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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
253/421

◆◆◆◆ 8-22 白昼の刺客 ◆◆◆◆

【 カイリン 】

「――くたばレ、老いぼれッ!」


 抜き身の剣を手にヤクモへ襲いかかってきたのは、彼を父の仇とつけ狙う飛鷹ひようの女戦士、三ツ羽のカイリンに他ならない。


【 ゾダイ 】

「――っ、大人たいじんっ……!」


【 ヤクモ 】

「ご心配なく――巻き添えにならぬよう、御坊は離れておられよ」


 ゾダイをかばうようにして、前に出る。


【 カイリン 】

「そう、関係ナイ者は引っ込んでいロッ!」


【 ヤクモ 】

「…………っ!」


 ――ガキィンッ!


【 カイリン 】

「ちいッ……!」


 剣を抜き払い、カイリンの一撃を受け止めるヤクモ。

 レツドウとの会談の際は、天幕に入る前に預けてあっただけで、手ぶらで来たわけではない。


【 周囲の兵士 】

「やっ……喧嘩かっ?」


【 周囲の兵士 】

「いや、父の仇、とか言っていたぞ?」


 白昼堂々、斬り合いが始まったので、周りの者たちが一斉にざわめいた。


【 周囲の兵士 】

「巻き込まれるなよっ……こんなところで死んだら、とんだ死に損だからな……!」


 通行人――といってもそのほとんどは仮小屋に客として訪れた官軍の兵たちだが――は、止めることもなく、遠巻きに見物するばかりだ。


【 ヤクモ 】

「――なぜ、私がここにいるとわかった?」


 鍔迫つばぜり合いしつつ、カイリンに問いただす。


【 カイリン 】

「教える必要などッ……!」


 そう吐き捨て、いったん距離を取ると、ふたたび白刃を閃かせ、ヤクモに斬りつけてくる。


【 ヤクモ 】

(――協力者がいるな)


 カイリンの斬撃を受け流しながら、ヤクモはそう確信する。

 今回のレツドウとの会談は極秘であり、ごく内々の者にしか伝えていない。

 にもかかわらず、カイリンがここで待ち伏せすることができた、ということは……


【 ヤクモ 】

(どこからか、情報が漏れたに違いないが……)


 己の身内からとは、想像しづらい。

 で、あれば。


【 ヤクモ 】

(謀られた――ということか?)


 レツドウ側による、意図的な情報漏洩リーク……

 それしか、考えられなかった。

 だがそれでも、疑問は残る。


【 ヤクモ 】

(なぜ、この娘に協力する必要がある?)


【 ヤクモ 】

(自分を討った後、傀儡かいらいとでもする気か? そううまくいくとは思えぬが)


 宰相レツドウ、もとより油断ならぬ男ではある。

 が、先ほどの会談においては、怪しいそぶりはまるでなかった。


【 ヤクモ 】

(あれすらも、芝居ということか?)


 ともあれ、今は、悠長に考えている場合ではなさそうだ。

 頭巾をかぶって顔を隠しているが、長引けば、周囲に正体を悟られる恐れがある。

 まだ日の高い時間であるが、兵士たちは決して少なくない。


【 ヤクモ 】

「またしても正面から挑んで来るとはな……もっと計画を練ってこい、と伝えたはずだが?」


【 カイリン 】

「抜かセッ……!」


 怒声とともに斬りつけてくるカイリン。

 その動きは、とうに見切っており――


【 ヤクモ 】

「――む」


 ――キィンッ!


【 カイリン 】

「ちいッ……!」


 突然、懐から暗器あんきを投げつけてきたのを、跳ね返す。


【 ヤクモ 】

「つまらぬ小細工だ。そんなものが、通用するとでも?」


【 カイリン 】

「黙レッ……はぁッ!」


【 ヤクモ 】

「――――ッ」


 ――ヒュンッ! ヒュゥンッ!


 これまでにない変則的な太刀筋が、ヤクモを襲う。


【 ヤクモ 】

(これは――)


 その剣技に変化を見出し、ヤクモは確信を抱く。

 先ほどの暗器も含めて、カイリンは明らかに、何者かの影響を受けている。

 もとより付け焼き刃に過ぎず、脅威となりうるものではないが……


【 ヤクモ 】

(誰かに手ほどきを受けたか……ならば、これは陽動か?)


 こうしてカイリンと斬り結んでいる間にも、協力者の刃が迫っている――と、見なくてはなるまい。


【 ヤクモ 】

(だとすれば)


 悠長に相手をしていれば、相手の思うつぼである。


【 ヤクモ 】

(手早く、片をつけねばならぬな)


 と、ヤクモが呼吸を整え出した矢先、


【 周囲の兵士 】

「おい、あの男っ……見覚えがないか?」


【 周囲の兵士 】

「はぁ? いや、まさかっ……?」


 早くも、周囲の見物客が、ヤクモの正体に気づきつつあった――

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