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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
309/421

◆◆◆◆ 9-9 窮地 ◆◆◆◆

【 酒屋のおやじ 】

「ククク……しっかり痺れ薬が効いたみたいだな」


 三人の客が卓に伏せている姿を確かめ、店主はニヤリと笑う。


【 酒屋のおやじ 】

「今日は吉日だなっ。またしても、こんな上玉が引っかかってくれるとは……!」


 店主がチリンチリンと鈴を鳴らすと、潜んでいた人相の悪い連中が姿を現した。


【 酒屋のおやじ 】

「おい、こいつらも地下室に運んでおけ。言っとくが、傷物にするんじゃねえぞ? いい値で売れそうだからな……!」


【 手下たち 】

「へぇ――」


 下っ端たちは失神したホノカナたちを抱えて、そのまま連れ去っていく。

 そう、ここはただの居酒屋にあらず――

 地獄の一丁目、なのであった。




【 ホノカナ 】

「……ぅ、うぅん……?」


 ホノカナが目を覚ますと、


【 ホノカナ 】

「うっ……な、なにこれっ……」


 血生臭い匂いに、たちまち意識が鮮明となる。

 そこは薄暗くジメジメとした、地下室のようだった。


【 ゼンキョク 】

「お目覚めですか、副頭目」


【 ホノカナ 】

「! ゼンキョクさんっ……あ、あれっ? ううっ、身体がっ……」


 手足を縛られている。

 その上、気怠さに包まれており、頭がぼうっとしているうえ、ろくに動けない。


【 ホノカナ 】

「こ、これってっ……うぅ……?」


【 ゼンキョク 】

「ありていに言いますと、一服盛られたというわけです。先ほどの料理に、痺れ薬が混じっていたのでしょう」


 同じく縛り上げられていながらも、ゼンキョクはいつもの調子で、淡々としている。


【 ホノカナ 】

「……っ! そ、そんなっ……」


 ホノカナの脳裏に、かつて読んだ物語の一節が浮かぶ。

 主人公たちが痺れ薬を飲まされたあげく、あやうく料理されそうになってしまう……という場面。

 そう思ってよく見ると、壁には何かを吊るすための鉄枷がある……あれは、人を吊るすためのものでは?


【 ホノカナ 】

「わ、わたしたちっ、お饅頭まんじゅうにされちゃうんですかっ……!?」


【 ゼンキョク 】

「さぁ……それよりは、人買いに売り飛ばす方が効率的ではないでしょうか。若い娘ならなおさらです」


【 ホノカナ 】

「なんでそんなに落ち着いてられるんですかっ、アン老師せんせい……!?」


【 ゼンキョク 】

「焦っても仕方ありません、セイレン殿を見習っては?」


【 ホノカナ 】

「! そうだ、セイレンさんは――」


【 セイレン 】

「んごぉ……すやぁ……ぐおぉぉ……」


【 ホノカナ 】

「…………」


 安眠していた。


【 ホノカナ 】

「なんで、こんなに平然と寝ていられるんでしょうか……?」


【 ゼンキョク 】

「大した胆力といいますか、なんといいますか……さて、それよりも」


【 ゼンキョク 】

「なにやら、先客がいるようですよ」


【 ホノカナ 】

「…………っ?」


 ゼンキョクの視線の先に、別の人影がうごめいている。


【 女の声 】

「ぐぬぬっ……こんな不覚を取るとはっ……屈辱ですわ~~っ!」

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