◆◆◆◆ 9-1 御前会議 ◆◆◆◆
■第九幕:
叛乱軍は地を揺らし帝都に迫り、紅の皇帝は絶体絶命となること、ならびに数多の血涙が流れて地を濡らすこと
――ここで物語は、大宙暦3133年(帝ヨスガ2年)、孟秋の月(7月)、14日の夜に戻る。
すなわち、嶺将軍、謀叛す――の一報をヨスガたちが聞いてから、間もなくの話である。
真夜中の宮廷の一室に、深刻な顔の面々が集っていた。
【 ヨスガ 】
「まだか? 姥姥たちは」
そう問うたのは、宙帝国の第207代皇帝、〈焔・ヨスガ〉。
【 ミズキ 】
「使いは出してありますので、そろそろお出でになるかと」
答えたのは、〈紅雪華〉こと女官長ミズキ。
【 ヨスガ 】
「そうか。……」
【 ランブ 】
「嶺将軍が謀叛……にわかには信じられません。流言飛語の類ということは……?」
〈双豪斧〉こと〈凪・ランブ〉が呻くように言う。
【 ヨスガ 】
「まだわからぬ。が、我影也の報告だ、根も葉もないこととは思えぬな」
【 ランブ 】
「しかし……あの御方は、そのような大それた決断をするような方では……」
【 ヨスガ 】
「ふむ。確かに、野心が横溢している……という雰囲気ではなかったな」
*横溢……溢れるほど盛んな様子の意。
南方への出陣前、グンムとランブらが酒楼で会談した際、ヨスガもひそかにその様子をうかがっていた。
【 ヨスガ 】
「――だが、本人にその気がなくとも、周囲に担がれてやむなく、ということもありうる」
【 ヨスガ 】
「さしあたり今は、続報を待つしかあるまい」
【 ランブ 】
「はっ……」
と、そこへ、気ぜわしそうな足音が迫ってきた。
【 ミズキ 】
「――お出でになったようです」
足早に、一団が入ってきた。
【 ホノカナ 】
「あ、あのっ! 本当なんですか!? 謀叛って! 二十万って! 嶺将軍がって!?」
飛び込んでくるなり大声でまくし立てるのは、〈人侠烈聖〉こと〈鱗・ホノカナ〉。
【 ヨスガ 】
「ええい、少しは落ち着け! この愚妹めっ!」
【 ホノカナ 】
「で、でもっ、落ち着いてる場合じゃあ――」
【 バイシ 】
「やれやれ。副頭目にはまだまだ貫禄が足りないようだねえ」
続いて入ってきたのは〈白銀夜叉〉こと〈霙・バイシ〉。
ヨスガの別動隊というべき宝玲山の元・副頭目である。
【 ヨスガ 】
「副頭目……いや、元・副頭目……ええい、ややこしいな、霙の姉妹、話は聞いたな?」
【 バイシ 】
「ああ。他の連中はあらかた酔い潰れちまってるから、置いてきたがね。さて、一難去ってまた一難、いや、百難くらいってところかね。あっはははっ!」
【 ホノカナ 】
「わ、笑いごとじゃありませんよ、姥姥っ……!」
【 バイシ 】
「なに、しかめっ面してたって、妙案が出るわけじゃないさ」
【 バイシ 】
「もっと言えば、こんなせまっ苦しいところに籠ってちゃあ、息がつまるってもんだ。庭に出ようじゃないか」
【 ヨスガ 】
「ふむ……それもそうだ」
【 ホノカナ 】
「ええ……? 場所を変えてどうにかなる話なんですか……!?」
【 ヨスガ 】
「どうにもならんが、気分は変わる。さっさと来いっ!」
【 ホノカナ 】
「は、はいいぃ……!」
【 ミズキ 】
「……あの調子で、やっていけるでしょうか、副頭目を」
【 バイシ 】
「なぁに、あれより下になるってこたぁないさ、あっはははっ!」
と、バイシは大笑いする。
その豪胆ぶりに、ミズキもランブも息を呑む他はなかった。
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