◆◆◆◆ 9-11 ミナモとホノカナ ◆◆◆◆
【 ホノカナ 】
(翠将軍の娘……!? そんな人が、どうしてこんなところにっ……!?)
ホノカナの困惑を気に留めることもなく、ミナモは話を続ける。
【 ミナモ 】
「ちなみにこちらは、方士の――ええと、雲蒸竜変殿、だったかしら?」
*雲蒸竜変……雲が湧き、竜が暴れるということから、英雄が活躍するの意。
【 若い男 】
「う、〈雲竜飛聖〉……ですよぉ……でも、碧・サノウと呼んでもらってもかまいませんので……うぇへへ……」
【 ホノカナ 】
「は、ははぁ……」
変わった人だな、とホノカナは思った。
もっとも、ここ最近、これくらいの変人にはずいぶんと会ってきたので、だいぶ慣れてきているのも事実だった。
【 ミナモ 】
「それで、あなたがたは――?」
【 ホノカナ 】
「あっ……え、えっと、わたしは、青龍・カスカナといいますっ」
と、かつても用いた偽名を名乗る。
このような場合に備えて、あらかじめ決めていたことであった。
【 ゼンキョク 】
「私は医師の河甫と申します。彼女は私の助手のようなものでして……そうそう、こちらは占い師の蓼老師」
と、ゼンキョクがいまだ夢の中のセイレンのぶんも名乗る。
【 ミナモ 】
「なるほど……それにしても、女三人で旅とは、この時勢にいささか不用心ではありませんこと? どんな危険に陥るか、わかったものではありませんわよ! 実際、こうして捕まっていることですし! よほどの事情があるのかしら?」
【 ホノカナ 】
「あ、ええっと、その――」
【 ゼンキョク 】
「――実は、嶺将軍が人材を集めていると聞いて、その軍に加わるべく馳せ参じようとしておりまして」
と、ゼンキョクが口を挟んでくる。
【 ゼンキョク 】
「神弓姫どのといえば、嶺将軍と同盟を結んだ翠巡察使のご令嬢――ぜひ、お力添えをお願いできましたら」
【 ミナモ 】
「ええ、よろしくってよ、お安い御用ですわ! いささか危ういところを助けていただいたのですから、当然ですとも!」
と、自己紹介も終わったところで。
【 ミナモ 】
「さぁ、さっそく反撃開始ですわよっ! ……くっ、しかし、まだ身体が重いですわねっ……」
痺れ薬の効果が残っているようだ。
【 ゼンキョク 】
「失礼――これで、いかがです?」
【 ミナモ 】
「熱ぅっ!? あっ、でも、気怠さが抜けていくようなっ……?」
ゼンキョクの手のひらで肌を触れられ、戸惑いつつも、
【 ミナモ 】
「これは――力がみなぎってきますわ! これも、医術ですのっ? 見事なものですわね……!」
と、人斬り包丁を軽々と振り回すミナモ。
【 ゼンキョク 】
「まあ、そんなところです。方士殿は――」
【 サノウ 】
「うぅ~ん……ぼ、ボクは……遠慮しておきます……そういう得体のしれない力は、ちょっとぉ……」
【 ミナモ 】
「ええい、四の五の小うるさいですわね! ごちゃごちゃ言わずに、おとなしく診ていただきなさいっ!」
【 ゼンキョク 】
「では――」
【 サノウ 】
「ちょっ、あっ、んおっ!? おお!? んおおおぉぉ~……!?」
ミナモに羽交い絞めにされ、ゼンキョクの手当てに悶絶するサノウであった――
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