◆◆◆◆ 9-23 処遇 ◆◆◆◆
【 河甫 】
「寝不足に加えて、いささか、胃腸が弱っているご様子……なにか、思い煩うことでもおありでしょうか」
【 シュレイ 】
「……それは……」
【 河甫 】
「ともあれ、しばらくは過度な飲酒は控え、心身を休められた方がよろしいでしょう」
【 シュレイ 】
「…………!」
【 河甫 】
「おや、間違っておりましたか?」
【 シュレイ 】
「……いや、その通り。お言葉に従うとしよう。触れるだけでそこまでわかるとは……見事なものだ」
【 河甫 】
「失礼いたしました」
しずしずと離れて、元の席につく医師。
【 グンム 】
「ほほう、楽老師がお墨付きを与えるなら、本物だろう」
【 グンム 】
「ぜひ、我らのため……いや、天下国家のためにその腕を振るっていただきたい、河甫老師」
【 河甫 】
「ははっ……」
と、一礼して。
【 河甫 】
「――ときに、ひとつ、嶺閣下にお尋ねしたいことがございます。構わぬでしょうか」
【 グンム 】
「と、いうと?」
【 河甫 】
「は……閣下は、国母さまの密旨を掲げ、新たな天子さまを立てるべく、今こうして進軍されているわけですが……」
【 河甫 】
「――今上の天子さまを、いかがなさるおつもりでしょう?」
【 グンム 】
「……なぜ、それを問う?」
【 河甫 】
「我が一族は、今でこそ零落しておりますが、帝室には多大な恩をこうむってまいりました」
*零落……落ちぶれるの意。
【 河甫 】
「まだお若い天子さまの身の上が、この先、いったいどうなってしまうのか……案じずにはおられません」
【 グンム 】
「ふむ……なるほどな」
【 グンム 】
「もとより、今上の陛下はお若いが聡明な御方だと心得ている。こたびの件も、元凶は周囲の者たちであろう。それゆえ……」
【 グンム 】
「手荒な真似をするつもりは毛頭ない。玉座からは退いていただくことになるがな」
【 グンム 】
「――しかし、陛下を誤らせた奸悪なる側近どもには、厳正な処分が下されることになろう」
【 河甫 】
「側近、というと……」
【 シュレイ 】
「――たとえば、かつては〈天下七剣〉のひとりと称された女官長〈雪・ミズキ〉……」
シュレイが話を引き継ぎ、指を折って数える。
【 シュレイ 】
「そして、かの凪将軍の子、〈凪・ランブ〉……」
【 グンム 】
「…………」
【 シュレイ 】
「――そして、天子の側をうろついてなにやら暗躍している、胡乱なる方士……これらの輩は、ことごとく罪に服することになりましょう」
*胡乱……怪しく、うさんくさいの意。
仮面の下のシュレイの目が、妖しく光る。
【 素朴そうな小娘 】
「――――っ」
その言葉を聞いた小娘が、ピクリと肩を震わせた……
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