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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
286/421

◆◆◆◆ 8-55 神算朧師 ◆◆◆◆

【 ミンガイ? 】

『――我が志、忘れてはいなかったようだな』


 黒い影は、剣を鞘へと戻した。


【 レツドウ 】

「はっ、ははっ……!」


【 ミンガイ? 】

『それだけの大風呂敷を広げるならば、すでに、国外にも手を打っているのだろうな?』


【 レツドウ 】

「はっ……深牙しんがとも渡りをつけ、銀劔関ぎんけんかんに兵を集めさせておりますっ……」


【 ミンガイ? 】

『ほう……ことが起きれば南下させ、己の力とする――というわけか。さすがよな』


【 ミンガイ? 】

『だが、敵国の兵を借りるのは、諸刃の剣というものではないか?』


【 レツドウ 】

「は……しかし、あくまで一時的なこと。利用するだけ利用した上で、いずれは始末する所存なれば……」


【 ミンガイ? 】

『異国の軍を相手に、そううまくいくものか?』


【 レツドウ 】

「は、たやすいことではありませんが、三貴さんき教徒との繋がりを駆使いたしますればっ……」


【 ミンガイ? 】

『……ふん、そういうことか』


【 ミンガイ? 】

『油断ならぬ輩よ。人の心を救うなどと言いながら、領土争いに加担するとは、つくづく度し難い――』


【 レツドウ 】

「…………っ?」


【 ミンガイ? 】

『さて――問答はこれくらいにしておこう。それなりに有意義でしたよ、宰相閣下』


【 レツドウ 】

「! き――貴様はっ……!?」


 ここでようやく、レツドウは我に返った。


【 ミンガイ? 】

『貴方にも、使い道があるかと思ったが……やはり、危険すぎるようだ。ここで、ご退場願いましょう』


【 レツドウ 】

「き、貴様っ……何者だ……!?」


【 ミンガイ? 】

『名乗るほどの者では、ありませんが――』


 まとっていた黒い影が、徐々に薄れていく。

 そこに現れたのは――


【 仮面の男 】

「人呼んで〈神算朧師しんざんぼうし〉――」


【 仮面の男 】

「――姓はガク、名はシュレイと申す者にて」




【 レツドウ 】

ガクなにがし……だとっ? だが、貴様は――」


 つい先だって、東方において森羅しんらの軍に敗れ、生死も定かではなかったはず――


【 シュレイ 】

「むろん、すべては偽りにございます」


 さらりと答える。


【 レツドウ 】

「……! もしや、グンムの差し金か……!?」


【 シュレイ 】

「さぁ、どうでしょう。……私は、無駄話は好きではありませんので、これ以上の問答は無用というもの」


【 シュレイ 】

「さて、閣下――お覚悟を」


【 レツドウ 】

「……っ! ま、待てっ……なぜ、私を討つ!?」


【 シュレイ 】

「やれやれ、あれこれ説明する趣味はないのですが……」


【 シュレイ 】

「あえていうなら、天下のため、というところでしょうか」


【 レツドウ 】

「ふ、ふざけるなっ! 私以外に、誰がこの乱れた天下をまとめ上げられると思っているっ……!」


【 シュレイ 】

「いささか自信過剰のご様子ですが……天下に人物はいくらもおりますので、どうか、ご心配なく」


【 レツドウ 】

「ぐっ、ぬぅっ……それが、グンムだとでも言うのかっ……!?」


【 シュレイ 】

「すべては、これより先の話……閣下がお気になさることではありませんよ」


 シュレイが白刃を抜き、レツドウに突きつける。


【 レツドウ 】

「くっ……ううっ……!」


 レツドウは血走った目でシュレイを睨みつけ、そして――

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