◆◆◆◆ 8-27 幻影 ◆◆◆◆
【 カイリン 】
「今こソ……父の、仇をッ……!」
【 ユイ 】
「……さて……」
【 ヤクモ 】
「…………」
それぞれの得物を手に、距離を取り合う三者。
【 ゾダイ 】
「…………っ」
やや離れて、この様子を見守る尼僧ゾダイ。
【 ヤクモ 】
「二対一ならば勝負になる――と、思うか?」
【 ユイ 】
「当方、いささか腕に覚えはありますが……そこまで思い上がってはおりません」
【 ヤクモ 】
「ならば、侠の心に準じ、ここで斃れるもやむなし、と?」
【 ユイ 】
「いいえ――」
ユイが手を振ると同時に、地面からゆらりと人影が浮かび上がる。
【 ヤクモ 】
「む……」
【 ユイ 】
「二対一では、お話になりますまいが……」
【 ユイ 】
「――五対一なら、勝負にはなるかと」
【 カイリン 】
「ッ!? こ、これハ──」
他の誰よりも、カイリンが驚愕していた。
突如、ユイと瓜二つの姿が三方に出現し、ヤクモを取り囲んだのである。
【 ゾダイ 】
「侠士殿が、四人……!?」
【 カイリン 】
「伏兵……いや、そうカッ、いつぞやの、分身ッ!」
【 ヤクモ 】
「ほう……話に聞く、忍びの術とやらか? 方術の類とも、違うようだが」
【 背後のユイ 】
「左様、つまらぬ芸ではありますが――さしづめ、〈影四陣〉とでも申しましょうか」
【 ヤクモ 】
「驚いたな。ただの目くらましかと思ったが――」
と、油断なく視線を四方に巡らせる。
【 ヤクモ 】
「――他の三人からも、同等の殺気を感じる。いったい、どういう仕掛けだ?」
【 右側のユイ 】
「それは――」
【 左側のユイ 】
「――ご自身で、味わっていただきましょう」
【 ヤクモ 】
「…………ッ!」
――シュタッ!
前後左右から、四人のユイが一斉にヤクモに殺到する。
【 カイリン 】
「速イッ……!?」
カイリンが反応する間もなく、一瞬にして距離を詰め、ヤクモの間合いに飛び込むユイたち。
だが老将軍は、その迅速な動きに反応していた。
【 ヤクモ 】
「――ぬんッ!」
正面に向かって、目にも止まらぬ斬撃を繰り出す。
――ドシュッ!
【 正面のユイ 】
「ぐはっ……!」
鮮血を噴き散らしながら、一人目のユイが地に倒れる。
そのまま、返す刀で――
【 ヤクモ 】
「ふッ!」
――ザシュウッ!
【 右のユイ 】
「ぐぁっ……!」
上下に両断された二人目が、真っ赤な血煙をあげて転がる。
その間に――
【 左のユイ 】
「――――ッ」
【 背後のユイ 】
「――――ッ!」
残ったふたりが、ヤクモに密着するほど距離を詰めていた。
【 ヤクモ 】
「ぬうッ!」
――パキィッ!
【 左のユイ 】
「ぎゃッ……!?」
振り向きざまに放った裏拳で、三人目の顔面を粉砕する。
そして――
【 背後のユイ 】
「――貰ったッ!」
【 ヤクモ 】
「…………ッ!」
もはや回避しようのない至近の刃が、ヤクモの身に迫る――
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