◆◆◆◆ 2-13 ふたつの道 ◆◆◆◆
【 ヨスガ 】
「そなたにはふたつの道がある」
と、指を二本重ねながら。
【 ホノカナ 】
「と、申しますと……?」
【 ヨスガ 】
「ひとつは、宮城を出て、別の役目を果たすことだ。市中に潜伏し、情勢を探って報告する。これはこれで大事な任務ではある」
【 ホノカナ 】
「な、なるほど……では、もうひとつは?」
【 ヨスガ 】
「うむ……」
ヨスガは、ふと口ごもり、
【 ヨスガ 】
「ホノカナ。そなた、歳はいくつであったか?」
【 ホノカナ 】
「はい? ええっと、今年で十七になります」
【 ヨスガ 】
「本当か? 記憶違いではないのか? 実は十二か十三であろう」
【 ホノカナ 】
「ええっ? いえ、そんなことは……」
【 ヨスガ 】
「いや十二だ。せいぜい十三がいいところだな」
【 ホノカナ 】
「いえ、それだと弟よりも年下になってしまうんですが……」
ヨスガの意図がわからず、ちんぷんかんぷんなホノカナ。
【 ヨスガ 】
「ええい、四の五の言うでない! 我は皇帝ぞ! その我が言っているのだから、そなたは十三である! よいな!」
【 ホノカナ 】
「は、ははぁ……」
謎の剣幕に押され、しぶしぶながらもうなずくほかはない。
【 ヨスガ 】
「よしよし。されば、我は十四であるから、年上である。つまり我は、そなたの姉ということだな!」
【 ホノカナ 】
「はぁ……?」
ますますもって、わけがわからない。
【 ヨスガ 】
「そなた、〈結拝〉をしたことはあるか?」
【 ホノカナ 】
「えっ? えっと――ありませんが……」
【 ヨスガ 】
「さればよし。――セイレン!」
そう一声かけると、
【 セイレン 】
「はいはい! お待ちしておりました、陛下――」
どこに身を潜めていたのか、そそくさと方士セイレンが姿を現した。
【 ヨスガ 】
「そなた、〈誓約〉の術は使えような?」
【 セイレン 】
「もちろんでございます。それくらいは、あの十二佳仙どもですら使いこなせる、児戯同然の術ですゆえ!」
【 ホノカナ 】
「えっと、あの……?」
話がどこに向かっているのかさっぱりわからず、目を白黒させているホノカナ。
【 ミズキ 】
「つまり、ヨスガさまはあなたと〈結拝〉しようとしているのです」
【 ホノカナ 】
「――ふぇっ!?」
突然背後からミズキに声をかけられ、すっとんきょうな声を漏らしてしまう。
ミズキの手には、盃が載ったお盆があった。
【 ホノカナ 】
「そ、それってつまり――」
【 ヨスガ 】
「そうだ。我はそなたの姉となり、そなたは我の妹となる」
すなわち、〈義姉妹〉になるということに他ならない。
【 ホノカナ 】
「で、でも、それって――」
とても、とても大変なことなのでは?
【 ヨスガ 】
「そうだな。義姉妹の契りを交わしたら、その誓いは一生――姉は妹を慈しみ、妹は姉を慕い、姉に身命をなげうって尽くし、姉のために生涯を捧げねばならぬ」
【 ホノカナ 】
「妹の負担すごく大きくないですか……!?」
【 ヨスガ 】
「……とはいえ、人の心はうつろうものゆえ、絶対ではない。しかし、そこに方術を加えれば……」
【 セイレン 】
「お任せあれ! 我が術をもってすれば、妹は姉に絶対服従、その不利益になるような行動はできなくなり、必ずやその身を捧げ尽くすことになりましょう!」
【 ホノカナ 】
「えええ……!?」
【 ヨスガ 】
「ククククク……妹は姉に尽くすものよ……!」
【 ホノカナ 】
「~~~~っ!?」
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