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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
351/421

◆◆◆◆ 9-51 証明 ◆◆◆◆

【 ユイ 】

「……なるほどな。まあ、あんたの話はわかった」


 なおも警戒しつつ、話を続ける。


【 ユイ 】

「だが、そう簡単に、将軍に紹介するってわけにはいかねえな」


【 シラクサ 】

『ほう、罠かもしれぬ――と?』


【 ユイ 】

「そりゃあそうだ。偽りの降伏で相手を油断させておいて、懐に飛び込む……なんてのは、古今東西、よくある手だろう?」


 まして、相手は自分より上手うわての忍びの者……

 それこそ、グンムの命を狙う刺客となるかもしれないのである。


【 ユイ 】

(うかつに乗れる話じゃあねえな)


 ユイがそう考えるのも、道理であろう。


【 シラクサ 】

『それは――もっともだ。ならば、どうすれば信じてもらえようか?』


【 ユイ 】

「どうすればいいかって? ふむ、そうだな……」


【 ユイ 】

「一番手っ取り早い方法を教えようか?」


【 シラクサ 】

『聞こう』


【 ユイ 】

「天子の首を、獲ってくることだ」


【 シラクサ 】

『――――っ』


【 ユイ 】

「そうすりゃあ、間違いなく信じて貰えるだろうぜ」


【 シラクサ 】

『…………』


【 ユイ 】

「どうだ、できるか? あんたほどの遣い手なら、無理な話じゃあるまい」


【 シラクサ 】

『……それは、できぬ』


【 ユイ 】

「ほう、なぜだ?」


【 シラクサ 】

『……天命が去ったとはいえ、あの御方は帝室の一員には違いない』


【 シラクサ 】

『まして、旧主である。その御方を手にかけるのは――忍びない』


【 ユイ 】

「…………」


【 シラクサ 】

『それでも、新たなる天子さまが命じるならば、ぜひなくお受けもしようが……そうでないなら、できぬ相談だ』


【 ユイ 】

「……なるほどな」


【 シラクサ 】

『――これでは信用ならぬ、と?』


【 ユイ 】

「いいや、逆だ」


 と、ユイは首を振ってみせる。


【 ユイ 】

「もし、お安い御用……なんて言い出すような卑劣な輩だったら、むしろ信用できないところだったぜ」


【 シラクサ 】

『…………』


【 ユイ 】

「ま、どのみち、あんたをどうするかなんてことは、俺の一存じゃ決められん」


【 ユイ 】

「こっちにも、やることがあるしな……ことの次第を手紙に書くから、そいつを持ってレイ将軍の陣へ行ってくれ。あとは、向こうで判断するだろうよ」


【 シラクサ 】

『――心得た。お心遣い、感謝する』


 シラクサは、深々と一礼した。


【 ユイ 】

「だが、その前に――」


【 シラクサ 】

『…………っ?』




 それから、しばしの後……

 ユイは帝都を離れ、北西へ向かっていた。

 峰西ほうせいの地に滞在しているというショウ・タイシンに会うためである。


【 ユイ 】

(さっきの件……本当なのか、それとも、策略か?)


【 ユイ 】

(……ま、そのあたりは、利口な方々に任せるさ)


 グンムの陣営には知恵者も多いし、どうにかするだろう。

 策ならば見破るかもしれないし、むしろ逆手にとって利用する……といったことも考えられる。

 そのあたりの悪だくみは、ユイの得意分野ではない。


【 ユイ 】

(……それにしても、あれほどの遣い手が、あんな坊やだったとはな)


 顔もわからぬ相手を推挙はできない――と告げると、シラクサはまとっていた甲冑を脱ぎ、真の姿をさらした。

 まだあどけなさの残る童子であり、アルカナより年少だったかもしれない。


【 ユイ 】

(落ち着きもなくてオドオドしてたが……あれで、とんでもない忍びの達人だっていうんだから、恐ろしいな)


 まったく、世間は広い……というしかない。


【 ユイ 】

(しかし、あのお嬢ちゃんが、人侠烈聖じんきょうれっせいで、副頭目だって……?)


 今なお信じがたいものがある。

 別れ際、シラクサから聞かされた話が思い出された。


【 ユイ 】

(わけがわからんが……これも、姐さんの計画通りだとでも?)


 なにはともあれ……


【 ユイ 】

(――死ぬなよ、小姐おじょうちゃん。弟のためにもな)


 そう思いながら、ユイは夜の野を駆けていった。




 かくして、さまざまな人々の思惑が交錯する中、帝都に戦火が迫る――

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