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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
322/421

◆◆◆◆ 9-22 診察 ◆◆◆◆

【 ミナモ 】

「さあ、遠慮は無用ですわ! お入りになって!」


 ミナモにうながされて入ってきたのは、三人の女だった。


【 ミナモ 】

「こちらがレイ征南将軍ですわ! さぁ、ご挨拶なさって!」


【 かげのある女 】

「――お初にお目にかかります。河甫コウホ・ゼンシンと申します」


 正面に立って一礼したのは、両手を手袋で覆った、美貌の女。

 どこか暗い翳があるように見えるのは、気のせいであろうか。


【 奇妙な姿の女 】

「私は、名高き占い師のリクにございます! どうぞお見知りおきを!!」


 大仰な挨拶をしてみせたのは、曲がりくねった杖を手にした、奇妙な出で立ちの女である。

 そして、もうひとりは……


【 素朴そうな小娘 】

「…………」


 河甫コウホと名乗った女の背後に、荷物を背負った小娘が控えている。

 グンムが視線を向けると、はっと平伏した。


【 河甫コウホ 】

「これなるは私の助手にございます。貴人と対面する機会などないため、恐縮しておりますが、どうかお咎めなく」


【 グンム 】

「ふむ……?」


 チラリと見えた小娘の顔は、ごく素朴で野暮ったく、ふっくらとした顔立ち……


【 ミナモ 】

「なんでも、虫歯のせいで急に顔が腫れてきてしまったそうですわ! 年頃の娘御ですし、あまりジロジロ見ないであげてくださいませ!」


【 グンム 】

「……なるほど」


【 グンム 】

(どこかで、見かけたか……?)


 そうも思ったが、ただの気のせいだったかもしれない。


【 グンム 】

「そう堅くなることはない。私がレイ征南だ。こちらは私の相談役の、ガク老師せんせい


【 シュレイ 】

「…………」


 無言で会釈を返すシュレイ。


【 グンム 】

「ミナモ殿を賊の手から救ってくれたそうだな。まずは、礼を言わせてもらおう」


【 河甫コウホ 】

「いえ、人として当たり前のことをしただけです。我らがスイ将軍の窮地に巡り合ったのは、将軍の人徳というもの……お褒めにあずかるようなことではございません」


【 グンム 】

「さて、我が軍に加わりたい、とのことだが」


【 河甫コウホ 】

「は……閣下は世を正すため、人材を集めていると聞いております。微力ではございますが、いささかなりともお役に立てればと思い、こうして馳せ参じた次第でございます」


【 グンム 】

「ほう、ありがたい申し出だ。陣中にあっては、医師はいくらいても足りぬほどだからな」


【 グンム 】

「――そうだ、ガク老師せんせい、ひとつ診てもらってはどうかな? 具合がよくなかったようだし」


【 シュレイ 】

「は? いや、それは……」


 いきなり話を振られ、シュレイはややためらいを見せる。

 どこの馬の骨ともわからぬ輩に、触れられたくはないのかもしれない。


【 ミナモ 】

「それは名案ですわね! ええ、ぜひ診ていただくべきですとも! 河甫コウホ老師せんせいの腕前は、なかなか見事なものですわよ!」


【 シュレイ 】

「……っ、それでは……お願いすると、しましょう」


 ミナモの勧めもあり、断りがたくなったと見えて、あまり気が進まない様子ながらも頷くシュレイ。


【 河甫コウホ 】

「それでは――」


 医師はシュレイの元へ足を運ぶと、手袋を脱いだ。


【 河甫コウホ 】

「失礼、いたします」


 と、彼の手を取る。


【 シュレイ 】

「…………っ」


 その瞬間、なにやらシュレイはビクリと身を引きつらせた。


【 河甫コウホ 】

「ふむ……ふむ、ほほう、なるほど……」


 しばし探るようにシュレイの手に触れていた女だったが、ややあって手を離し、口を開いた。

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