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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
307/421

◆◆◆◆ 9-7 苦衷 ◆◆◆◆

 蒼白となっていたアルカナだが、やがて、


【 アルカナ 】

「ユイ殿っ……支度が終わったら、すぐにでもここをちたいのですが、いいですよねっ?」


【 ユイ 】

「お前、もしかしなくても、ひとりで発つ気か?」


【 アルカナ 】

「もちろんですっ。姉上をお助けに行かねばなりませんので!」


 当たり前のように言うアルカナ。

 その目は血走っており、トウマを説いていたときのような沈着な様子はかけらもない。


【 ユイ 】

「お前の役目は、殿下をお守りすることだろ?」


【 アルカナ 】

「それは、そうですがっ……ユイ殿が護衛されるなら、安心ですっ! このままでは姉上が危険なのでしょうっ!? もう、いてもたってもいられませんっ!」


【 ユイ 】

「気持ちはわかるが、そう焦るな。姐さんにもいろいろ考えがあるだろうし……」


【 アルカナ 】

「ですがっっ……そんな悠長にしていたらっっ!!」


 ギリギリ……!


 ユイの肩に、アルカナの手が食い込む。


【 ユイ 】

「いててっ! 相変わらず見かけによらない馬鹿力だなっ……だいたい、仮にお前ひとりで宮廷に乗り込んだとして、あいつを連れ出せるのかっ?」


【 アルカナ 】

「……っ、そ、そこはっ……そのっ、なんとか……なんとかがんばりますっ!」


【 ユイ 】

「急に根性論を持ち出すなっ。お前は姉貴のことになると、いつもその調子だな……」


【 アルカナ 】

「だ、だってっ……姉上に、姉上に、もしものことがあったりしたらっ、ぼくは……ぼくはっ……!」


 ギシギシギシ……!


【 ユイ 】

「いででっ! だから掴むんじゃないっ……どのみち、俺もお前らを護衛して、レイ将軍のところまで連れて行ってから、みやこに行くつもりだっ」


【 ユイ 】

「いろいろ探ってくるから、それまで大人しく待ってろ、坊や!」


【 アルカナ 】

「……っ、う、ううっ……でもっ……」


【 ユイ 】

「お前、さっき殿下に講釈垂れてたよな? 時には立ち止まれ、って。姉貴の言葉に逆らうのかっ?」


【 アルカナ 】

「う……うううっ……」


【 アルカナ 】

「……わ、わかり、まし、た……」




【 ユイ 】

「……やれやれ」


 ようやく解放され、力任せに圧迫された肩を振って顔をしかめるユイ。


【 アルカナ 】

「姉上っ……どうか、ご無事で……」


 すっかりしょぼくれているアルカナの様子を見て、


【 ユイ 】

(こういうところだけは、歳相応だな)


 などと、思ったのもつかのま。


【 アルカナ 】

「……もし、姉上に傷一つでもつけたヤツがいたならっ……ボッコボコにブン殴ってっ、ギッタギタに絞り上げてっ、石と一緒に袋に詰めて白竜湖の底に沈めてやりますからっ……!」


【 ユイ 】

「…………」


 こいつならやりかねないな、とユイは思った……

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