◆◆◆◆ 6-109 燎氏の変(96) ◆◆◆◆
一方、その頃――
【 ケイヨウ 】
「さてさて、少しは働かねば、立場がないからのォ」
枢密使・〈八白・ケイヨウ〉は、城外に配していた兵を動かし、内城へ向かっていた。
その標的は、言うまでもなく……
【 ケイヨウ 】
「こたびの変事の首謀者、燎・ケンシとその一党、ことごとく捕らえよ。おォ、生死は問わぬゆえ、逃すでないぞ……!」
兵が迫っているという知らせは、燎家の邸にも伝わっていた。
【 ケンシ 】
「…………」
さしもの叛逆者ケンシも、顔面蒼白となっている。
【 他の官僚 】
「ど、どうなっているのだっ!? ことは成就寸前だったのではっ……」
【 他の官僚 】
「ど、どうするのだ、燎侍中……!」
ケンシの同志たる官僚たちは怯え、震えるばかり。
【 ケンシ 】
「……天師どのは、まだ戻らぬか?」
【 家臣 】
「は、ははっ……!」
【 ケンシ 】
「……そうか」
ケンシは目を閉じた。
恐らく、私兵を預けた家宰も、他の家臣たちも、ことごとく討たれたのだろう。
【 ケンシ 】
「……大事は破れたようだ。もはや見苦しい真似はすまい。貴殿たちも、覚悟を決められよ」
【 他の官僚 】
「そっ……そんなっ……」
【 逃げ腰の官僚 】
「わ、私は知らぬっ! 私はただ、巻き込まれただけなのだっ……!」
茫然とする謀叛人たちのひとりが、その場を逃げ出そうとする――
――バシュウッ!
【 逃げ腰の官僚 】
「がぁっ……!?」
逃亡を図った官僚が、その場に血しぶきを上げて倒れる。
【 他の官僚 】
「ひっ……!?」
【 ???? 】
「いけませんなぁ、今さら、舞台を下りようなどとは――無粋無粋!」
兵を引き連れて入ってきたのは、一同の知った顔。
【 他の官僚 】
「き、貴様っ……煌秘書官っ……!?」
【 レンス 】
「せっかくの千秋楽なのですから、最後までしっかり舞台の上で踊っていただかねば、困るというものです」
そう言って微笑むのは、血に染まった剣を手にした煌・レンス。
煌太后の甥にして、彼らの同志……だったはずの男。
【 ケンシ 】
「……そうか。貴公は最初から、そのつもりだったのだな?」
【 レンス 】
「おお、さすがは燎侍中、堂々たるものですな! ええ、主演はそうでなくてはなりません!」
【 レンス 】
「さよう、すべては私の……いえいえ、“監督”による謀なれば――」
【 ケンシ 】
「……煌太后か。病に伏していたというのも、我らを誘い出すための撒き餌だったというのか……?」
【 レンス 】
「さぁ、そこまでは――ともあれ皆さま、どうか先走らぬよう! 貴方がたには、まだ役目がございますゆえ!」
【 官僚たち 】
「うっ、ううううっ……!」
【 ケンシ 】
「…………っ」
燎・ケンシは、再び目を閉じた。
大宙暦3133年(帝ヨスガ2年)、孟秋の月(7月)、13日未明……
この時点をもって、〈燎氏の変〉は終幕したのである。
(第六幕:完)
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