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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
266/421

◆◆◆◆ 8-35 智者に三策あり ◆◆◆◆

【 シュレイ 】

「宰相の計画としては、主上おかみを廃し、新たな帝を立てる……ということのようですが」


【 グンム 】

「ふぅむ、皇族なんていくらでもいるが……皇叔殿下の忘れ形見、とはな」


 先の〈皇叔の変〉において斃れたヨスガの伯父・タクマ。

 その嫡子、トウマを立てるつもりなのだという。


【 シュレイ 】

「皇叔殿下は非業の最期を遂げたとはいえ、人望はありました。その子を立てるというのは、悪い手ではありますまい」


【 グンム 】

「しかし、謀叛人の子だろう? よく処断されなかったものだな」


【 シュレイ 】

「そこは、あまり大っぴらにしたくなかったこともあるのでしょう。皇叔派の者も、ほとんど処罰されなかったようですし」


【 グンム 】

「今度は、立場が逆になるわけか。嫌だねえ、そうやって子供を利用するのは」


【 シュレイ 】

「衣食住の苦労はせぬ代わりに、政争の道具扱いにされる……これも、高貴な家に生まれたさだめ、というものでしょう」


【 グンム 】

「…………」


 やけに突き放したようなシュレイの物言いに、


【 グンム 】

(どうも、他人事ではなさそうな物言いだな)


 シュレイの過去について、詳しく聞いたことはないが、


【 グンム 】

(ま、いろいろあったんだろうさ)


 ここでは追及せず、話を続ける。


【 グンム 】

「俺は主上にこれといって不満はないが、かくべつの恩もない。すげ替えたいというなら、止める気はないが……」


【 グンム 】

「……しかし、そううまくいくものかね。そもそも、スイ将軍は和睦を呑むと思うか?」


【 シュレイ 】

「さて……そう易々と話に乗るとも思えませんが、無益ないくさを避けられるならば、悪い話ではない――と判断するでしょうな」


【 グンム 】

「ふむ……まあ、仮にそこがうまくいったとして、廃立の方は?」


【 シュレイ 】

「本当に国母さまと宰相が結託しているなら、これはもう、赤子の手を捻るようなものでしょう。しかし……」


【 グンム 】

「……そうでないなら、なかなか面倒なことになるだろうな」


【 シュレイ 】

「とはいえ、その密旨が本物かどうかは、この際、さして問題ではありますまい。……いや、問題でないわけではありませんが、今の時点では些末なことでしょう」


【 グンム 】

「確かにな。どのみち、みやこを遠く離れたこの地で、真偽を確かめるなんて不可能ってもんだ」


【 シュレイ 】

「では……どうなさるおつもりで?」


【 グンム 】

「ま、俺にも考えはあるが……まずは老師の案を聞こうじゃないか。いつものアレを頼む」


【 シュレイ 】

「アレ……とは?」


【 グンム 】

「上策、中策、下策っていうのがあるだろ。どれか一つを選べ、とかいうのが好きじゃないか、軍師っていう人種は」


【 シュレイ 】

「別に、いつも言っているわけではありませんが……」


 苦笑しつつも、シュレイは指を折りつつ、策を説き始めた――

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