◆◆◆◆ 8-43 鋼骨 ◆◆◆◆
【 グンム 】
「――と、いう次第だ。しばし留守にするゆえ、後のことは任せる」
嶺・グンムは、己の幕舎に配下の将を集めると、敵陣への使者となることを伝えた。
一同は驚きつつも、将軍の判断ならば……と理解を示したが、中にはそうでない者もいる。
【 グンロウ 】
「どうか、俺も同行させてくだされ、兄者っ!!」
そう訴えるのは〈嶺・グンロウ〉、グンムの異母弟にして、官軍きっての豪傑である。
【 グンム 】
「もう決めたことだ。貴公には留守を任せるゆえ、ダンテツ卿の命に従え」
【 グンロウ 】
「し、しかしッ……!」
なおもグンムに食って掛かろうとするグンロウであったが、
【 ???? 】
「――落ち着け、孺子」
【 グンロウ 】
「ぐっ……!?」
腕を掴まれ、思わず呻き声をこぼす。
官軍きっての巨体の持ち主であるグンロウを抑えたのは、壮年の武人である。
【 屈強な男 】
「嶺将軍が決められたことだ。あたふたするな。見苦しいぞ」
【 グンロウ 】
「ダンテツ卿っ、しかし……!」
【 ダンテツ 】
「落ち着けと言っている――」
ミシミシ……!
【 グンロウ 】
「ぐううっ……!?」
【 グンム 】
「ダンテツ卿、それくらいにしておけ」
【 ダンテツ 】
「は……」
グンロウから離れて一礼したこの男は、グンムの部将のひとり〈汐・ダンテツ〉。
派手さはないが堅実な用兵と、いかなる物事にも動じない肝っ玉から〈鋼骨陣〉の異名で知られていた。
グンムの信頼も厚く、この遠征軍にあっては、実質的な副将というべき立場にある。
【 グンロウ 】
「…………っ、申し訳ありません、ついっ、醜態を……」
【 グンム 】
「うむ、我が身を案じてくれるのはありがたいが……これも国家のためだ」
【 グンム 】
「なに、心配はいらぬ、頼もしい護衛もいることだしな」
【 グンロウ 】
「…………っ」
【 ダンテツ 】
「とはいえ、敵陣に嶺将軍がみずから乗り込むなどというのは、いささか大胆にすぎるとも思えますが……そこまでする必要が?」
【 グンム 】
「そういうことだ。これも天下国家のためである。……護衛の任、頼むぞ、〈血風翼将〉」
【 タシギ 】
「はあ……まあ、ご命令とあれば。……ふン、なんでアタシが……」
不承不承という様子で頷くのは〈銀・タシギ〉、やはりグンム軍の将である。
もっとも、いわば預かりの立場であり、グンム直属というわけではない。
【 グンロウ 】
「くっ……なぜこのような女狐などにっ……!」
【 タシギ 】
「あア? やるってのかい、このデカブツが……!」
【 グンム 】
「よせよせ。……タシギ卿を選んだのは、適材適所というものだ。女連れの方が、相手の警戒も緩むであろう?」
【 グンロウ 】
「む、むむむ……そうかもしれませんが……」
【 タシギ 】
「…………」
タシギはなにか言いたげであったが、口をつぐんでいる。
その様子にチラリと目を向けて、
【 グンム 】
「――話は終わりだ。ダンテツ卿、後のことは任せる。万事、うまくやってくれ」
【 ダンテツ 】
「は……」
言葉少なに頷いてみせるダンテツ。
【 グンム 】
「任せる。それでは皆、持ち場に戻れ」
【 一同 】
「はっ――」
各将は一礼し、それぞれの陣へと戻っていく。
【 グンム 】
「おっと……タシギ卿は残ってくれ。まだ話がある」
【 タシギ 】
「…………」
タシギは無言で、グンムの言葉に従った――
ブックマーク、ご感想、ご評価いただけると嬉しいです!




