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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
264/421

◆◆◆◆ 8-33 天地に誓う ◆◆◆◆

【 カイリン 】

「ソナタにハ、とても世話になッタが……アタシにハ、なにも報いることができヌ」


【 ユイ 】

「それは別にいいって言ってるだろう?」


【 カイリン 】

「ソナタはよくても、アタシの気がすまヌ……!」


【 ユイ 】

「お、おお……それで?」


【 カイリン 】

「あいにく、今のアタシにハ、馬も財もナイ……あるのは、この身ただひとつ。それゆえ――」


【 ユイ 】

「――――っ? おい、ちょっと待てっ……」


 嫌な予感を覚えて、遮ろうとするユイ。

 しかし、カイリンは言葉を止めず――


【 カイリン 】

「――アタシを、ソナタの姉妹しまい分にしてもらいたイ!」


【 ユイ 】

「…………っ」


 カイリンの言にユイは面食らい、かつまた安堵した。

 面食らったのは、もとより姉妹分にしてくれという頼みに対してである。

 そして安堵したのは、


【 ユイ 】

(妙なことを言い出すのかと思って、ヒヤヒヤしたな……)


 自分の身体を捧げたい――などと言い出されたら、どう断ろうかと悩むところだった。

 なるほどユイはカイリンに好感は抱いているが、それは男女の契りにつながるようなそれではない。


【 カイリン 】

「ム……ダメか? 姉妹分でハなく、むしろ――」


【 ユイ 】

「あ――い、いや、かまわんさ」


 妙なことを言い出される前に、肯定する。


【 ユイ 】

「ゾダイ殿風に言うなら、これも『袖振り合うも他生タショウの縁』というやつだ。喜んで、誓おうじゃないか」

 *他生……前世や来世などの意。


【 カイリン 】

「うム……!」




 かくして。

 ふたりは天地神明に誓い――かつてヨスガとホノカナが誓ったかのごとく――契りを交わした。

 ユイの方が年長であったので(もっとも、正確な歳は定かではないのだが)、ユイが兄貴分となり、カイリンが妹分となった。


【 カイリン 】

「よろしく頼ム、兄者人あにじゃびと!」

 *兄者人……兄を敬って呼ぶ言い方。


【 ユイ 】

「ああ――」


 なんだかくすぐったいような心持ちであった。


【 ユイ 】

「そうだな、せっかくだから、これからは虎王コオウと名乗った方がいいんじゃないか?」


【 ユイ 】

「岳南を離れるなら、飛鷹ひようの民であることは隠した方がいいだろうしな」


【 カイリン 】

「ムム……そういうものカ?」


【 ユイ 】

「まあ、余計な悶着は避けられるだろうよ」


 飛鷹ひようの民は勇敢なる戦士として知られるが、とかくちゅう帝国には反抗的であり、ことに官憲からは目の敵にされている。


【 ユイ 】

「他の土地を旅するのなら、宙人ちゅうひとに成りすました方が無難だろうな」


【 カイリン 】

「心得タ――ならバ、アタシはこれかラ〈虎王コオウ・カイリン〉だナ!」




 そして……


【 ユイ 】

「じゃあ、達者でな」


 いくばくかの路銀を手渡し、カイリンを見送る。


【 カイリン 】

「うム――また会おウ、兄者人!」


【 ユイ 】

「ああ。短気を起こして面倒事を起こすんじゃないぞ?」


【 カイリン 】

「わ、わかっていル……! ――では、さらば!」


 かくして、虎王コオウ・カイリンは見知らぬ空の下へと旅立っていったのである。


【 ユイ 】

「…………」


 しばし彼女の姿を見送った後、ユイはその場を離れた。


【 ユイ 】

(……妙なことになったもんだ)


 タイシンから貰った姓を、今度は自分が贈ることになろうとは。

 これも定めというやつかもしれない、と思いつつ、ユイは足を速めた。

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