◆◆◆◆ 6-98 燎氏の変(84) ◆◆◆◆
【 ホノカナ 】
「…………」
【 ???? 】
「……ぅ、うぅ……ぅぅ……」
……どこからか、泣き声がする。
誰かが、絞り出すようにして、涙を流している……
【 ホノカナ 】
(これは……泣いているのは……誰……?)
耳を澄ませても、わからない。
ただただ、悲哀の念だけが伝わってくる。
【 ホノカナ 】
(もしかして……アルカナ? ごめんね、ひとりぼっちにしちゃって……わたし、悪いお姉ちゃんだね……)
【 ホノカナ 】
(でも、あのときは、そうするしかなかったの……だって、わたしには……)
【 声 】
「……おい、いいかげんに起きよっ……」
【 ホノカナ 】
「ン……ンン……もうちょっとぉ……」
【 声 】
「ええいっ、さっさと起きぬかっ!」
ギュウウウ~
【 ホノカナ 】
「……ンンッ!?」
左右の頬を引っ張られる痛みに、ホノカナは目を覚ました。
【 ホノカナ 】
「あ……あっ、ごめんね……お姉ちゃん、寝坊しちゃった……」
【 ヨスガ 】
「いつまで寝ぼけておるのだ、そなたは……!」
【 ホノカナ 】
「ンン~~ッ!?」
再びほっぺたをつままれ、ようやく意識がはっきりしてくる。
【 ホノカナ 】
「あっ……ヨスガ、姉さまっ?」
【 ヨスガ 】
「いかにも我である、義姉である! まったく、呑気なことよ……周りを見てみよ」
呆れ顔のヨスガにうながされ、周囲を見渡すと……
【 ホノカナ 】
「…………っ!?」
――それはまさしく、悪夢の光景そのものだった。
【 我欲にまみれた叛乱兵たち 】
「……ウォ……オオ、オオオ……!」
【 妖魔の残滓 】
「……ヒヒ……クヒヒ……ヒィアァ……!」
【 絡繰りの成れの果て 】
「……ギィ……ギギ……ギィアァ……!」
兵や妖魔、異形の絡繰りたちが入り乱れ、互いに殺戮し合っている。
【 ホノカナ 】
「な、なんなんですか、これっ……!?」
思わず身をすくめるホノカナ……
しかし、よく見れば兵や化け物たちはどこか朧で、彼女たちに注意を払う様子もない。
【 ヨスガ 】
「よくはわからぬが……これが、あの〈千陣軍魔〉とやらの内的世界の中なのであろう。違うか、セイレン?」
【 セイレン 】
『おそらく……いや、たぶん、そうでありましょう! ええ、だいたいにおいては!』
【 ホノカナ 】
「まるっきり心もとない! ……って、あれ、セイレンさん、どこにいるんですかっ?」
セイレンの声はすれども、姿は見えない。
【 セイレン 】
『ここです、ここっ……あなたがたの下!』
【 ホノカナ 】
「へっ? 下って……」
ヨスガたちは、野原に敷かれた絨毯の上にいた。
もしや、その下敷きになっているのかと思いきや……
【 ホノカナ 】
「!? この、模様っ……」
絨毯の図柄が、セイレンの似顔絵になっている……!
【 ヨスガ 】
「つまり今のこやつは、絨毯になっているということだな」
と、こともなげに言うヨスガ。
【 ホノカナ 】
「……っ、なるほど、ギリギリありえますね!」
ホノカナも頷いた。
【 セイレン 】
『そこはもうちょっとビックリしてくれてもいいんじゃないですかね!? 敷き物ですよ! 私、敷き物になってるんですけどぉ!』
【 ホノカナ 】
「でも、前は本になってたし、さっきはお人形みたいになってたし……あんまり意外性ないかなって」
【 ヨスガ 】
「さしづめ、副軍師補佐の気遣いではないか? 敷き物がないのはなにかと不便ゆえな」
【 ホノカナ 】
「ですよね~」
【 セイレン 】
『納得するところですかね!? ううっ、私は本来、ついてくる予定ではなかったのに……ブツブツ……』
【 ヨスガ 】
「ともあれ、ここで油を売っていても仕方あるまい。断つべき〈糸〉とやらはどこにあるのだ?」
【 セイレン 】
『うう~ん……』
【 ヨスガ 】
「…………」
【 ホノカナ 】
「…………」
【 セイレン 】
『ん~、わかりませんね!(キッパリ)』
【 ヨスガ 】
「そうか。では探さねばなるまい、ゆくぞホノカナ!」
【 ホノカナ 】
「はい、ヨスガ姉さま!」
【 セイレン 】
『そこ、当たり前みたいに流さないでくれません!? あっ、そんな、ぐるぐるって丸められるのって、なんだか変な感じぃぃ……』
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