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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
301/421

◆◆◆◆ 9-1 御前会議 ◆◆◆◆

■第九幕:

叛乱はんらん軍は地を揺らし帝都に迫り、紅の皇帝は絶体絶命となること、ならびに数多の血涙けつるいが流れて地を濡らすこと




 ――ここで物語は、大宙暦3133年(帝ヨスガ2年)、孟秋の月(7月)、14日の夜に戻る。

 すなわち、レイ将軍、謀叛むほんす――の一報をヨスガたちが聞いてから、間もなくの話である。




 真夜中の宮廷の一室に、深刻な顔の面々が集っていた。


【 ヨスガ 】

「まだか? 姥姥ばばさまたちは」


 そう問うたのは、ちゅう帝国の第207代皇帝、〈エン・ヨスガ〉。


【 ミズキ 】

「使いは出してありますので、そろそろお出でになるかと」


 答えたのは、〈紅雪華こうせっか〉こと女官長ミズキ。


【 ヨスガ 】

「そうか。……」


【 ランブ 】

レイ将軍が謀叛……にわかには信じられません。流言飛語りゅうげんひごの類ということは……?」


 〈双豪斧そうごうふ〉こと〈ナギ・ランブ〉が呻くように言う。


【 ヨスガ 】

「まだわからぬ。が、我影也しのびのものの報告だ、根も葉もないこととは思えぬな」


【 ランブ 】

「しかし……あの御方は、そのような大それた決断をするような方では……」


【 ヨスガ 】

「ふむ。確かに、野心が横溢おういつしている……という雰囲気ではなかったな」

 *横溢……溢れるほど盛んな様子の意。


 南方への出陣前、グンムとランブらが酒楼で会談した際、ヨスガもひそかにその様子をうかがっていた。


【 ヨスガ 】

「――だが、本人にその気がなくとも、周囲に担がれてやむなく、ということもありうる」


【 ヨスガ 】

「さしあたり今は、続報を待つしかあるまい」


【 ランブ 】

「はっ……」


 と、そこへ、気ぜわしそうな足音が迫ってきた。


【 ミズキ 】

「――お出でになったようです」


 足早に、一団が入ってきた。


【 ホノカナ 】

「あ、あのっ! 本当なんですか!? 謀叛って! 二十万って! レイ将軍がって!?」


 飛び込んでくるなり大声でまくし立てるのは、〈人侠烈聖じんきょうれっせい〉こと〈リン・ホノカナ〉。


【 ヨスガ 】

「ええい、少しは落ち着け! この愚妹めっ!」


【 ホノカナ 】

「で、でもっ、落ち着いてる場合じゃあ――」


【 バイシ 】

「やれやれ。副頭目にはまだまだ貫禄が足りないようだねえ」


 続いて入ってきたのは〈白銀夜叉しろがねやしゃ〉こと〈エイ・バイシ〉。

 ヨスガの別動隊というべき宝玲山ほうれいざんの元・副頭目である。


【 ヨスガ 】

「副頭目……いや、元・副頭目……ええい、ややこしいな、エイ姉妹きょうだい、話は聞いたな?」


【 バイシ 】

「ああ。他の連中はあらかた酔い潰れちまってるから、置いてきたがね。さて、一難去ってまた一難、いや、百難くらいってところかね。あっはははっ!」


【 ホノカナ 】

「わ、笑いごとじゃありませんよ、姥姥ばばさまっ……!」


【 バイシ 】

「なに、しかめっ面してたって、妙案が出るわけじゃないさ」


【 バイシ 】

「もっと言えば、こんなせまっ苦しいところに籠ってちゃあ、息がつまるってもんだ。庭に出ようじゃないか」


【 ヨスガ 】

「ふむ……それもそうだ」


【 ホノカナ 】

「ええ……? 場所を変えてどうにかなる話なんですか……!?」


【 ヨスガ 】

「どうにもならんが、気分は変わる。さっさと来いっ!」


【 ホノカナ 】

「は、はいいぃ……!」


【 ミズキ 】

「……あの調子で、やっていけるでしょうか、副頭目を」


【 バイシ 】

「なぁに、あれより下になるってこたぁないさ、あっはははっ!」


 と、バイシは大笑いする。

 その豪胆ぶりに、ミズキもランブも息を呑む他はなかった。

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