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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
228/421

◆◆◆◆ 7-24 隠匿 ◆◆◆◆

 賑わう宴会の場から、さらに離れて……


【 催命翔鬼 】

「フン……騒がしい連中だよ」


 樹上に登り、手酌で盃を舐めているのは、自称・死神たる催命翔鬼さいめいしょうきである。


【 催命翔鬼 】

「短い人生、なにがそんなに楽しいんだか……」


 酒を浴びるように飲み、佳肴かこうをむさぼり、つかの間の生の喜びに浸る人々を見下ろしながら、そんな独り言をこぼしている。

 *佳肴……美味い料理、酒のさかなの意。


【 催命翔鬼 】

砕嶺山さいれいざんの野郎、いい格好しやがってっ……人間にでもなったつもりかよ?」


 などと、ぶつくさ言っているところへ。


【 ???? 】

「――フフフ、一人酒とはわびしいですねえ、カンナ殿!」


【 催命翔鬼 】

「あア? ……なんだ、あんたかよ。くたばったんじゃなかったのかい、大軍師殿」


【 ???? 】

「フッ……残念ながら、我が才はいまだ天に容れられぬようです。ああ憎い、我が神算鬼謀が憎いっ……!」


 枝に掴まりつつ身をくねらせているのは誰あろう、〈幻聖魔君げんせいまくん〉ことアイ・セイレンである。

 先ごろまで、なんやかんやあって1/7くらいに縮んでいたが、今は元通りの寸法となっていた。


【 催命翔鬼 】

「ちっ……あたしは今、虫の居所が悪いんだよ。さっさとどっかにいかねーと冥府あのよ送りにすっぞ」


【 セイレン 】

「そ、そう言わずにっ、しばらくかくまってくださいっ……!」


 一転、すがるように催命翔鬼の背後に身を隠そうとする。


【 催命翔鬼 】

「はア~? なんだそれ、まぁ~た悪さでもやらかしたのかよ?」


【 セイレン 】

「そ、そうではありませんっ! ただ、その――」


【 ???? 】

師父おししょう! どこでございますかっ? 師父~~っ!!」


【 セイレン 】

「ドキッ……!?」


【 催命翔鬼 】

「ああン……?」


【 馬のような生き物 】

「メエエエエエェェ……」


 上空からの声に目を向ければ、巨大な翼を持つ馬にまたがった方士が飛び回っていた。

 愛らしい装束に身を包んだその童子は、〈小幻魔しょうげんま〉ことセイ・ギョクレン、すなわちセイレンの愛弟子に他ならない。


【 催命翔鬼 】

「……アレ、あんたの弟子だろ? なんでそんなにビビり散らかしてんだよ」


【 セイレン 】

「そ、それはっ……」


【 ギョクレン 】

「師父っ! 元に戻ったといっても、安心はできないのでございますっ! さあっ、うちが隅から隅まで、裏も表もしっかりと検査いたしますのでっ! 師父~~っ!」


【 催命翔鬼 】

「……だってよ。診てもらった方がいいんじゃねえの?」


【 セイレン 】

「ひ、ひとごとだと思ってっ! あの子は限度というものを知らないのですっ……う、ううっ……」


 身を抱くようにして、ガクガクと身震いしている。

 どうやら、すでに結構な“検査”を受けた後のようであった。


【 催命翔鬼 】

「フン、あたしの知ったことかよ。そら、さっさと行っちまいなっ」


【 セイレン 】

「そんな~っ! 私とカンナ殿の仲じゃありませんかっ……!」


 蹴落とそうとする足にしがみつき、必死に抵抗する。


【 催命翔鬼 】

「その名で呼ぶんじゃねえ! だいたい、あんたに恨みはあっても恩はねえよっ! 元はといえばあんたのせいで、あたしはっ――」


【 セイレン 】

「ちょっ、そ、そんな大声出したらっ……」


【 ギョクレン 】

「――あっ? そこにおられたのでございますね、師父っ!」


【 セイレン 】

「ひうううっ!?」


【 ギョクレン 】

「ややっ? 催命翔鬼殿も……はっ!? も、もしや、師父を〈常夜とこよの森〉へ連れていくつもりでございますかっ!? そうなのですねっ!」


【 催命翔鬼 】

「はアア!? そ、そんなわけねえだろっ……!」


【 ギョクレン 】

「許せませんっ……断じて許せないのでございますっ……! はああぁ~~っ!」


 怒りをあらわにいかづちを招き、そのまま一気に解き放つ――


 ――チュドォォンッ!!


【 催命翔鬼 】

「ちょ、待っ……おわああああ~~っ!?」


【 セイレン 】

「ちょ、私もいるんですけどっ――ひぇえええぇ~~っ!?」


 夜空に、雷鳴と悲鳴がともに響き渡った――

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