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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
349/421

◆◆◆◆ 9-49 遭遇 ◆◆◆◆

【 アカシ 】

「――――っ」


 振り返ったアカシの視線の先には、ひとりの娘が立っている。

 その両手には、抜き身の剣が握られていた。


【 高飛車そうな娘 】

「あなた……ショウ家の者と名乗っていたわね。ついてきてもらおうかしら。聞きたいことがあるの」


【 アカシ 】

「おやおや……私は、老い先短い、ただの年寄り……お話するようなことなど、なにもございませんが」


【 高飛車そうな娘 】

「ふん、聞いて呆れるわ! あのへなちょこ娘の目は騙せても、この〈緋閃剣ひせんけん〉の目をごまかせると思わないことね!」


【 アカシ 】

「これはこれは……世に名高い、セン家のご令嬢でしたか」


【 カズサ 】

「おーっほっほっほっ! そう! このわたしが人呼んで〈緋閃剣ひせんけん〉、セン・カズサよ!」


【 アカシ 】

「ふむ、視線は感じていましたが……あなたほどの御方が、ホノカナ殿の護衛を?」


【 カズサ 】

「……仕方ないでしょうっ? あんなのでも、あの御方の義妹いもうとで……副頭目なんだからっ!」


【 アカシ 】

「副頭目……ですと?」


【 カズサ 】

「そんなことはどうでもいいわ、このまがい物っ!」


 剣の切っ先を突きつける。


【 アカシ 】

「――――っ」


【 カズサ 】

「〈彩雲剣侠さいうんけんきょう〉ことシャク大姐おねえさまには、わたしもお会いしたことがあるけれどっ……」


【 カズサ 】

「あの御仁は、いつも悠然としていて、まるで達人には見えなかったっ……でも、あなたの隙のない体さばき、溢れ出る殺気っ……まるっきり別人よ!」


【 アカシ? 】

「……いやはや、慣れない変装なんて、するもんじゃあないな――」


 アカシ――を名乗る者は、苦笑いを浮かべる。


【 カズサ 】

「おとなしくついてくるなら良し、そうでなければっ……」


【 アカシ? 】

「……どうする?」


【 カズサ 】

「知れたこと……力づくで、ご同行いただくわっ!」


 ――ダッ!


 カズサが一気に間合いを詰めてくる――


【 カズサ 】

「緋閃――」


【 アカシ? 】

「…………っ!」


【 カズサ 】

「――十文字斬りッッ!!」


 ガキィッ! ギィンッ!


【 アカシ? 】

「おおっ……!」


 ズザザッ……!


【 カズサ 】

「ちいっ……!」


 カズサの、目にも止まらぬ二刀流高速連続斬撃!

 しかし偽アカシもさるもの、とっさに抜いた剣でかろうじて受け流し、背後に跳びすさる。


【 アカシ? 】

「なるほど……さすがは〈緋翔閃女ひしょうせんにょ〉の末裔、なんとも速い……!」


【 カズサ 】

「あなたこそ……偽物にしてはなかなかやるようね! けっこう本気だったんだけどっ!」


【 アカシ? 】

「…………」


【 カズサ 】

「ならば……!」


 カズサは左右の剣を鞘に収めると、グッと腰をかがめた。


【 アカシ? 】

「ほう、これは――」


【 カズサ 】

「我が新奥義、〈緋閃一文字ひせんいちもんじ斬り〉、味わわせてあげるわ……!」


【 アカシ? 】

「おやおや……その一撃、味見するのはやぶさかじゃあないが――」


【 アカシ? 】

「あいにく、他にもやることがあるんでね。そいつはまたの機会にいただくとしよう」


【 カズサ 】

「はぁっ? おめおめ逃がすはずが――」


【 アカシ? 】

「おさらばっ!」


 ――バフゥッ!


【 カズサ 】

「ん、なっ――ごほっ、げほっ! 煙幕っ!? こ、このぉおっ……!」


 突如巻き起こった煙が、晴れた後には……


【 カズサ 】

「これは……服っ? カツラもっ……ええいっ! まんまとっ……!」


 地団駄じだんだを踏むばかりのカズサであった。

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