◆◆◆◆ 7-8 処断 ◆◆◆◆
――血のように赤い夕焼けの下。
帝都からやや離れた地に、宝玲山から駆けつけた一軍が駐屯している。
そこには、不穏な空気が漂っていた。
【 無頼漢たち 】
「おいっ、離しやがれ……!」
【 無頼漢たち 】
「こ、これが、仲間に対する仕打ちかよっ!」
【 無頼漢たち 】
「ううっ……ほ、ほんの出来心でっ……!」
後ろ手に縛られた男たちが、地面に引き据えられて、口々に喚いている。
【 宝玲山の将兵 】
「…………」
そんな様子を、将兵たちが見つめている。
【 宝玲山の将 】
「グルルッ……武侠の風上におけぬ輩よ……!」
【 宝玲山の将 】
「キャハハハ! かわいそ、かわいそー! 斬首! 斬首ぅー!」
【 宝玲山の将 】
「ケタケタ……所詮は無頼の徒……さっさと冥府に送ってあげたら?」
さげすむ者、同情する者、さまざまな様子。
と、そこへ、二頭立ての馬車がやってきた。
【 ミズキ 】
「お待たせしました、兄弟姉妹――」
御者を務める平服姿のミズキが一礼する。
そして、馬車より降り立ったのは、
【 ヨスガ 】
「――すまぬな、遅くなった! よく働いてくれたな、皆の衆!」
これまた、簡素な衣服をまとったヨスガであった。
【 宝玲山の将兵 】
「――――っ」
将兵が手と手を重ね、一礼する。
【 ヨスガ 】
「中には、初めて見る顔もあるな。あらためて名乗ろう、我が〈天侠大聖〉だ。――よろしく頼む」
と、これも手を重ねて礼をする。
【 新参者たち 】
「…………っ!!」
事情を知らぬ新参の将兵たちがざわめく。
【 新参者たち 】
「(あれが……天侠大聖だと?)」
【 新参者たち 】
「(女だとは聞いていたが……あんな、小娘だったとはっ……)」
戸惑いの気配を感じつつ、
【 ヨスガ 】
「さて、そなたたち兄弟姉妹のおかげで、こたびは難を逃れることができた。かたじけなく思う」
【 ヨスガ 】
「……それはそれとして、度の過ぎたあやまちは、糺さねばならぬ」
ヨスガが合図すると、馬車から新たな人影が降り立った。
【 古参の将兵 】
「――――っ」
その姿に、息を呑む気配が広がる。
仮面で顔を覆い、黒づくめの衣装を身にまとった長身の人物。
鬼頭刀と呼ばれる幅広の刀を手にしている。
一見して、処刑人であることは明らかだった。
【 無頼漢たち 】
「ひっ……!」
嫌な気配を覚えたのか、捕縛された男たちが戦慄する。
【 ヨスガ 】
「この者たちか?」
【 将 】
「は――隊伍を離れ、狼藉を行った者どもです」
説明によれば。
この無頼漢たちは、ごく最近、宝玲山に加わった一党で。
昨夜の戦いにおいて、戦線を離脱したうえ、内城に侵入、強盗や略奪を働いたという。
その後、逃走を図るも、追っ手に捕まった……という次第だった。
【 ヨスガ 】
「……なるほどな」
【 無頼漢たち 】
「しっ……仕方ねえだろっ! あんな化け物と戦うなんて、無理な相談だ……!」
【 無頼漢たち 】
「そ、そうだとも――」
【 ヨスガ 】
「確かに、命は誰でも惜しいものだ。ゆえに、逃走だけなら、罪には問わぬ」
【 ヨスガ 】
「――だが、その後、良民に迷惑をかけ、財貨を奪った件は断じて許さぬ」
【 無頼漢たち 】
「…………!」
【 ヨスガ 】
「命をもって、償ってもらおう」
【 処刑人 】
「…………」
亡霊のごとき黒衣の処刑人が、ゆっくりと歩み寄ってくる。
【 無頼漢たち 】
「ひいいいっ……!?」
と、そのとき。
【 ???? 】
「――ちょっと待っておくれ、お頭ッ!」
馬のいななきと共に、雷鳴のような声が響き渡った。
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