表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
331/421

◆◆◆◆ 9-31 誘引の計 ◆◆◆◆

【 タシギ 】

「手品のタネは糸ってワケか……ケチな細工をッ!」


 そう、ゼンキョクが用いているのは、縫合ほうごう用の糸。

 この糸を張り巡らせ、巧みに樹上を移動し、次々とタシギの手下たちを襲ったのだ。

 そして今、タシギの放った飛刀で糸を切られる前に樹上へと避難したのだった。


【 ゼンキョク 】

「ほう、ひと目で見破るとは……大したものですね」


【 タシギ 】

「フン、そんな大道芸、このアタシに通用するものかよッ!」


【 ゼンキョク 】

「この手並み……もしや〈血風翼将けっぷうよくしょう〉ことギン司馬では?」


【 タシギ 】

「知ってるなら話は早い――とっとと観念して、その首、差し出しなッ!」


【 ゼンキョク 】

「おっと――」


 タシギの放った飛刀ひとうをかろうじて避け、ゼンキョクは樹上に身を潜める。


【 タシギ 】

「ちいっ……! ちょこまかとッ!」


【 ゼンキョク 】

「ふむ、どうやら噂ほどではないようですね――名前負けもはなはだしいようだ」


【 タシギ 】

「てめぇッ……! いい気になるなよッ!」


 と、カッとなったタシギだったが……


【 タシギ 】

「……ククッ、てめェの腹は読めたぜ。ここでアタシを足止めしようってんだろ? アイツらを逃がすためにな……!」


【 ゼンキョク 】

「…………」


【 タシギ 】

「だったら、先にアイツらを片付けてやるよッ。てめェは後回しだッ……!」


 と、ゼンキョクに背を向け、馬首を巡らせるタシギ。


【 ゼンキョク 】

「――――っ」


 その背に向けて、ゼンキョクが鍼を投げつける。


【 タシギ 】

「――そこかッ!」


 振り返ることもなく、タシギが背後へ飛刀を投げつけた。


 ――ドシュッ!


【 ゼンキョク 】

「ぐっ……うっ!」


 鍼を弾き返した飛刀が、ゼンキョクの肩に直撃していた。

 苦悶の声を漏らしつつ、地面に落下する――


 ――ドシャッ!


【 タシギ 】

「ククッ……他愛ないんだよッ! 場所さえわかりゃあ、目で見るまでもない……!」


 せせら笑いながら、タシギは下馬して、ゼンキョクへと歩み寄る。


【 ゼンキョク 】

「…………っ」


【 タシギ 】

「クッククク……ざまァねェな……!」


 仰向けに倒れたゼンキョクを見下ろしながら、タシギはニヤニヤと薄笑いを浮かべる。


【 ゼンキョク 】

「くっ……私としたことが……誘いに、乗ってしまうとはっ……」


【 タシギ 】

「アッハハハッ! アタシを誰だと思ってやがるッ! 小細工が取り柄の芸人が、調子に乗った報いってワケだ――」


 高笑いしつつ、刀を振り上げる。


【 タシギ 】

「あばよ、ヤブ医者ッ!」


 ゼンキョクの喉笛めがけ、曲刀が迫る――


【 ゼンキョク 】

「…………!」


 ――ズシュウッ!




【 タシギ 】

「ぎゃッ!? ぐぎゃぁあああああああああッ!」


 絶叫を放ったのは、タシギの方であった。

 その顔面に、何本もの鍼が突き立っている……!


【 ゼンキョク 】

「……やれやれ」


 ゼンキョクは、はだけた胸を隠して、身なりを整えた。

 タシギの油断を誘ったところで、筋肉を緊縮させ、体内に隠していた鍼を射出、顔めがけて打ち込んだのである。


【 タシギ 】

「ぐっ……が、がぁっ……て、てめェェッ……!」


【 ゼンキョク 】

「――貴方は人殺しを楽しむ性質たち、と聞いていました。自らの手でとどめを刺すため近寄ってくるだろうと見越し、体内に鍼を仕込んでおいたわけです」


【 タシギ 】

「く、クソがッ……ぐぐうッ……誘い込まれたのは、アタシの方だと……! か、顔がッ……焼ける……ぐぅううッ!」


【 ゼンキョク 】

「…………」


 ゼンキョクは苦悶するタシギを尻目に、肩に突き立ったままだった飛刀を抜き、手早く止血する。

 そして、隠していた飛鷹馬を引き出してくると、鞍にまたがった。


【 タシギ 】

「て、てめェ……逃げる……気かアッ……!」


【 ゼンキョク 】

「ええ、こちらも手負いですし……貴方と決着をつけようとすれば、相討ちになりかねませんので」


【 タシギ 】

「ま、待ちやがれッ……クソったれ……がッ!」


【 ゼンキョク 】

「それでは、これにて――」


 ド、ド、ド……


 そのまま、ゼンキョクは馬を駆って離れていった。


【 タシギ 】

「ぐううぅッ……! く、クソぉおおッ……! クソがぁアアッ……!」


【 タシギ 】

「殺すッ……絶対に、殺してやるぞッ……! 生きたまま皮を剥いで、こま切れにして、野良犬に食わせてやるッ……ぐ、あっ、ああああッ……!」


 深深しんしんとした森の中に、タシギの呪詛じゅその言葉が響き渡った……

ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ