◆◆◆◆ 8-15 天命に託す ◆◆◆◆
【 ユイ 】
(――それにしても)
ゾダイと別れ、南軍の陣を離れたユイは、ひとり思案に耽っていた。
【 ユイ 】
(どうも、妙なことになっちまったもんだな)
ゾダイを経由して受けた返答には、ヤクモが直々に出馬し、レツドウとの会談に臨む――と、あった。
それも、ほぼ単独での密会である。
【 ユイ 】
(こいつは、格好の機会ではあるが……)
【 ユイ 】
(まるで、暗殺してくださいと言わんばかりじゃないか……?)
ヤクモの豪胆さに、舌を巻かずにはいられない。
たとえなにかしらの企みがあったとしても、乗り越えられるだけの揺るぎない自信があるのだろう。
ともあれ、これ以上ない好機なのは確かだ。
しかし……
【 ユイ 】
(……やれるか? 今の俺に)
かつてのユイは、組織の一員として、子供の頃は子供なりのやり方で刺客を務め、成長してからはより多くの血生臭い任務を果たしたものだった。
【 ユイ 】
(だが、これは違う……)
同じ殺しではあっても、仇討ちだ。
子が親を殺めた相手を討つのだから、なんら天に恥じるところはない。
【 ユイ 】
(そう……れっきとした仇討ちの、助太刀なんだからな)
その方法も問う必要はない――いやもちろん、正々堂々と名乗りを上げて勝負を挑むのが最適ではあるが――こと仇討ちにおいては、筋道さえ通っていれば、手段は問われないものである。
【 ユイ 】
(そう、どんな手段であろうとも……)
騙し討ちであろうがなんであろうが、仇討ちの正統性の前では意味をなさない。
助太刀の力を借りるのも、これまた非難されることではなかった。
なりゆきとはいえ、カイリンの仇討ちを手助けすると約束した以上、この絶好の機を見逃すわけにはいかない。
【 ユイ 】
(……ままよ。天命がどちらに味方するか、だ)
ユイは腹をくくって、カイリンが潜んでいる山中へと足を向けた……
【 ユイ 】
「――と、いうわけだ」
【 カイリン 】
「おお……それはまさに、またとない機会ダ!」
隠れ家にやってきたユイから詳細を告げられ、カイリンは喜色を露わにした。
【 ユイ 】
「恐らく、あちらは単騎か、供をひとり連れてくるくらいだろう。邪魔が入る可能性は低い」
【 カイリン 】
「ならバ――堂々と討つべシ! 何も知らずにノコノコ来たところを、待ち伏せしテ……!」
【 ユイ 】
「まあ待て。俺にも都合がある。やるなら、話し合いが終わってからだ」
【 カイリン 】
「むう、しかし……」
【 ユイ 】
「嫌だって言うなら、俺はこれ以上手伝えないな。あんただけでなんとかしてくれ」
【 カイリン 】
「ムム……それは困ル! ……正直、アタシだけでは、あの老いぼれには勝てヌッ……」
【 ユイ 】
(そこはちゃんとわかってるんだな)
【 ユイ 】
「それに、用事が片付いた後の帰り際なら、あちらも少しは気が緩むだろう? ――そこを、狙うって寸法だ」
【 カイリン 】
「おお、なんと狡猾な……! ソナタ、手慣れているナ!」
【 ユイ 】
「……まあ、昔取った杵柄というやつさ」
*昔取った杵柄……過去に身に着けた技術の意。
殺し屋時代の経験を活かすことになろうとは……と、苦笑せざるを得ない。
【 ユイ 】
「さて、それじゃ、もう少し細かい作戦を立てるとするか」
【 カイリン 】
「うむ、頼むゾ、朽縄ドノ!」
【 ユイ 】
「……少しは自分でも考えてくれないか?」
ぼやきつつも、ユイはカイリンを相手に、計画を詰めていった――
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