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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
303/421

◆◆◆◆ 9-3 セイレン自薦 ◆◆◆◆

【 ヨスガ 】

「――護衛が必要だが、なるべく穏やかな外見の者がよかろうな」


【 ホノカナ 】

「えっ? あ、あの……」


【 ミズキ 】

「では、エキセン殿ならばいかがでしょう?」


【 ヨスガ 】

「ううむ、あやつか……威圧感はないが、交渉ごとは苦手ゆえな」


【 バイシ 】

「〈緋閃剣ひせんけん〉ならどうだい?」


【 ヨスガ 】

「むむ、護衛としては申し分ないが、使者としてはいささか……」


【 ランブ 】

「やはり、自分が――」


【 ホノカナ 】

「あ、あのぉ~……」


【 ???? 】

「――ちょっとちょっとっ! 聞き流さないでいただけますかっ!? せっかく! この私がっ! 名乗りを挙げたというのにぃいっ!」


【 ホノカナ 】

「えっと……放っておいていいんですか?」


【 ヨスガ 】

「放っておけ。今あやつにかかわると、ややこしいことになりそうだ」


【 ???? 】

「いやいやいや! これなる難局を乗り切るには! この〈幻聖魔君げんせいまくん〉、〈アイ・セイレン〉の力が! 不可欠というものでありましょうっ!」


【 ヨスガ 】

「――そう思うなら、まずは、地面から出てきたらどうだ?」


【 セイレン 】

「ふふふ……ごもっともです! ですが、その、土遁どとんの術に失敗してしまってですね……どなたか、掘り出していただきたいのですが!」

 *土遁……土を用いた幻術の意。


 地面から首だけ出した状態で訴えるセイレン。

 なるほど、ヨスガらが無視したくなるのも道理ではあった。


【 ホノカナ 】

「はぁ……いったい、なにをしてるんですかっ……んっしょっ……」


 ザクザク……


【 セイレン 】

「おおっ、助かります、ホノカナ殿! 一生、いや、六生くらいはついていきますぞ!」


【 ヨスガ 】

「おいっ、〈赫龍輝剣かくりゅうきけん〉を円匙シャベルがわりにするでないっ!」


 ……と、そんな話はさておいて。


【 セイレン 】

「――というわけで、この私が! ホノカナ殿と同行しようではありませんか! 困難な使者の役目、見事に果たして見せましょうっ! この前代未聞の超一流の大軍師たる、アイ・セイレン! が!」


 土まみれになりながら、胸を張るセイレン。


【 ヨスガ 】

「……まぁ、確かに、警戒されそうにはないな」


【 ミズキ 】

「ええ、どれほど殺気立った相手でも、きっと気が抜けることでしょう……逆に怒りを買って、血を見ることになるかもしれませんが」


【 セイレン 】

「物騒なことを言わないでもらえます!?」


【 ランブ 】

「困難な役目だが……本当に構わぬのか、セイレン殿?」


【 セイレン 】

「ええ、もちろんですともっ! どうか大船に乗ったつもりでっ! わはははは!」


【 ヨスガ 】

「……よもや、弟子から逃げたいだけではあるまいな?」


【 セイレン 】

「ギクッ!? い、いえっ、そんな、そんなことはっ、あ、ありませんとも!」


 つい先ほどまで弟子に追い回されていただけに、説得力は皆無であった。


【 ヨスガ 】

「……まあ、よかろう。ホノカナ、いざとなったらこやつを身代わりにして逃げるがいい」


【 ホノカナ 】

「ええっ!? そ、そんなわけにはっ……」


【 セイレン 】

「わははははは! ご心配なく! この私が同行するからには! いざという時などはありえません! ので!」


【 ミズキ 】

「相変わらず、根拠のない自信だけは豊富ですね……」


【 ヨスガ 】

「しかしそなた、土地勘があるのか? 途中で迷ったりしては目も当てられぬが」


【 セイレン 】

「あぁ~……それは……まぁ、その……あまり……自信は……あるとは、言えませんけれども……」


【 ホノカナ 】

「いつになく歯切れがなくて自信なさそう!?」


【 ???? 】

「では――私が案内役を務めましょう」


 と、暗がりから静かな声と共に現れたのは、


【 ホノカナ 】

アン老師せんせい……!」


【 ゼンキョク 】

「以前は、各地をさすらっていたこともあります。お力になれるかと」


 人呼んで〈救神双手きゅうしんそうしゅ〉、医師である〈アン・ゼンキョク〉であった。


【 ヨスガ 】

「ふむ……確かに、そなたなら交渉もうまくやれそうだ。よし、任せたぞ、ゼンキョク」


【 ゼンキョク 】

「は――」


【 ヨスガ 】

「グンムの腹、しかと確かめてくるがいい、ホノカナ」


【 ホノカナ 】

「はいっ……」


【 ヨスガ 】

「拾い食いをして腹を下すなよ、セイレン」


【 セイレン 】

「ははっ……って! そこはもっとこう、叱咤激励してくれるところじゃないんですかぁあっ!?」




 ともあれ、こうして――

 みやこから、グンムの軍へと早馬が放たれたのである。

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