◆◆◆◆ 8-24 脱出 ◆◆◆◆
【 ゾダイ 】
「大人……!」
【 ヤクモ 】
「フム――」
ゾダイの切迫した声に、ヤクモは静かに頷いてみせ……
――フォン。
横薙ぎに、剣を振った。
ごく無造作な、まるで素振りのような一閃……
と、見る間に。
――ブシャアッ!!
【 周囲の兵士 】
「ぎゃあああッ!?」
【 周囲の兵士 】
「ぐえええッ!?」
群がり寄ってきた兵たちが、鮮血をほとばしらせ、断末魔の絶叫とともに次々と地面に転がっていった。
【 周囲の兵士たち 】
「な――」
一瞬の早業に、絶句して足踏みする他の兵たち。
【 ヤクモ 】
「弓矢はあれば便利だが、なければ、手元にあるもので戦う……当然のことだ」
顔色ひとつ変えず、淡々と口にする。
【 ヤクモ 】
「これが天下の禁軍(近衛兵)か? ずいぶんと鈍ったものよな。昔は、もう少し骨があったぞ」
【 周囲の兵士たち 】
「……っ、う、ううっ……」
【 周囲の兵士たち 】
「こ、これが、南寇王っ……!」
ヤクモの凄まじい剣技を見せつけられ、息を呑む兵たち。
いや、敵のみならず。
【 カイリン 】
「…………っ」
カイリンもまた、仇と狙うヤクモの実力の一端を見せつけられ、絶句していた。
そんな彼女をチラリと見て、敵兵に向き直るヤクモ。
【 ヤクモ 】
「どうした、弱兵ども。この首が欲しくば、本気でかかってくるがいい――」
刀を持ち変えて、悠然と兵たちを見渡す。
【 ヤクモ 】
(これで意気阻喪してくれれば、儲けものではあるが……)
*阻喪……気力が挫けるの意。
しかし、なんといっても敵は多勢である。
浮き足立ちながらも、
【 周囲の兵士たち 】
「の、狼煙をあげろっ……援兵を呼べ!」
【 周囲の兵士たち 】
「そうだ、それまで時間を稼げば……!」
数を恃みに、引き下がる様子もない。
こうなってくると、足止めされてしまうのは是非もなかった。
【 ヤクモ 】
「仕方ない……強引に突破するか?」
【 カイリン 】
「いや……待テ! アタシに手があル……!」
と、カイリンは懐からなにやら取り出すと、
【 カイリン 】
「――ぬンッ……!」
そのまま、地面に叩きつけた。
――ボワァッ!!
【 ヤクモ 】
「――――ッ」
朦朦たる煙が巻き起こり、たちまち視界が奪われる。
【 周囲の兵士 】
「くそっ、煙幕かっ!?」
【 周囲の兵士 】
「逃がすなっ! あの皺首を取れば、一生遊んで暮らせる褒賞だぞっ……!」
兵たちの叫び声が響き渡る。
【 カイリン 】
「――こっちダッ!」
【 ヤクモ 】
「御坊――」
【 ゾダイ 】
「…………っ」
ヤクモはゾダイの手を取ると、そのままカイリンの声を追い、駆け出した――
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