◆◆◆◆ 7-5 安否 ◆◆◆◆
【 屍冥幽姫 】
「よ、よかったですっ……シシッ……私……ランブさんのこと、前々から、知っててっ……」
【 ランブ 】
「私を……?」
【 屍冥幽姫 】
「は、はいっ……とっても逞しくて、立派な御方だって聞いててっ……」
【 屍冥幽姫 】
「こうして、お会いできてっ、ますます慕わしくなりましたっ……シシシ……!」
【 ランブ 】
「そ……そうか」
他者から慕われて悪い気はしないものだ……これが、ふつうの相手ならば。
【 屍冥幽姫 】
「ああっ、この素晴らしい体躯の御方を、僵尸にして使役できたら……と思うと、それだけでワクワクが止まらない……シシシ……!」
【 ランブ 】
「…………」
やはり、だいぶ感性のズレがあるようだ。
【 屍冥幽姫 】
「それで――左手を切り落とされたと聞いて、すぐ、回収して……」
【 ランブ 】
「もしや、これは……僵尸なのか?」
【 屍冥幽姫 】
「はい、左手だけ、僵尸化しちゃいました……シシシ……!」
【 ランブ 】
「…………」
しちゃいました、で片付けられてはたまらない。
【 屍冥幽姫 】
「あっ……も、もしかして、怒りました……?」
【 ランブ 】
「いや……戸惑っているだけだ。わざわざ、私を驚かすためだけに、そこまで……?」
【 屍冥幽姫 】
「あっ、いえ、びっくりさせるのが目的では、なくて――いえ、一つの目的ではあるんですけれど、本当の目的は別にあって――」
【 ランブ 】
「…………っ?」
一方、そのころ……
女官たちは、宮城内の後片付けに駆り出されていた。
焼け落ちた宮殿や、あちこちに飛び散った鮮血の跡に茫然となりつつも、黙々と指示に従い、作業に励んでいる。
【 ホノカナ 】
「…………」
その中に、鱗・ホノカナの姿もあった。
【 他の女官 】
「ホノカナ、大丈夫なの?」
【 ホノカナ 】
「あっ、はいっ……平気、ですっ」
【 他の女官 】
「キツいなら、休んでていいのよ?」
【 ホノカナ 】
「い、いえっ! 大丈夫ですからっ……!」
ひどく疲れた様子なのは、昨夜の大立ち回りのせいでもあったが……それだけではない。
【 ホノカナ 】
(シキ、ちゃん……)
宿舎を抜け出し、ヨスガたちのところへ向かおうとしたホノカナを引き留めた、同僚女官の蓮華・シキ。
例の絡繰りに襲われて失神した彼女を、ホノカナは後髪を引かれる思いながらも後に残して、その場を去ったのだったが……
【 ホノカナ 】
(……どこに行っちゃったの?)
ことが片付いて戻ってきたときには、シキの姿はどこにもなかった。
女官の宿舎にも戻っておらず、誰も見た者はいないという。
【 ホノカナ 】
(きっと、どこかに身を隠してるとか……それだけだよね……そうだよね?)
そう信じたいと思いつつも、心は揺れるばかり。
昨夜からいろいろなことがありすぎて、多少は眠ったはずだが、まるで頭が働かない……
【 ???? 】
「よぉ、あんたがホノカナかいっ?」
【 ホノカナ 】
「――はひぃっ!?」
ふいに割れんばかりの大声で呼ばれて、ホノカナは思わずその場に飛び上がった。
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