◆◆◆◆ 9-9 窮地 ◆◆◆◆
【 酒屋のおやじ 】
「ククク……しっかり痺れ薬が効いたみたいだな」
三人の客が卓に伏せている姿を確かめ、店主はニヤリと笑う。
【 酒屋のおやじ 】
「今日は吉日だなっ。またしても、こんな上玉が引っかかってくれるとは……!」
店主がチリンチリンと鈴を鳴らすと、潜んでいた人相の悪い連中が姿を現した。
【 酒屋のおやじ 】
「おい、こいつらも地下室に運んでおけ。言っとくが、傷物にするんじゃねえぞ? いい値で売れそうだからな……!」
【 手下たち 】
「へぇ――」
下っ端たちは失神したホノカナたちを抱えて、そのまま連れ去っていく。
そう、ここはただの居酒屋にあらず――
地獄の一丁目、なのであった。
【 ホノカナ 】
「……ぅ、うぅん……?」
ホノカナが目を覚ますと、
【 ホノカナ 】
「うっ……な、なにこれっ……」
血生臭い匂いに、たちまち意識が鮮明となる。
そこは薄暗くジメジメとした、地下室のようだった。
【 ゼンキョク 】
「お目覚めですか、副頭目」
【 ホノカナ 】
「! ゼンキョクさんっ……あ、あれっ? ううっ、身体がっ……」
手足を縛られている。
その上、気怠さに包まれており、頭がぼうっとしているうえ、ろくに動けない。
【 ホノカナ 】
「こ、これってっ……うぅ……?」
【 ゼンキョク 】
「ありていに言いますと、一服盛られたというわけです。先ほどの料理に、痺れ薬が混じっていたのでしょう」
同じく縛り上げられていながらも、ゼンキョクはいつもの調子で、淡々としている。
【 ホノカナ 】
「……っ! そ、そんなっ……」
ホノカナの脳裏に、かつて読んだ物語の一節が浮かぶ。
主人公たちが痺れ薬を飲まされたあげく、あやうく料理されそうになってしまう……という場面。
そう思ってよく見ると、壁には何かを吊るすための鉄枷がある……あれは、人を吊るすためのものでは?
【 ホノカナ 】
「わ、わたしたちっ、お饅頭にされちゃうんですかっ……!?」
【 ゼンキョク 】
「さぁ……それよりは、人買いに売り飛ばす方が効率的ではないでしょうか。若い娘ならなおさらです」
【 ホノカナ 】
「なんでそんなに落ち着いてられるんですかっ、晏老師……!?」
【 ゼンキョク 】
「焦っても仕方ありません、セイレン殿を見習っては?」
【 ホノカナ 】
「! そうだ、セイレンさんは――」
【 セイレン 】
「んごぉ……すやぁ……ぐおぉぉ……」
【 ホノカナ 】
「…………」
安眠していた。
【 ホノカナ 】
「なんで、こんなに平然と寝ていられるんでしょうか……?」
【 ゼンキョク 】
「大した胆力といいますか、なんといいますか……さて、それよりも」
【 ゼンキョク 】
「なにやら、先客がいるようですよ」
【 ホノカナ 】
「…………っ?」
ゼンキョクの視線の先に、別の人影がうごめいている。
【 女の声 】
「ぐぬぬっ……こんな不覚を取るとはっ……屈辱ですわ~~っ!」
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