◆◆◆◆ 7-24 隠匿 ◆◆◆◆
賑わう宴会の場から、さらに離れて……
【 催命翔鬼 】
「フン……騒がしい連中だよ」
樹上に登り、手酌で盃を舐めているのは、自称・死神たる催命翔鬼である。
【 催命翔鬼 】
「短い人生、なにがそんなに楽しいんだか……」
酒を浴びるように飲み、佳肴をむさぼり、つかの間の生の喜びに浸る人々を見下ろしながら、そんな独り言をこぼしている。
*佳肴……美味い料理、酒のさかなの意。
【 催命翔鬼 】
「砕嶺山の野郎、いい格好しやがってっ……人間にでもなったつもりかよ?」
などと、ぶつくさ言っているところへ。
【 ???? 】
「――フフフ、一人酒とはわびしいですねえ、カンナ殿!」
【 催命翔鬼 】
「あア? ……なんだ、あんたかよ。くたばったんじゃなかったのかい、大軍師殿」
【 ???? 】
「フッ……残念ながら、我が才はいまだ天に容れられぬようです。ああ憎い、我が神算鬼謀が憎いっ……!」
枝に掴まりつつ身をくねらせているのは誰あろう、〈幻聖魔君〉こと藍・セイレンである。
先ごろまで、なんやかんやあって1/7くらいに縮んでいたが、今は元通りの寸法となっていた。
【 催命翔鬼 】
「ちっ……あたしは今、虫の居所が悪いんだよ。さっさとどっかにいかねーと冥府送りにすっぞ」
【 セイレン 】
「そ、そう言わずにっ、しばらくかくまってくださいっ……!」
一転、すがるように催命翔鬼の背後に身を隠そうとする。
【 催命翔鬼 】
「はア~? なんだそれ、まぁ~た悪さでもやらかしたのかよ?」
【 セイレン 】
「そ、そうではありませんっ! ただ、その――」
【 ???? 】
「師父! どこでございますかっ? 師父~~っ!!」
【 セイレン 】
「ドキッ……!?」
【 催命翔鬼 】
「ああン……?」
【 馬のような生き物 】
「メエエエエエェェ……」
上空からの声に目を向ければ、巨大な翼を持つ馬にまたがった方士が飛び回っていた。
愛らしい装束に身を包んだその童子は、〈小幻魔〉こと青・ギョクレン、すなわちセイレンの愛弟子に他ならない。
【 催命翔鬼 】
「……アレ、あんたの弟子だろ? なんでそんなにビビり散らかしてんだよ」
【 セイレン 】
「そ、それはっ……」
【 ギョクレン 】
「師父っ! 元に戻ったといっても、安心はできないのでございますっ! さあっ、うちが隅から隅まで、裏も表もしっかりと検査いたしますのでっ! 師父~~っ!」
【 催命翔鬼 】
「……だってよ。診てもらった方がいいんじゃねえの?」
【 セイレン 】
「ひ、ひとごとだと思ってっ! あの子は限度というものを知らないのですっ……う、ううっ……」
身を抱くようにして、ガクガクと身震いしている。
どうやら、すでに結構な“検査”を受けた後のようであった。
【 催命翔鬼 】
「フン、あたしの知ったことかよ。そら、さっさと行っちまいなっ」
【 セイレン 】
「そんな~っ! 私とカンナ殿の仲じゃありませんかっ……!」
蹴落とそうとする足にしがみつき、必死に抵抗する。
【 催命翔鬼 】
「その名で呼ぶんじゃねえ! だいたい、あんたに恨みはあっても恩はねえよっ! 元はといえばあんたのせいで、あたしはっ――」
【 セイレン 】
「ちょっ、そ、そんな大声出したらっ……」
【 ギョクレン 】
「――あっ? そこにおられたのでございますね、師父っ!」
【 セイレン 】
「ひうううっ!?」
【 ギョクレン 】
「ややっ? 催命翔鬼殿も……はっ!? も、もしや、師父を〈常夜の森〉へ連れていくつもりでございますかっ!? そうなのですねっ!」
【 催命翔鬼 】
「はアア!? そ、そんなわけねえだろっ……!」
【 ギョクレン 】
「許せませんっ……断じて許せないのでございますっ……! はああぁ~~っ!」
怒りをあらわに雷を招き、そのまま一気に解き放つ――
――チュドォォンッ!!
【 催命翔鬼 】
「ちょ、待っ……おわああああ~~っ!?」
【 セイレン 】
「ちょ、私もいるんですけどっ――ひぇえええぇ~~っ!?」
夜空に、雷鳴と悲鳴がともに響き渡った――
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