◆◆◆◆ 9-47 提案 ◆◆◆◆
【 ???? 】
「ああ――やはり、ホノカナ殿でしたね」
そう言って柔和な笑みをホノカナに向けてきたのは、旅装束の老女であった。
【 ホノカナ 】
「アカシ、さん……!?」
【 セイレン 】
「ホノカナ殿、お知り合いで?」
【 ホノカナ 】
「は、はい、焦さんのところで、お世話になったことがあって……」
灼・アカシ――
焦・タイシンの身内であり、ホノカナが焦家に身を寄せていた頃、縁があったのである。
【 アカシ 】
「いえいえ、お世話というほどのことは……お元気そうでなによりです」
【 ホノカナ 】
「アカシさんこそ、お変わりなく……! あっ、こちらは藍・セイレンさんっていって――」
【 ホノカナ 】
「あれっ!? いないっ!?」
気づけば、セイレンは煙のように姿を消していた。
【 ホノカナ 】
(どこかに買い食いに行ったのかな……うう、連れてくるんじゃなかったかも!)
と、内心でボヤキつつ……
【 ホノカナ 】
「アカシさん、どうしてここに?」
【 アカシ 】
「お嬢さまから頼まれましてね。みやこの様子を探ってくるように、と」
アカシがいうお嬢さまとは、タイシンのことに他ならない。
【 アカシ 】
「それから、あなたにお会いしたいと思っていたのですが……ここで巡り会えたのは、天のおはからい、というものでしょうね」
【 ホノカナ 】
「わたしに……ですか?」
【 アカシ 】
「まあまあ、歩きながら話しましょう。買い物があるのでしょう?」
【 ホノカナ 】
「あっ、はい、この薬の材料なんですが……」
と、材料が記された紙片を見せる。
【 アカシ 】
「ふむふむ……なるほど。手ごろな薬屋を知っています。そこへ行けば、きっと手に入るでしょう。案内しますよ」
【 ホノカナ 】
「あ、ありがとうございますっ!」
【 アカシ 】
「お連れの方は、いいのですか?」
【 ホノカナ 】
「大丈夫です、放っておけばそのうち帰ってくると思いますから!」
【 アカシ 】
「ははぁ……では、参りましょうか」
【 ホノカナ 】
「それで、わたしに用事って……?」
通りを歩きながら、ホノカナが問う。
【 アカシ 】
「嶺将軍が率いる大軍が、間近に迫っております。むろん、ご存じと思いますが」
【 ホノカナ 】
「……っ、はい、もちろん……」
【 アカシ 】
「天子さまは、迎え撃つ気はないとの噂ですが……?」
【 ホノカナ 】
「……っ、はい、そうみたいです。嶺将軍の軍勢が来る前に、みやこから離れるおつもりらしくて……」
【 アカシ 】
「なるほど……しかし、天子さまが帝都を離れるとなれば、なにかしら変事が起きてもおかしくはありますまい」
【 ホノカナ 】
「それは……」
【 アカシ 】
「それに、去るのはいいとして、行く当てはあるのですか?」
【 ホノカナ 】
「……さぁ、そこまでは……」
【 アカシ 】
「ふむ……ありていに言いましょう。このままあなたが天子さまのそばにいれば、危険が及ぶ可能性は否定できません」
【 アカシ 】
「お嬢さまはそれを案じて、私を遣わしたのです。ですから、あなたがお望みなら、手を尽くして身柄を保護いたしましょう」
【 ホノカナ 】
「…………っ」
【 アカシ 】
「その後も、ほとぼりが冷めるまで、焦家でお守りさせていただきます。いかがです?」
【 ホノカナ 】
「……っ、すごく、ありがたいお申し出です」
【 ホノカナ 】
「でも、わたしは……行けません」
【 アカシ 】
「それは……なぜ?」
【 ホノカナ 】
「陛下を裏切って、自分だけ助かることなんて、できませんからっ……」
【 アカシ 】
「それは……陛下と義姉妹の契りを交わしたからですか?」
【 ホノカナ 】
「……っ、ご存じだったんですねっ」
【 ホノカナ 】
「それも、ありますけど……今のわたしには、大事なお役目があるのでっ……」
【 アカシ 】
「……なるほど」
【 アカシ 】
「しかし……弟どのが、一日千秋の思いで、あなたを待っているというのに?」
【 ホノカナ 】
「……うっ、うぅ……」
ホノカナはしばし口ごもっていたが……やがて、顔を上げた。
【 ホノカナ 】
「あの子は……アルカナは、強い子です」
【 ホノカナ 】
「だから……わたしがいなくても、きっと大丈夫だと、思いますっ……」
【 アカシ 】
「……そう、ですか。そこまで仰るなら……弟どのも、納得することでしょう」
アカシは、頷いてみせた。
ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!




