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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
204/421

◆◆◆◆ 6-109 燎氏の変(96) ◆◆◆◆

 一方、その頃――


【 ケイヨウ 】

「さてさて、少しは働かねば、立場がないからのォ」


 枢密使・〈八白ハチハク・ケイヨウ〉は、城外に配していた兵を動かし、内城へ向かっていた。

 その標的は、言うまでもなく……


【 ケイヨウ 】

「こたびの変事の首謀者、リョウ・ケンシとその一党、ことごとく捕らえよ。おォ、生死は問わぬゆえ、逃すでないぞ……!」




 兵が迫っているという知らせは、リョウ家の邸にも伝わっていた。


【 ケンシ 】

「…………」


 さしもの叛逆者ケンシも、顔面蒼白となっている。


【 他の官僚 】

「ど、どうなっているのだっ!? ことは成就寸前だったのではっ……」


【 他の官僚 】

「ど、どうするのだ、リョウ侍中じちゅう……!」


 ケンシの同志たる官僚たちは怯え、震えるばかり。


【 ケンシ 】

「……天師どのは、まだ戻らぬか?」


【 家臣 】

「は、ははっ……!」


【 ケンシ 】

「……そうか」


 ケンシは目を閉じた。

 恐らく、私兵を預けた家宰かさいも、他の家臣たちも、ことごとく討たれたのだろう。


【 ケンシ 】

「……大事だいじは破れたようだ。もはや見苦しい真似はすまい。貴殿たちも、覚悟を決められよ」


【 他の官僚 】

「そっ……そんなっ……」


【 逃げ腰の官僚 】

「わ、私は知らぬっ! 私はただ、巻き込まれただけなのだっ……!」


 茫然とする謀叛人たちのひとりが、その場を逃げ出そうとする――


 ――バシュウッ!


【 逃げ腰の官僚 】

「がぁっ……!?」


 逃亡を図った官僚が、その場に血しぶきを上げて倒れる。


【 他の官僚 】

「ひっ……!?」


【 ???? 】

「いけませんなぁ、今さら、舞台を下りようなどとは――無粋無粋!」


 兵を引き連れて入ってきたのは、一同の知った顔。


【 他の官僚 】

「き、貴様っ……コウ秘書官っ……!?」


【 レンス 】

「せっかくの千秋楽なのですから、最後までしっかり舞台の上で踊っていただかねば、困るというものです」


 そう言って微笑むのは、血に染まった剣を手にしたコウ・レンス。

 コウ太后の甥にして、彼らの同志……だったはずの男。


【 ケンシ 】

「……そうか。貴公は最初から、そのつもりだったのだな?」


【 レンス 】

「おお、さすがはリョウ侍中、堂々たるものですな! ええ、主演はそうでなくてはなりません!」


【 レンス 】

「さよう、すべては私の……いえいえ、“監督”によるはかりごとなれば――」


【 ケンシ 】

「……コウ太后か。病に伏していたというのも、我らを誘い出すためのき餌だったというのか……?」


【 レンス 】

「さぁ、そこまでは――ともあれ皆さま、どうか先走らぬよう! 貴方がたには、まだ役目がございますゆえ!」


【 官僚たち 】

「うっ、ううううっ……!」


【 ケンシ 】

「…………っ」


 リョウ・ケンシは、再び目を閉じた。




 大宙暦3133年(帝ヨスガ2年)、孟秋の月(7月)、13日未明……

 この時点をもって、〈リョウ氏の変〉は終幕したのである。



(第六幕:完)

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