◆◆◆◆ 9-49 遭遇 ◆◆◆◆
【 アカシ 】
「――――っ」
振り返ったアカシの視線の先には、ひとりの娘が立っている。
その両手には、抜き身の剣が握られていた。
【 高飛車そうな娘 】
「あなた……焦家の者と名乗っていたわね。ついてきてもらおうかしら。聞きたいことがあるの」
【 アカシ 】
「おやおや……私は、老い先短い、ただの年寄り……お話するようなことなど、なにもございませんが」
【 高飛車そうな娘 】
「ふん、聞いて呆れるわ! あのへなちょこ娘の目は騙せても、この〈緋閃剣〉の目をごまかせると思わないことね!」
【 アカシ 】
「これはこれは……世に名高い、閃家のご令嬢でしたか」
【 カズサ 】
「おーっほっほっほっ! そう! このわたしが人呼んで〈緋閃剣〉、閃・カズサよ!」
【 アカシ 】
「ふむ、視線は感じていましたが……あなたほどの御方が、ホノカナ殿の護衛を?」
【 カズサ 】
「……仕方ないでしょうっ? あんなのでも、あの御方の義妹で……副頭目なんだからっ!」
【 アカシ 】
「副頭目……ですと?」
【 カズサ 】
「そんなことはどうでもいいわ、このまがい物っ!」
剣の切っ先を突きつける。
【 アカシ 】
「――――っ」
【 カズサ 】
「〈彩雲剣侠〉こと灼の大姐には、わたしもお会いしたことがあるけれどっ……」
【 カズサ 】
「あの御仁は、いつも悠然としていて、まるで達人には見えなかったっ……でも、あなたの隙のない体さばき、溢れ出る殺気っ……まるっきり別人よ!」
【 アカシ? 】
「……いやはや、慣れない変装なんて、するもんじゃあないな――」
アカシ――を名乗る者は、苦笑いを浮かべる。
【 カズサ 】
「おとなしくついてくるなら良し、そうでなければっ……」
【 アカシ? 】
「……どうする?」
【 カズサ 】
「知れたこと……力づくで、ご同行いただくわっ!」
――ダッ!
カズサが一気に間合いを詰めてくる――
【 カズサ 】
「緋閃――」
【 アカシ? 】
「…………っ!」
【 カズサ 】
「――十文字斬りッッ!!」
ガキィッ! ギィンッ!
【 アカシ? 】
「おおっ……!」
ズザザッ……!
【 カズサ 】
「ちいっ……!」
カズサの、目にも止まらぬ二刀流高速連続斬撃!
しかし偽アカシもさるもの、とっさに抜いた剣でかろうじて受け流し、背後に跳びすさる。
【 アカシ? 】
「なるほど……さすがは〈緋翔閃女〉の末裔、なんとも速い……!」
【 カズサ 】
「あなたこそ……偽物にしてはなかなかやるようね! けっこう本気だったんだけどっ!」
【 アカシ? 】
「…………」
【 カズサ 】
「ならば……!」
カズサは左右の剣を鞘に収めると、グッと腰を屈めた。
【 アカシ? 】
「ほう、これは――」
【 カズサ 】
「我が新奥義、〈緋閃一文字斬り〉、味わわせてあげるわ……!」
【 アカシ? 】
「おやおや……その一撃、味見するのはやぶさかじゃあないが――」
【 アカシ? 】
「あいにく、他にもやることがあるんでね。そいつはまたの機会にいただくとしよう」
【 カズサ 】
「はぁっ? おめおめ逃がすはずが――」
【 アカシ? 】
「おさらばっ!」
――バフゥッ!
【 カズサ 】
「ん、なっ――ごほっ、げほっ! 煙幕っ!? こ、このぉおっ……!」
突如巻き起こった煙が、晴れた後には……
【 カズサ 】
「これは……服っ? カツラもっ……ええいっ! まんまとっ……!」
地団駄を踏むばかりのカズサであった。
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