◆◆◆◆ 9-20 紹介 ◆◆◆◆
【 グンム 】
「さて、そろそろ帝都も近づいてきたが……」
と、話題を変える。
【 グンム 】
「次の天子さまは、いつお迎えできるんだ? 帝都に着いたはいいが、肝心の神輿がなしとなっちゃ、どうにも締まらないだろ」
新たな天子候補、すなわち〈焔・トウマ〉。
現在、風雲忍侠こと〈虎王・ユイ〉が迎えに行っている。
【 シュレイ 】
「風雲忍侠殿によれば、すでにこちらに向かっているゆえ、近日中には……との由」
【 グンム 】
「ほう、そいつは結構だ。お膳立ては整ってきたな。……それはそうと、ひとつ心配事があるんだが」
【 シュレイ 】
「帝都を守る軍勢、ですか?」
【 グンム 】
「そんなのは、今から考えても仕方ないさ。合戦となれば、臨機応変にやるだけだからな」
【 グンム 】
「……気になるのは、国母さまの方だ」
【 シュレイ 】
「ふむ……現在は帝都を離れているとのことですが」
【 グンム 】
「こっちに味方してくれるならいいが、そうでないなら……」
【 シュレイ 】
「……そこは、後回しにしましょう。あの御方と対峙するのは、帝都攻略が片付いてからの方がよろしいかと」
【 グンム 】
「そういうものかね」
【 シュレイ 】
「ええ。……いくさのついでに相手にできるような御仁ではありません。ある意味、帝都を落とすよりも厄介でしょう」
【 グンム 】
「なるほどな……」
だんだん調子が出てきたようだ、とグンムは思った。
やはりこの男は、こうしたことを語る時がもっともイキイキとしている。
【 シュレイ 】
「――帝都といえば、朝廷から我が軍へ向けて使者が送られた、という話も入ってきております」
【 グンム 】
「ああ、問罪の使、というやつか?」
【 シュレイ 】
「表向きはそういうことになるでしょうが……こちらの腹を探るのが目的かと」
【 グンム 】
「なるほどな。……ちょっと前まではこっちが罪を問う側だったが、立場が逆になるとは、因果なもんだ」
そもそもグンムたちが南方へ遠征したのは、巡察使としての務めを果たさない翠・ヤクモの罪を問う……というのが建前だった。
それが回り回って、今度は彼らが朝廷から問罪される側となったわけである。
【 グンム 】
「その使者だが、会った方がいいのか?」
【 シュレイ 】
「さて……どうでしょう。いっそ一思いに片付けた方が、後腐れがなくてよいかもしれませんが」
【 グンム 】
「そいつは、相手の出方次第だな。偉そうに罪を糺してくるような態度だったら――」
と、二人が物騒な話をしていると、
【 ミナモ 】
「失礼しますわ! グンムさ……嶺将軍、今よろしいかしら? いいですわよね!」
許可もなく幕舎に飛び込んできたのは翠・ミナモ、ヤクモの娘にして弓の達人である。
【 グンム 】
「……っ、ミナモお嬢様か、元気そうでなにより。手傷などなかったか?」
【 ミナモ 】
「ええ、ご覧のとおり、傷一つありませんわ! それよりも……」
【 ミナモ 】
「ぜひ、将軍に引き合わせたい方々がいるのですわ! わたくしたちの命の恩人ですの! 将軍のお役に立つこと、疑いなしですわ!」
【 グンム 】
「恩人……?」
不思議そうな顔をするグンムたちに、ミナモは酒店での一件を手短に語る。
【 ミナモ 】
「――かくかくしかじか、というわけですわ。残念ながら、不埒なる賊どもには逃げられてしまいましたが……」
【 ミナモ 】
「とても腕の立つ医師殿ですの! ぜひお仲間に加えられることをお勧めしますわ!」
【 グンム 】
「なるほど、医者か……腕の立つ医者は何人いてもいい。ひとつ、連れてきてもらおう」
【 ミナモ 】
「もうとっくに連れてきていますわ! さぁ、お入りになって結構ですわよ!」
ミナモにうながされて、旅装の者、三人が幕舎へと入ってきた――
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