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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
326/421

◆◆◆◆ 9-26 一筆 ◆◆◆◆

【 ゼンキョク 】

「――腹蔵ふくぞうのないお言葉、かたじけなく存じます。改めて、閣下の大望に感服いたしました」

 *腹蔵……包み隠すの意。


 と、さらりと話を引き継いで。


【 ゼンキョク 】

「ついては、私の知人で、やはり医術に長けた者が幾人かおります。その者たちを語らって、将軍の傘下へと連れてきたいと存じますが、いかがでしょう?」


【 グンム 】

「ほう、それはありがたいな。ぜひお願いしよう」


【 ゼンキョク 】

「お聞き届けいただき、ありがとうございます。ついては、一筆したためていただくことはできますまいか?」


【 グンム 】

「一筆というと?」


【 ゼンキョク 】

「はい、『我に従うならば、これまでの罪を問うことはない』という赦免状です。それを見せれば、皆、安心して馳せ参じてくることでしょう」


【 グンム 】

「なるほど、な」


 チラリと脇のシュレイに目を向ける。


【 シュレイ 】

「…………」


 頷いてみせるシュレイ。


【 グンム 】

「よかろう、しばし待たれよ」


 筆と紙を取り出し、自ら一筆したためる。


【 グンム 】

「――これでかまわぬか?」


【 ゼンキョク 】

「は……確かに。かたじけなく存じます」


 文面を確かめ、うやうやしく受け取り、懐に収めるゼンキョク。


【 ゼンキョク 】

「されば、さっそくつといたしましょう」


【 グンム 】

「なに、今からか?」


 さすがに驚きの声をあげるグンム。


【 グンム 】

「そうかずとも、明日の朝でもかまうまい」


【 ゼンキョク 】

「かたじけなく存じますが、善は急げと申します。されば、これにて――」


 と、ゼンキョクは立ち上がる。


【 ホノカナ 】

アン老師せんせい、はじめからこのつもりで……!)


 どうやって脱出すれば……と内心気を揉んでいたホノカナが、ゼンキョクの策に感嘆していると、


【 セイレン 】

「えぇ~~っ、今からですかぁ? さすがに、一晩休んでいきましょうよぉ~~~~っ」


 などと、セイレンが駄々をこね始めた。


【 ホノカナ 】

(ちょっと、セイレンさんっ……!?)


【 ゼンキョク 】

「……私もそうしたいのは山々ですが、ここは寸暇すんかを惜しみ、一人でも多くの同志を集めるべきでしょう。これも国家のためです」

 *寸暇……少しの間、の意。


【 セイレン 】

「うぅ~ん……はぁ~、仕方ないですねぇ……あ~ぁ……」


 露骨にがっかりしながら、セイレンは幕舎を出ていった。


【 ゼンキョク 】

「……失礼いたしました。それでは、また後日……スイ将軍も、お取次ぎ、かたじけなく存じます」


【 ミナモ 】

「ええ、力になれてなによりですわ!」


【 ゼンキョク 】

「では――行きますよ」


【 ホノカナ 】

「…………っ」


 ゼンキョクにうながされ、ホノカナも一礼し、そそくさと幕舎を後にしたのだった……

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