◆◆◆◆ 8-55 神算朧師 ◆◆◆◆
【 ミンガイ? 】
『――我が志、忘れてはいなかったようだな』
黒い影は、剣を鞘へと戻した。
【 レツドウ 】
「はっ、ははっ……!」
【 ミンガイ? 】
『それだけの大風呂敷を広げるならば、すでに、国外にも手を打っているのだろうな?』
【 レツドウ 】
「はっ……深牙とも渡りをつけ、銀劔関に兵を集めさせておりますっ……」
【 ミンガイ? 】
『ほう……ことが起きれば南下させ、己の力とする――というわけか。さすがよな』
【 ミンガイ? 】
『だが、敵国の兵を借りるのは、諸刃の剣というものではないか?』
【 レツドウ 】
「は……しかし、あくまで一時的なこと。利用するだけ利用した上で、いずれは始末する所存なれば……」
【 ミンガイ? 】
『異国の軍を相手に、そううまくいくものか?』
【 レツドウ 】
「は、たやすいことではありませんが、三貴教徒との繋がりを駆使いたしますればっ……」
【 ミンガイ? 】
『……ふん、そういうことか』
【 ミンガイ? 】
『油断ならぬ輩よ。人の心を救うなどと言いながら、領土争いに加担するとは、つくづく度し難い――』
【 レツドウ 】
「…………っ?」
【 ミンガイ? 】
『さて――問答はこれくらいにしておこう。それなりに有意義でしたよ、宰相閣下』
【 レツドウ 】
「! き――貴様はっ……!?」
ここでようやく、レツドウは我に返った。
【 ミンガイ? 】
『貴方にも、使い道があるかと思ったが……やはり、危険すぎるようだ。ここで、ご退場願いましょう』
【 レツドウ 】
「き、貴様っ……何者だ……!?」
【 ミンガイ? 】
『名乗るほどの者では、ありませんが――』
まとっていた黒い影が、徐々に薄れていく。
そこに現れたのは――
【 仮面の男 】
「人呼んで〈神算朧師〉――」
【 仮面の男 】
「――姓は楽、名はシュレイと申す者にて」
【 レツドウ 】
「楽なにがし……だとっ? だが、貴様は――」
つい先だって、東方において森羅の軍に敗れ、生死も定かではなかったはず――
【 シュレイ 】
「むろん、すべては偽りにございます」
さらりと答える。
【 レツドウ 】
「……! もしや、グンムの差し金か……!?」
【 シュレイ 】
「さぁ、どうでしょう。……私は、無駄話は好きではありませんので、これ以上の問答は無用というもの」
【 シュレイ 】
「さて、閣下――お覚悟を」
【 レツドウ 】
「……っ! ま、待てっ……なぜ、私を討つ!?」
【 シュレイ 】
「やれやれ、あれこれ説明する趣味はないのですが……」
【 シュレイ 】
「あえていうなら、天下のため、というところでしょうか」
【 レツドウ 】
「ふ、ふざけるなっ! 私以外に、誰がこの乱れた天下をまとめ上げられると思っているっ……!」
【 シュレイ 】
「いささか自信過剰のご様子ですが……天下に人物はいくらもおりますので、どうか、ご心配なく」
【 レツドウ 】
「ぐっ、ぬぅっ……それが、グンムだとでも言うのかっ……!?」
【 シュレイ 】
「すべては、これより先の話……閣下がお気になさることではありませんよ」
シュレイが白刃を抜き、レツドウに突きつける。
【 レツドウ 】
「くっ……ううっ……!」
レツドウは血走った目でシュレイを睨みつけ、そして――
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