◆◆◆◆ 9-27 看破 ◆◆◆◆
【 グンム 】
「……ずいぶんと、変わった連中だったな」
【 シュレイ 】
「……まことに」
【 ミナモ 】
「確かに風変わりな面々でしたわね! でも、河甫老師の腕は確かだったでしょう?」
【 シュレイ 】
「ええ、その点は――疑いないようです」
【 ミナモ 】
「わたくし、見送ってまいりますわ! お礼も差し上げなくては!」
と、幕舎から出かけたミナモだったが、ふと振り返り、
【 ミナモ 】
「……嶺将軍、先ほどの話、まことなのでしょうね?」
【 グンム 】
「ああ、お父上にも伝えてある話だ。ことが成就したら、俺の好きにやらせてもらう」
【 ミナモ 】
「それなら結構ですわ。今、威張りくさっている輩よりは、ずっとマシな政ができるでしょうから! それでは――」
と、ミナモは彼女らを追っていった。
【 シュレイ 】
「期待されているようですな」
【 グンム 】
「まあ、今のところは、な」
【 グンム 】
「ところで、さっきの連中だが……どう思う?」
【 シュレイ 】
「さて……あの河甫なる者、確かに腕の立つ医師ではありましょうが……只者とは思われません」
【 グンム 】
「ふむ……なにか、妙な気配を感じたな」
【 グンム 】
「あれは……そう、言うなら“こちら側”の人間のようだ」
【 シュレイ 】
「こちら側……ですか?」
【 グンム 】
「“死”の匂いがするってことさ。ありていに言えば、軍人同様、人殺し稼業の匂いがな」
【 シュレイ 】
「もしや、刺客っ……?」
【 グンム 】
「それなら、さっき仕掛けてきてるだろうさ。どちらかといえば、諜者か……」
*諜者……スパイの意。
【 グンム 】
「――いや、待てよ……」
【 グンム 】
「朝廷から使者が発った、って話だったな?」
【 シュレイ 】
「っ! では、先ほどの者たちは――」
【 グンム 】
「……なるほどな。あのずっと黙っていた小娘、顔はよく見えなかったが……あの身体つき、どこか見覚えがあった」
【 シュレイ 】
「! 長楽楼……あの時の、娘でしたか」
帝都を発つ前、凪・ランブと酒楼で会談したことがあった。
そのとき、オドオドとした小娘も同行していたが……
【 グンム 】
「青龍……なんとかと言っていたな。貴人の名代という話だったが……」
【 シュレイ 】
「……なるほど。天子の回し者でしたか」
ようやく、すべてがつながった。
【 シュレイ 】
「いかがなさいます? すぐにでも、追っ手を――」
【 グンム 】
「よせよせ」
今にも立ち上がらんばかりのシュレイに、グンムは手を振ってみせる。
【 グンム 】
「たった三人で数万の軍に乗り込んできたんだ、むしろその胆力を褒めてやるべきだろう。ここは、帰してやるさ」
【 シュレイ 】
「…………」
【 グンム 】
「それに、さっきの話が向こうに伝われば、それはそれで面白いだろう?」
【 シュレイ 】
「それは……確かにそうですが」
皇帝ヨスガは助けるが、側近は許さない――という情報が伝わったとき、あちらの陣営がどうなるか……
あるいは、上下の関係に亀裂が入るかもしれない。
【 シュレイ 】
「しかし、みすみす逃がすというのは……」
【 グンム 】
「なんだ、二日酔いを看破されたのが口惜しかったのか?」
【 シュレイ 】
「い、いえ……その点は、お恥ずかしい限りですが」
【 グンム 】
「まあ、捨て置けばいいさ。老師は、言われたとおりに養生してくれ」
【 シュレイ 】
「……ははっ……」
【 グンム 】
「…………」
顔を伏せるシュレイに、グンムは鋭い視線を向けていた……
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