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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
327/421

◆◆◆◆ 9-27 看破 ◆◆◆◆

【 グンム 】

「……ずいぶんと、変わった連中だったな」


【 シュレイ 】

「……まことに」


【 ミナモ 】

「確かに風変わりな面々でしたわね! でも、河甫コウホ老師せんせいの腕は確かだったでしょう?」


【 シュレイ 】

「ええ、その点は――疑いないようです」


【 ミナモ 】

「わたくし、見送ってまいりますわ! お礼も差し上げなくては!」


 と、幕舎から出かけたミナモだったが、ふと振り返り、


【 ミナモ 】

「……レイ将軍、先ほどの話、まことなのでしょうね?」


【 グンム 】

「ああ、お父上にも伝えてある話だ。ことが成就したら、俺の好きにやらせてもらう」


【 ミナモ 】

「それなら結構ですわ。今、威張りくさっている輩よりは、ずっとマシなまつりごとができるでしょうから! それでは――」


 と、ミナモは彼女らを追っていった。


【 シュレイ 】

「期待されているようですな」


【 グンム 】

「まあ、今のところは、な」


【 グンム 】

「ところで、さっきの連中だが……どう思う?」


【 シュレイ 】

「さて……あの河甫コウホなる者、確かに腕の立つ医師ではありましょうが……只者とは思われません」


【 グンム 】

「ふむ……なにか、妙な気配を感じたな」


【 グンム 】

「あれは……そう、言うなら“こちら側”の人間のようだ」


【 シュレイ 】

「こちら側……ですか?」


【 グンム 】

「“死”の匂いがするってことさ。ありていに言えば、軍人同様、人殺し稼業の匂いがな」


【 シュレイ 】

「もしや、刺客っ……?」


【 グンム 】

「それなら、さっき仕掛けてきてるだろうさ。どちらかといえば、諜者ちょうじゃか……」

 *諜者……スパイの意。


【 グンム 】

「――いや、待てよ……」


【 グンム 】

「朝廷から使者がった、って話だったな?」


【 シュレイ 】

「っ! では、先ほどの者たちは――」


【 グンム 】

「……なるほどな。あのずっと黙っていた小娘、顔はよく見えなかったが……あの身体つき、どこか見覚えがあった」


【 シュレイ 】

「! 長楽楼ちょうらくろう……あの時の、娘でしたか」


 帝都を発つ前、ナギ・ランブと酒楼で会談したことがあった。

 そのとき、オドオドとした小娘も同行していたが……


【 グンム 】

青龍セイリュウ……なんとかと言っていたな。貴人の名代みょうだいという話だったが……」


【 シュレイ 】

「……なるほど。天子のまわし者でしたか」


 ようやく、すべてがつながった。


【 シュレイ 】

「いかがなさいます? すぐにでも、追っ手を――」


【 グンム 】

「よせよせ」


 今にも立ち上がらんばかりのシュレイに、グンムは手を振ってみせる。


【 グンム 】

「たった三人で数万の軍に乗り込んできたんだ、むしろその胆力を褒めてやるべきだろう。ここは、帰してやるさ」


【 シュレイ 】

「…………」


【 グンム 】

「それに、さっきの話が向こうに伝われば、それはそれで面白いだろう?」


【 シュレイ 】

「それは……確かにそうですが」


 皇帝ヨスガは助けるが、側近は許さない――という情報が伝わったとき、あちらの陣営がどうなるか……

 あるいは、上下の関係に亀裂が入るかもしれない。


【 シュレイ 】

「しかし、みすみす逃がすというのは……」


【 グンム 】

「なんだ、二日酔いを看破されたのが口惜しかったのか?」


【 シュレイ 】

「い、いえ……その点は、お恥ずかしい限りですが」


【 グンム 】

「まあ、捨て置けばいいさ。老師せんせいは、言われたとおりに養生してくれ」


【 シュレイ 】

「……ははっ……」


【 グンム 】

「…………」


 顔を伏せるシュレイに、グンムは鋭い視線を向けていた……

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