◆◆◆◆ 8-35 智者に三策あり ◆◆◆◆
【 シュレイ 】
「宰相の計画としては、主上を廃し、新たな帝を立てる……ということのようですが」
【 グンム 】
「ふぅむ、皇族なんていくらでもいるが……皇叔殿下の忘れ形見、とはな」
先の〈皇叔の変〉において斃れたヨスガの伯父・タクマ。
その嫡子、トウマを立てるつもりなのだという。
【 シュレイ 】
「皇叔殿下は非業の最期を遂げたとはいえ、人望はありました。その子を立てるというのは、悪い手ではありますまい」
【 グンム 】
「しかし、謀叛人の子だろう? よく処断されなかったものだな」
【 シュレイ 】
「そこは、あまり大っぴらにしたくなかったこともあるのでしょう。皇叔派の者も、ほとんど処罰されなかったようですし」
【 グンム 】
「今度は、立場が逆になるわけか。嫌だねえ、そうやって子供を利用するのは」
【 シュレイ 】
「衣食住の苦労はせぬ代わりに、政争の道具扱いにされる……これも、高貴な家に生まれたさだめ、というものでしょう」
【 グンム 】
「…………」
やけに突き放したようなシュレイの物言いに、
【 グンム 】
(どうも、他人事ではなさそうな物言いだな)
シュレイの過去について、詳しく聞いたことはないが、
【 グンム 】
(ま、いろいろあったんだろうさ)
ここでは追及せず、話を続ける。
【 グンム 】
「俺は主上にこれといって不満はないが、かくべつの恩もない。すげ替えたいというなら、止める気はないが……」
【 グンム 】
「……しかし、そううまくいくものかね。そもそも、翠将軍は和睦を呑むと思うか?」
【 シュレイ 】
「さて……そう易々と話に乗るとも思えませんが、無益ないくさを避けられるならば、悪い話ではない――と判断するでしょうな」
【 グンム 】
「ふむ……まあ、仮にそこがうまくいったとして、廃立の方は?」
【 シュレイ 】
「本当に国母さまと宰相が結託しているなら、これはもう、赤子の手を捻るようなものでしょう。しかし……」
【 グンム 】
「……そうでないなら、なかなか面倒なことになるだろうな」
【 シュレイ 】
「とはいえ、その密旨が本物かどうかは、この際、さして問題ではありますまい。……いや、問題でないわけではありませんが、今の時点では些末なことでしょう」
【 グンム 】
「確かにな。どのみち、みやこを遠く離れたこの地で、真偽を確かめるなんて不可能ってもんだ」
【 シュレイ 】
「では……どうなさるおつもりで?」
【 グンム 】
「ま、俺にも考えはあるが……まずは老師の案を聞こうじゃないか。いつものアレを頼む」
【 シュレイ 】
「アレ……とは?」
【 グンム 】
「上策、中策、下策っていうのがあるだろ。どれか一つを選べ、とかいうのが好きじゃないか、軍師っていう人種は」
【 シュレイ 】
「別に、いつも言っているわけではありませんが……」
苦笑しつつも、シュレイは指を折りつつ、策を説き始めた――
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