◆◆◆◆ 9-3 セイレン自薦 ◆◆◆◆
【 ヨスガ 】
「――護衛が必要だが、なるべく穏やかな外見の者がよかろうな」
【 ホノカナ 】
「えっ? あ、あの……」
【 ミズキ 】
「では、エキセン殿ならばいかがでしょう?」
【 ヨスガ 】
「ううむ、あやつか……威圧感はないが、交渉ごとは苦手ゆえな」
【 バイシ 】
「〈緋閃剣〉ならどうだい?」
【 ヨスガ 】
「むむ、護衛としては申し分ないが、使者としてはいささか……」
【 ランブ 】
「やはり、自分が――」
【 ホノカナ 】
「あ、あのぉ~……」
【 ???? 】
「――ちょっとちょっとっ! 聞き流さないでいただけますかっ!? せっかく! この私がっ! 名乗りを挙げたというのにぃいっ!」
【 ホノカナ 】
「えっと……放っておいていいんですか?」
【 ヨスガ 】
「放っておけ。今あやつにかかわると、ややこしいことになりそうだ」
【 ???? 】
「いやいやいや! これなる難局を乗り切るには! この〈幻聖魔君〉、〈藍・セイレン〉の力が! 不可欠というものでありましょうっ!」
【 ヨスガ 】
「――そう思うなら、まずは、地面から出てきたらどうだ?」
【 セイレン 】
「ふふふ……ごもっともです! ですが、その、土遁の術に失敗してしまってですね……どなたか、掘り出していただきたいのですが!」
*土遁……土を用いた幻術の意。
地面から首だけ出した状態で訴えるセイレン。
なるほど、ヨスガらが無視したくなるのも道理ではあった。
【 ホノカナ 】
「はぁ……いったい、なにをしてるんですかっ……んっしょっ……」
ザクザク……
【 セイレン 】
「おおっ、助かります、ホノカナ殿! 一生、いや、六生くらいはついていきますぞ!」
【 ヨスガ 】
「おいっ、〈赫龍輝剣〉を円匙がわりにするでないっ!」
……と、そんな話はさておいて。
【 セイレン 】
「――というわけで、この私が! ホノカナ殿と同行しようではありませんか! 困難な使者の役目、見事に果たして見せましょうっ! この前代未聞の超一流の大軍師たる、藍・セイレン! が!」
土まみれになりながら、胸を張るセイレン。
【 ヨスガ 】
「……まぁ、確かに、警戒されそうにはないな」
【 ミズキ 】
「ええ、どれほど殺気立った相手でも、きっと気が抜けることでしょう……逆に怒りを買って、血を見ることになるかもしれませんが」
【 セイレン 】
「物騒なことを言わないでもらえます!?」
【 ランブ 】
「困難な役目だが……本当に構わぬのか、セイレン殿?」
【 セイレン 】
「ええ、もちろんですともっ! どうか大船に乗ったつもりでっ! わはははは!」
【 ヨスガ 】
「……よもや、弟子から逃げたいだけではあるまいな?」
【 セイレン 】
「ギクッ!? い、いえっ、そんな、そんなことはっ、あ、ありませんとも!」
つい先ほどまで弟子に追い回されていただけに、説得力は皆無であった。
【 ヨスガ 】
「……まあ、よかろう。ホノカナ、いざとなったらこやつを身代わりにして逃げるがいい」
【 ホノカナ 】
「ええっ!? そ、そんなわけにはっ……」
【 セイレン 】
「わははははは! ご心配なく! この私が同行するからには! いざという時などはありえません! ので!」
【 ミズキ 】
「相変わらず、根拠のない自信だけは豊富ですね……」
【 ヨスガ 】
「しかしそなた、土地勘があるのか? 途中で迷ったりしては目も当てられぬが」
【 セイレン 】
「あぁ~……それは……まぁ、その……あまり……自信は……あるとは、言えませんけれども……」
【 ホノカナ 】
「いつになく歯切れがなくて自信なさそう!?」
【 ???? 】
「では――私が案内役を務めましょう」
と、暗がりから静かな声と共に現れたのは、
【 ホノカナ 】
「晏老師……!」
【 ゼンキョク 】
「以前は、各地をさすらっていたこともあります。お力になれるかと」
人呼んで〈救神双手〉、医師である〈晏・ゼンキョク〉であった。
【 ヨスガ 】
「ふむ……確かに、そなたなら交渉もうまくやれそうだ。よし、任せたぞ、ゼンキョク」
【 ゼンキョク 】
「は――」
【 ヨスガ 】
「グンムの腹、しかと確かめてくるがいい、ホノカナ」
【 ホノカナ 】
「はいっ……」
【 ヨスガ 】
「拾い食いをして腹を下すなよ、セイレン」
【 セイレン 】
「ははっ……って! そこはもっとこう、叱咤激励してくれるところじゃないんですかぁあっ!?」
ともあれ、こうして――
みやこから、グンムの軍へと早馬が放たれたのである。
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