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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
347/421

◆◆◆◆ 9-47 提案 ◆◆◆◆

【 ???? 】

「ああ――やはり、ホノカナ殿でしたね」


 そう言って柔和な笑みをホノカナに向けてきたのは、旅装束の老女であった。


【 ホノカナ 】

「アカシ、さん……!?」


【 セイレン 】

「ホノカナ殿、お知り合いで?」


【 ホノカナ 】

「は、はい、ショウさんのところで、お世話になったことがあって……」


 シャク・アカシ――

 ショウ・タイシンの身内であり、ホノカナがショウ家に身を寄せていた頃、縁があったのである。


【 アカシ 】

「いえいえ、お世話というほどのことは……お元気そうでなによりです」


【 ホノカナ 】

「アカシさんこそ、お変わりなく……! あっ、こちらはアイ・セイレンさんっていって――」


【 ホノカナ 】

「あれっ!? いないっ!?」


 気づけば、セイレンは煙のように姿を消していた。


【 ホノカナ 】

(どこかに買い食いに行ったのかな……うう、連れてくるんじゃなかったかも!)


 と、内心でボヤキつつ……


【 ホノカナ 】

「アカシさん、どうしてここに?」


【 アカシ 】

「お嬢さまから頼まれましてね。みやこの様子を探ってくるように、と」


 アカシがいうお嬢さまとは、タイシンのことに他ならない。


【 アカシ 】

「それから、あなたにお会いしたいと思っていたのですが……ここで巡り会えたのは、天のおはからい、というものでしょうね」


【 ホノカナ 】

「わたしに……ですか?」


【 アカシ 】

「まあまあ、歩きながら話しましょう。買い物があるのでしょう?」


【 ホノカナ 】

「あっ、はい、この薬の材料なんですが……」


 と、材料が記された紙片を見せる。


【 アカシ 】

「ふむふむ……なるほど。手ごろな薬屋を知っています。そこへ行けば、きっと手に入るでしょう。案内しますよ」


【 ホノカナ 】

「あ、ありがとうございますっ!」


【 アカシ 】

「お連れのかたは、いいのですか?」


【 ホノカナ 】

「大丈夫です、放っておけばそのうち帰ってくると思いますから!」


【 アカシ 】

「ははぁ……では、参りましょうか」




【 ホノカナ 】

「それで、わたしに用事って……?」


 通りを歩きながら、ホノカナが問う。


【 アカシ 】

レイ将軍が率いる大軍が、間近に迫っております。むろん、ご存じと思いますが」


【 ホノカナ 】

「……っ、はい、もちろん……」


【 アカシ 】

「天子さまは、迎え撃つ気はないとの噂ですが……?」


【 ホノカナ 】

「……っ、はい、そうみたいです。レイ将軍の軍勢が来る前に、みやこから離れるおつもりらしくて……」


【 アカシ 】

「なるほど……しかし、天子さまが帝都を離れるとなれば、なにかしら変事が起きてもおかしくはありますまい」


【 ホノカナ 】

「それは……」


【 アカシ 】

「それに、去るのはいいとして、行く当てはあるのですか?」


【 ホノカナ 】

「……さぁ、そこまでは……」


【 アカシ 】

「ふむ……ありていに言いましょう。このままあなたが天子さまのそばにいれば、危険が及ぶ可能性は否定できません」


【 アカシ 】

「お嬢さまはそれを案じて、私を遣わしたのです。ですから、あなたがお望みなら、手を尽くして身柄を保護いたしましょう」


【 ホノカナ 】

「…………っ」


【 アカシ 】

「その後も、ほとぼりが冷めるまで、ショウ家でお守りさせていただきます。いかがです?」


【 ホノカナ 】

「……っ、すごく、ありがたいお申し出です」


【 ホノカナ 】

「でも、わたしは……行けません」


【 アカシ 】

「それは……なぜ?」


【 ホノカナ 】

「陛下を裏切って、自分だけ助かることなんて、できませんからっ……」


【 アカシ 】

「それは……陛下と義姉妹きょうだいの契りを交わしたからですか?」


【 ホノカナ 】

「……っ、ご存じだったんですねっ」


【 ホノカナ 】

「それも、ありますけど……今のわたしには、大事なお役目があるのでっ……」


【 アカシ 】

「……なるほど」


【 アカシ 】

「しかし……弟どのが、一日千秋いちじちせんしゅうの思いで、あなたを待っているというのに?」


【 ホノカナ 】

「……うっ、うぅ……」


 ホノカナはしばし口ごもっていたが……やがて、顔を上げた。


【 ホノカナ 】

「あの子は……アルカナは、強い子です」


【 ホノカナ 】

「だから……わたしがいなくても、きっと大丈夫だと、思いますっ……」


【 アカシ 】

「……そう、ですか。そこまで仰るなら……弟どのも、納得することでしょう」


 アカシは、頷いてみせた。

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