

「いえ、それはいつものことでございますので、さほど気にしておりませんが――」


【 ヨスガ 】

「……逃げたのは逃げたのだな」


【 ギョクレン 】

「そんなことより、なんでうちは裏方なのでございますかっ? 納得いかないのでございますっ!」


【 ギョクレン 】

「お役目をいただければ、師父おししょうともども、華々しく働いてみせますのにっ……!」


【 ヨスガ 】

「まあ、そう腐るな。そなたたちにしかできぬ役割というものがあるゆえな」


【 ギョクレン 】

「それは、そうでございましょうがっ……」


【 バイシ 】

「なぁに、切り札は最後まで大事に取っておくものさ。そうだろう?」


【 ギョクレン 】

「おおっ――なるほどでございますっ! 最後の最後に勝敗を決する、正真正銘の最終兵器! と、いうわけでございますね!」


【 ヨスガ 】

「……そこまでは言っておらぬが、まあそんなところだ」


【 ギョクレン 】

「承知したでございますっ! では、師父おししょうを探してきますので、これにてっ!」


 言いたいことだけ言って、ギョクレンは出ていった。


【 ヨスガ 】

「……やれやれ。さすがに扱いに慣れていますな」


【 バイシ 】

「まあ、それなりにね。しかし、本当にいいのかい? あの子を使えば、ずいぶん面白いことができそうだが」


【 ヨスガ 】

「それは確かに、そうでしょう。副軍師補佐の力は、そこらの神仙にも劣るものではありませんので」


【 ヨスガ 】

「しかし……あやつが動けば、相手側の方士も黙ってはいないでしょう。そうなると、面倒なことになります」


【 ヨスガ 】

「聞けば、向こうには森羅しんらの女王もおり、幽聖岳ゆうせいがくの援助もあるとか……そんな連中がこぞって出てきたら、いかに副軍師補佐とて、不利は否めますまい」


【 バイシ 】

「ふむ……あちら側の神仙がお出ましになるってわけかい?」


【 ヨスガ 】

「それはおそらく、ありますまいが……神仙が人間同士のいくさに直接関与することは、まず考えられませんので」


【 ヨスガ 】

「とはいえ、凄腕の方士が出現すれば、それだけで戦況は一変します。投入の機を見定めねばなりませんし……加えて、不測の事態に備えねばなりません」


【 バイシ 】

「ふむ……この前のような、未知の連中が出てきた場合に備えて、というわけだね」


【 ヨスガ 】

「ええ。ま、やれることはすべてやりますが……あとは、天運次第です」


【 バイシ 】

「運任せかい? あんたらしくもないねぇ」


【 ヨスガ 】

「やれることをやったら、後はもう、天に託すだけですよ。……さて、そろそろかな」


 と、言っているそばから、


【 ミズキ 】

「――支度が、整いました」


【 ヨスガ 】

「うむ。……では、お先に」


【 バイシ 】

「ああ、お手並み拝見させてもらうよ」


【 ヨスガ 】

「…………」


 ヨスガは頷くと、ミズキと共に出ていった。


【 バイシ 】

「さぁて……こっちも、気張らないとねぇ」


 不敵に微笑み、武者震いするバイシだった。

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