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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
234/421

◆◆◆◆ 8-3 第三の依頼 ◆◆◆◆

【 タイシン 】

「――南に行ってきてくれないか、ユイ」


 ある一夜、タイシンが切り出した。


【 ユイ 】

「南っていやぁ――つまり、レイ将軍のところですか」


【 タイシン 】

「そうだ。今ごろ、岳南がくなんへ向けて遠征中のね」


【 ユイ 】

あねさんは?」


【 タイシン 】

「私は、ちと野暮用があってね。いろいろと仕込みも必要だし……さしあたっては、レッカ様を口説かねばならん」


【 ユイ 】

「レッカ様……ああ、峰西ほうせいの〈愛憫公主あいびんこうしゅ〉ですか」


【 タイシン 】

「彼女が抑えている〈天壌倉てんじょうそう〉……あそこに眠る糧秣を用いねば、とうてい十万の遠征軍を食わせることはできぬのでね」


【 ユイ 】

「しかし、お一人で大丈夫なんですか?」


【 タイシン 】

「まあ、護衛くらいはつけるさ。風雲忍侠ほど頼もしい者はそうはいないが」


【 ユイ 】

「あいつでいいんじゃないですか、リンの娘っ子の、弟の――」


【 タイシン 】

「ああ、アルカナのことかい? ふむ、確かに若いわりにしっかりしているが……彼には大事な役目があるのでね」


【 ユイ 】

「お偉い方のお相手なんざ、それこそ誰だって構わないんじゃありませんか」


【 タイシン 】

「そうはいかないよ。同い年くらいで、それでいて万事に気が利くなんて人材は、そうはいない」


【 ユイ 】

「ずいぶん買ってるみたいですねえ。……もしかして、弟の方が本命で、姉貴はおまけだったんですか?」


【 タイシン 】

「そんなことはないさ。ホノカナには、ホノカナにしかできない役目というものがある。私たち皆がそうであるようにね」


【 ユイ 】

「ははぁ……」


【 ユイ 】

「それで、俺は南へ行って、なにをすりゃあいいんです?」


【 タイシン 】

「ふむ、ひとつには、レイ将軍に助太刀してあげてくれ。彼も人手は欲しかろう。とりわけ、忍びの者はね」


【 ユイ 】

「なるほど。……他には?」


【 タイシン 】

「ある人物と同行して、敵陣まで送り届けてくれ」


【 ユイ 】

「さらりと大変なことを言ってくれますね……!」


 護衛だけならまだしも、敵陣――この場合はスイ・ヤクモの陣営まで送り込むとなったら、これは大変な難事である。


【 タイシン 】

「なに、侠士どのならたやすいことさ。あちらも只者ではないしね。そうたいした役目ではないよ、こちらも」


【 ユイ 】

「……その調子だと、本題はまだ別にありそうですな」


【 タイシン 】

「はは、話が早い。一番の役目は――」


【 タイシン 】

「――ラク宰相のはかりごとに、協力してもらいたい」


【 ユイ 】

「…………!」




【 ユイ 】

(……まあ、やりますがね)


 一度引き受けたからには、なにがあってもやり通す……それがユイの信条であった。


【 レツドウ 】

「して、首尾は?」


【 ユイ 】

「は……こちらに」


 と、懐から密書を差し出す。

 受け取ったレツドウは一読し、頷いてみせる。


【 レツドウ 】

「そなたも読むがよい」


【 ユイ 】

「……よろしいので?」


【 レツドウ 】

「かまわぬ。そなたはタイシンの名代であろう?」


【 ユイ 】

「されば……」


 と、受け取った書状には、

『申し出をお受けする。時と場所は、追って知らせる』

 という一文のみ。


【 ユイ 】

「申し出、とは……?」


【 レツドウ 】

「先方へ、会談を申し込んだのだ。書のやりとりだけで片付く話でもないゆえな」


【 ユイ 】

「それは、また……」


【 レツドウ 】

「私みずから、出向かねばなるまい」


【 ユイ 】

「……っ、さすがに、それは――」


【 レツドウ 】

「虎穴に入らずんば何とやら――だ。そなた、供をしてくれような?」


【 ユイ 】

「――心得ました」


 ユイは、深々と一礼した。


【 ユイ 】

(……さすがに、ひとかどの男ではあるらしいな)

 *ひとかど……すぐれていることの意。


 その肝の太さに感心しつつも、しかし、やはりあまり好きにはなれそうにない、と思うユイなのだった。

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