◆◆◆◆ 6-91 燎氏の変(77) ◆◆◆◆
一方、鉄虎門においては……
【 千陣軍魔 】
「……ギ……ァ……アァ……アアァ……」
天を突かんばかりの火柱がゴウゴウと立ち昇っている。
巨体は炭化し、数百もいた兵たちはあえなく崩れ落ちている。
【 カズサ 】
「……っ、これならっ――」
【 ランブ 】
「うむっ……」
【 ゼンキョク 】
「……ミズキ殿」
【 ミズキ 】
「ええ……これは、先ほどの妖魔以上……!」
【 カズサ 】
「――っ!?」
【 千陣軍魔 】
「ギイイィィアアアアアァァ……!!」
焼き払われたはずの千陣軍魔の巨体が、たちどころに再生していく……!
【 エキセン 】
「ちいっ……例の絡繰りと同じかっ……!?」
【 ランブ 】
「ぬうっ……!」
【 千陣軍魔 】
「……ヒィ……ハハッ……グウゥ……アアァ……!」
朽ちたはずの兵たちも次々と新たに“生えて”きて、奇声を放つ。
そんな巨大な化け物が、地を揺らしながら、城門へとにじり寄ってくる……
【 カズサ 】
「くっ……こ、このぉっ……!」
【 ゼンキョク 】
「これは……万策、尽きたかもしれませんね」
ゼンキョクの声音が震えている。
ふだんは必要以上なほどに落ち着いている彼女だけに、より事態の深刻さを際立たせる。
【 ミズキ 】
「…………っ」
迫り来る異形を凝視しながら、ミズキがカズサに告げる。
【 ミズキ 】
「閃の姉妹――剣を一本、貸してください」
【 カズサ 】
「えっ……!? で、でもっ、大姐はっ……」
【 ランブ 】
「例の〈誓約〉がっ――いや、まさか……!?」
【 ミズキ 】
「……他に手段がないのなら、やるしかありません」
かつて、謀叛人の娘として処罰されたミズキ。
彼女は雪の姓を奪われ、剣を封じられることで、かろうじて命を許された。
その誓約をあえて破ろうとすれば――
その結果は、死あるのみ。
【 ミズキ 】
「かつて〈天下七剣〉とうたわれた我が剣……全力で叩き込めば、斃せずとも、隙は生じるでしょう」
【 ミズキ 】
「その後のことは……お任せします」
【 エキセン 】
「い、いや――待て、俺の、“切り札”を使えばっ……!」
【 ミズキ 】
「例のあれは、最後の手段として取っておいてください――下手をしたら、宮城ごと吹っ飛んでしまうでしょう?」
【 エキセン 】
「……っ、ぬぅ……」
【 カズサ 】
「大姐っ……」
【 ミズキ 】
「…………」
【 カズサ 】
「…………っ」
カズサは迷いつつも、一振りの剣をミズキに手渡した。
【 ランブ 】
「……ミズキ殿っ……」
【 ゼンキョク 】
「――――」
【 ミズキ 】
(……ヨスガ……)
目を閉じ、剣を握り締めるミズキ。
ひどく重く、痺れるような悪寒が走るのは、誓約の呪いゆえか。
【 ミズキ 】
(私は……あなたを守れなかった。あのひとに……姉さまに、託されておきながら)
【 ミズキ 】
(ならばせめて――)
【 ミズキ 】
(あなたのゆく覇道を切り開く、ただ一振りの剣として、役目を果たしましょう)
【 ミズキ 】
「――――っ!」
決意を込めて、開眼する。
【 ミズキ 】
「天も地もご照覧あれ――我こそは、人呼んで〈紅雪華〉!」
【 ミズキ 】
「すなわち、雪・レイセイが義妹たる、雪――」
ミズキが誓約を破らんとした、その刹那――
【 ???? 】
「――しゃらくさいんだよ、小娘がっ!」
【 ミズキ 】
「――――っ!?」
――ズシャアアッ!!
【 千陣軍魔 】
「グギイイィッ――!?」
巨体が、揺れた。
【 カズサ 】
「――っ! あれはっ――」
【 新手の兵士たち 】
「おおおおおッ……!!」
千陣軍魔の背後から、喊声を上げて突進してくる一軍があった。
その先頭に立つのは、大柄な女将軍――
【 ???? 】
「こんなところでくたばるような腰抜けに育てた覚えはないよっ! 命の捨て所もわからないような娘っ子は、引っ込んでなっ!」
【 ミズキ 】
「……っ、阿姨……!」
【 ???? 】
「さぁ、ひと暴れといこうじゃないかっ、野郎どもっ! この〈白銀夜叉〉に続きなっ!!」
【 新手の兵士たち 】
「――おおおっ!」
官軍の旗を掲げながらも、とても官兵とは思えない雑多な格好の兵たちが、鬨の声を上げながら突き進んでくる。
【 エキセン 】
「おお――本隊、かっ……!」
【 ゼンキョク 】
「おやおや、ずいぶんとお早いご到着……」
宝玲山より、官軍に偽装して駆けつけた一軍。
天侠大聖、すなわちヨスガの私軍が、今ここに参戦!
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