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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
276/421

◆◆◆◆ 8-45 一矢 ◆◆◆◆

 明朝――

 濃い霧のなか、スイ・ヤクモの兵たちが河岸を巡回している。


【 南軍の隊長 】

「異状はないか?」


【 南軍の兵士 】

「はっ……!」


【 南軍の隊長 】

「怪しい者がいれば、即、斬ってもかまわん! 先日は、巡回中に突然襲われた者もいたゆえな……」


 これは、虎王コオウ・ユイに不意打ちされ、縛り上げられた哀れな兵たちの話である。


【 南軍の兵士 】

「ははっ……!」


 と、兵たちがより一層、気を引き締める中……


【 南軍の兵士 】

「む――あれは?」


 一艘いっそうの舟が、岸に向かって近づいている。


【 南軍の兵士 】

「あれはっ……敵かっ!」


【 南軍の隊長 】

「いや、待てっ……あの旗はっ?」


 舟が掲げている白虎びゃっこの旗は、軍使ぐんしを示すものであった。

 *軍使……軍隊を往来する使者の意。


 乗っているは軽装の男女と、漕ぎ手の従者のみ。

 兵たちが警戒する中、小舟は岸に到着した。


【 南軍の隊長 】

「何者だ……!」


 武器を構えた兵士たちが、舟を取り囲む。


【 男 】

「おやおや、そういきり立つことはなかろう? こっちは、たった三人だ」


 数多の刃を向けられていることも気にせず、男が降りてきた。


【 女 】

「フン……大勢で取り囲まなきゃ、安心できないってワケ? こっちの軍は小心者ぞろいだな!」


 続いて、若い女が降り立ち、毒を吐く。


【 南軍の兵士 】

「おのれッ……!」


【 男 】

「まぁまぁ、落ち着けよ。このとおり、俺たちは使者だ」


 と、従者の掲げる白虎の旗を示す。


【 男 】

スイ将軍に、お取次ぎ願おう――」


【 男 】

「――ちゅうの征南将軍、レイ・グンムが、将軍と旧交を温めにきた、とな」


【 南軍の兵たち 】

「…………っ!?」


 兵たちに、驚愕が広がった――




【 タシギ 】

「…………っ」


 自分たちを取り囲む兵たちを睨みながら、タシギはさすがに落ち着かない様子だった。


【 グンム 】

「そう殺気立つな。いきなり襲ってきたりはせんさ」


【 タシギ 】

「フン、どうだかっ……」


【 グンム 】

「もしもの時は、貴公だけ逃げても構わんぞ」


【 タシギ 】

「フン……言われなくたって、そうさせてもらうよ」


【 グンム 】

(さて……)


 すでに、何人かの兵が注進に向かったようだが……まだ油断はできない。

 殺気の満ちたこの状況では、ちょっとしたことで、いきなり血の雨が降ることもありうるのだ。


【 グンム 】

(やっかいなことになる前に、スイ将軍と対面したいところだが……)


 と、思っていた矢先。


【 タシギ 】

「――ちいッ!」


 ――ドカッ!


【 グンム 】

「うおッ!?」


 突然、タシギがグンムを突き飛ばす。

 その直後、


【 タシギ 】

「――クソがッ!」


 バキィッ!


 飛来してきた矢を、タシギが切り払っていた――

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