表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
305/421

◆◆◆◆ 9-5 姉の教え ◆◆◆◆

 山小屋の一室で、三人は顔を突き合わせていた。


【 アルカナ 】

ラク宰相が、お亡くなりに……!?」


 ちゅう全土で商いをおこなっているショウ家は、各地に拠点を持っており、中には人里離れた隠れ家的な場所もある。

 トウマとアルカナが暮らしているのも、そのひとつであった。


【 ユイ 】

「ああ。おかげで、いささか当初の予定とは変わってきたが……まあ、大筋は同じだな」


【 アルカナ 】

ショウ大人たいじんは、なんと……?」


【 ユイ 】

「知らせは送ってるが、反応はない。まだ峰西ほうせいにいるみたいだが、あっちもいろいろ大変らしいからな」


【 ユイ 】

「だが、基本方針に変化はないさ。……現在の帝を廃し、殿下に新たなる天子として立っていただく、というわけだ」


【 トウマ 】

「……っ、うぅ……ぼくは、そんなの……」


【 ユイ 】

「気が進みませんか?」


【 トウマ 】

「だって……父上のようにっ……ぼくも……」


【 アルカナ 】

「…………」


 二年前。

 トウマの父・タクマは、野心を燃やして帝位を狙った末に、非業の最期を遂げた。

 その後、帝都を脱出したトウマは、ひそかにショウ家によってかくまわれ、保護されてきたのだ。

 それがただの慈善的な行為でないのは、言うまでもない。


【 ユイ 】

(いずれ、こういうときのために養っておこう……って腹だったんだろうな)


 皇族といってもいろいろだが、トウマは先帝の甥であり、声望せいぼうすこぶる高かったタクマの遺児であり、皇帝に据えるに申し分はない。

 *声望……世間からの評判、名声、人気の意。


【 ユイ 】

「もしも――」


【 ユイ 】

「もしも、殿下がどうしても嫌だと仰るなら、ここから逃がしてさしあげましょう」


【 トウマ 】

「…………っ」


【 アルカナ 】

「ユイ殿っ……!」


【 ユイ 】

「――ですが、俺にできるのは、そこまでです。多少の路銀くらいは工面できても、その後の殿下の人生に、責任を持つことはできません」


【 トウマ 】

「…………」


【 ユイ 】

「それでもなお、逃げ出したいというなら――」


【 アルカナ 】

「ユイ殿!」


 ユイの言葉を、アルカナが遮る。


【 アルカナ 】

「殿下は、まだお若い。……そんな過酷な選択を強いるのは、酷というものでしょう」


 彼も同じ年くらいのはずだが、アルカナが口にすると不自然さはない。


【 アルカナ 】

「それに……殿下も、とうにおわかりのはずです。他に道はなく、足踏みも許されぬ以上、前に進むしかない……ということが」


【 トウマ 】

「…………」


【 アルカナ 】

「かつて、私も大いに迷ったことがあります。その際、姉が言ってくれました。『困難にぶつかって前に進めないときは、立ち止まるのもいい。しかし、後に下がってはならない』――と。殿下、どうかお覚悟を」


【 トウマ 】

「…………っ」


【 ユイ 】

(あの小娘、そんな気の利いたこと言ってたっけな……?)


 と、内心で思いつつ、


【 ユイ 】

「アルカナの言う通りでしょう。……運命っていうのがあるとすれば、これまでの殿下の運命は、おせじにも結構なものとは言えませんが……」


【 ユイ 】

「しかし、これからうまくやれば、上等な運命だった――ということにもできるでしょう。それは、殿下次第です」


【 トウマ 】

「そう……だろうか……?」


【 ユイ 】

「ええ、もちろんですとも」


 と、力強く頷いてみせつつ、


【 ユイ 】

(……実際には、神輿みこしを担ぐ側の問題だが)


 とも、思う。

 グンムたちの事業が今後、吉と出るか凶と出るかは、まだまだ予断を許さないものがある。

 一歩間違えば、皇帝を僭称せんしょうした大逆無道の賊として、市場にその首をさらす羽目になるかもしれないのだ。

 *僭称……勝手な称号を名乗る、の意。


【 ユイ 】

(あの女帝も、そう簡単に白旗を挙げるガラじゃあなさそうだしな)


 どうあれ、もとよりトウマに選択の余地はない。

 それでもなお、ユイが力づくでどうこうしようとしないのは、彼を尊重すればこそのことである。


【 トウマ 】

「…………」


 トウマは、なおしばし、うつむいていたが……やがて、顔を上げた。

ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ