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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
212/421

◆◆◆◆ 7-8 処断 ◆◆◆◆

 ――血のように赤い夕焼けの下。

 帝都からやや離れた地に、宝玲山ほうれいざんから駆けつけた一軍が駐屯している。

 そこには、不穏な空気が漂っていた。


【 無頼漢ならずものたち 】

「おいっ、離しやがれ……!」


【 無頼漢たち 】

「こ、これが、仲間に対する仕打ちかよっ!」


【 無頼漢たち 】

「ううっ……ほ、ほんの出来心でっ……!」


 後ろ手に縛られた男たちが、地面に引き据えられて、口々に喚いている。


【 宝玲山の将兵 】

「…………」


 そんな様子を、将兵たちが見つめている。


【 宝玲山の将 】

「グルルッ……武侠ぶきょうの風上におけぬ輩よ……!」


【 宝玲山の将 】

「キャハハハ! かわいそ、かわいそー! 斬首! 斬首ぅー!」


【 宝玲山の将 】

「ケタケタ……所詮は無頼の徒……さっさと冥府あのよに送ってあげたら?」


 さげすむ者、同情する者、さまざまな様子。

 と、そこへ、二頭立ての馬車がやってきた。


【 ミズキ 】

「お待たせしました、兄弟姉妹みなさまがた――」


 御者を務める平服姿のミズキが一礼する。

 そして、馬車より降り立ったのは、


【 ヨスガ 】

「――すまぬな、遅くなった! よく働いてくれたな、皆の衆!」


 これまた、簡素な衣服をまとったヨスガであった。


【 宝玲山の将兵 】

「――――っ」


 将兵が手と手を重ね、一礼する。


【 ヨスガ 】

「中には、初めて見る顔もあるな。あらためて名乗ろう、我が〈天侠大聖てんきょうたいせい〉だ。――よろしく頼む」


 と、これも手を重ねて礼をする。


【 新参者たち 】

「…………っ!!」


 事情を知らぬ新参の将兵たちがざわめく。


【 新参者たち 】

「(あれが……天侠大聖だと?)」


【 新参者たち 】

「(女だとは聞いていたが……あんな、小娘だったとはっ……)」


 戸惑いの気配を感じつつ、


【 ヨスガ 】

「さて、そなたたち兄弟姉妹きょうだいのおかげで、こたびは難を逃れることができた。かたじけなく思う」


【 ヨスガ 】

「……それはそれとして、度の過ぎたあやまちは、たださねばならぬ」


 ヨスガが合図すると、馬車から新たな人影が降り立った。


【 古参の将兵 】

「――――っ」


 その姿に、息を呑む気配が広がる。

 仮面で顔を覆い、黒づくめの衣装を身にまとった長身の人物。

 鬼頭きとう刀と呼ばれる幅広の刀を手にしている。

 一見して、処刑人であることは明らかだった。


【 無頼漢ならずものたち 】

「ひっ……!」


 嫌な気配を覚えたのか、捕縛された男たちが戦慄する。


【 ヨスガ 】

「この者たちか?」


【 将 】

「は――隊伍を離れ、狼藉ろうぜきを行った者どもです」


 説明によれば。

 この無頼漢たちは、ごく最近、宝玲山に加わった一党で。

 昨夜の戦いにおいて、戦線を離脱したうえ、内城に侵入、強盗や略奪を働いたという。

 その後、逃走を図るも、追っ手に捕まった……という次第だった。


【 ヨスガ 】

「……なるほどな」


【 無頼漢たち 】

「しっ……仕方ねえだろっ! あんな化け物と戦うなんて、無理な相談だ……!」


【 無頼漢たち 】

「そ、そうだとも――」


【 ヨスガ 】

「確かに、命は誰でも惜しいものだ。ゆえに、逃走だけなら、罪には問わぬ」


【 ヨスガ 】

「――だが、その後、良民に迷惑をかけ、財貨を奪った件は断じて許さぬ」


【 無頼漢たち 】

「…………!」


【 ヨスガ 】

「命をもって、つぐなってもらおう」


【 処刑人 】

「…………」


 亡霊のごとき黒衣の処刑人が、ゆっくりと歩み寄ってくる。


【 無頼漢たち 】

「ひいいいっ……!?」


 と、そのとき。


【 ???? 】

「――ちょっと待っておくれ、おかしらッ!」


 馬のいななきと共に、雷鳴のような声が響き渡った。

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