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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
206/421

◆◆◆◆ 7-2 多事多難 ◆◆◆◆

【 ヨスガ 】

「……やれやれだな」


 自室に戻って腰を下ろし、ヨスガは重い息をついた。


【 ミズキ 】

「お見事でした、陛下」


【 ヨスガ 】

「フン……それもこれも、例の令旨りょうじのおかげであろう。国母さま、サマサマだな」


【 ミズキ 】

「それにしても、よもや、これほど思い切った手で来るとは……」


 あらかじめコウ太后から、レンスを通じて内々に打診があったのである。

 すなわち、自身は身を引くので、後はお任せする――と。


【 ヨスガ 】

「食えぬ御仁だ。本当に病なのかどうか……いずれにせよ、共倒れは避けたかったのであろうよ」


【 ミズキ 】

「そうですね、いかに〈二友にゆう〉といえども――」


 コウ太后を守護する二人の神仙、〈燃拳豪仙ねんけんごうせん〉と〈火煉公主かれんこうしゅ〉。

 彼女たちの力は強大ではあるにせよ、


【 ミズキ 】

「――宝玲山ほうれいざんの本隊と真っ向からぶつかれば、ただではすまないでしょうから」


【 ヨスガ 】

「……ひとまず鋭鋒を避けようという腹か。その上で、やっかいごとはこちらに押しつける……ありそうなことだな……あふぅ」


 つい、欠伸あくびがこぼれる。


【 ミズキ 】

「陛下、少しお休みになられた方が……」


【 ヨスガ 】

「それはそなたも同じであろう。あれ以来、寝ていないのではないか?」


【 ミズキ 】

「今、ここは戦場のようなものですので」


【 ヨスガ 】

「それはそうだ。しかし、いくさはまだ始まったばかりだぞ」


【 ミズキ 】

「まことに……問題は山積みです」


 ミズキは、ため息をこぼした。

 それも、無理はない。

 火災によって甚大な被害を被った帝都の復興……

 いまだ心服とは程遠い、文武百官の掌握……

 そして、さらには――


【 ミズキ 】

「――各地の勢力がどう動くか、さだかではありません」


【 ヨスガ 】

「……それもあるが、急ぎ対処せねばならぬ問題がある」


【 ミズキ 】

「南征軍――ですね」


【 ヨスガ 】

「うむ」


 宰相たる〈ラク・レツドウ〉と征南将軍〈レイ・グンム〉率いる、十万余の遠征軍。

 〈南寇〉こと〈スイ・ヤクモ〉を討つべく、はるばる〈岳南がくなん〉の地へと出征しているわけだが……


【 ヨスガ 】

「急ぎ、使者を立てねばなるまい。怪しげな噂が耳に入れば、厄介なことになるだろうからな」


【 ミズキ 】

「まことに……誰を差し向けましょう?」


【 ヨスガ 】

「むむ……それなりの者でなくてはならんな。吟味しよう! それから――」


【 ミズキ 】

宝玲山ほうれいざんの者たちを、放ってはおけません。すでに、あちこちで悶着を起こしているようですし……」


【 ヨスガ 】

「それもあるな……」


 まことに、寝ている暇もないほど、問題は積み重なっているのだった。

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