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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
186/421

◆◆◆◆ 6-91 燎氏の変(77) ◆◆◆◆

 一方、鉄虎門においては……


【 千陣軍魔 】

「……ギ……ァ……アァ……アアァ……」


 天を突かんばかりの火柱がゴウゴウと立ち昇っている。

 巨体は炭化し、数百もいた兵たちはあえなく崩れ落ちている。


【 カズサ 】

「……っ、これならっ――」


【 ランブ 】

「うむっ……」


【 ゼンキョク 】

「……ミズキ殿」


【 ミズキ 】

「ええ……これは、先ほどの妖魔ばけもの以上……!」


【 カズサ 】

「――っ!?」


【 千陣軍魔 】

「ギイイィィアアアアアァァ……!!」


 焼き払われたはずの千陣軍魔の巨体が、たちどころに再生していく……!


【 エキセン 】

「ちいっ……例の絡繰りと同じかっ……!?」


【 ランブ 】

「ぬうっ……!」


【 千陣軍魔 】

「……ヒィ……ハハッ……グウゥ……アアァ……!」


 朽ちたはずの兵たちも次々と新たに“生えて”きて、奇声を放つ。

 そんな巨大な化け物が、地を揺らしながら、城門へとにじり寄ってくる……


【 カズサ 】

「くっ……こ、このぉっ……!」


【 ゼンキョク 】

「これは……万策、尽きたかもしれませんね」


 ゼンキョクの声音が震えている。

 ふだんは必要以上なほどに落ち着いている彼女だけに、より事態の深刻さを際立たせる。


【 ミズキ 】

「…………っ」


 迫り来る異形を凝視しながら、ミズキがカズサに告げる。


【 ミズキ 】

セン姉妹きょうだい――剣を一本、貸してください」


【 カズサ 】

「えっ……!? で、でもっ、大姐おねえさまはっ……」


【 ランブ 】

「例の〈誓約〉がっ――いや、まさか……!?」


【 ミズキ 】

「……他に手段がないのなら、やるしかありません」


 かつて、謀叛人の娘として処罰されたミズキ。

 彼女はセツの姓を奪われ、剣を封じられることで、かろうじて命を許された。

 その誓約をあえて破ろうとすれば――

 その結果は、死あるのみ。


【 ミズキ 】

「かつて〈天下七剣てんかしちけん〉とうたわれた我が剣……全力で叩き込めば、たおせずとも、隙は生じるでしょう」


【 ミズキ 】

「その後のことは……お任せします」


【 エキセン 】

「い、いや――待て、俺の、“切り札”を使えばっ……!」


【 ミズキ 】

「例のあれは、最後の手段として取っておいてください――下手をしたら、宮城ごと吹っ飛んでしまうでしょう?」


【 エキセン 】

「……っ、ぬぅ……」


【 カズサ 】

大姐おねえさまっ……」


【 ミズキ 】

「…………」


【 カズサ 】

「…………っ」


 カズサは迷いつつも、一振りの剣をミズキに手渡した。


【 ランブ 】

「……ミズキ殿っ……」


【 ゼンキョク 】

「――――」


【 ミズキ 】

(……ヨスガ……)


 目を閉じ、剣を握り締めるミズキ。

 ひどく重く、痺れるような悪寒が走るのは、誓約の呪いゆえか。


【 ミズキ 】

(私は……あなたを守れなかった。あのひとに……姉さまに、託されておきながら)


【 ミズキ 】

(ならばせめて――)


【 ミズキ 】

(あなたのゆく覇道を切り開く、ただ一振りの剣として、役目を果たしましょう)


【 ミズキ 】

「――――っ!」


 決意を込めて、開眼する。


【 ミズキ 】

「天も地もご照覧しょうらんあれ――我こそは、人呼んで〈紅雪華こうせっか〉!」


【 ミズキ 】

「すなわち、セツ・レイセイが義妹いもうとたる、セツ――」


 ミズキが誓約を破らんとした、その刹那――


【 ???? 】

「――しゃらくさいんだよ、小娘がっ!」


【 ミズキ 】

「――――っ!?」


 ――ズシャアアッ!!


【 千陣軍魔 】

「グギイイィッ――!?」


 巨体が、揺れた。


【 カズサ 】

「――っ! あれはっ――」


【 新手の兵士たち 】

「おおおおおッ……!!」


 千陣軍魔の背後から、喊声かんせいを上げて突進してくる一軍があった。

 その先頭に立つのは、大柄な女将軍――


【 ???? 】

「こんなところでくたばるような腰抜けに育てた覚えはないよっ! 命の捨て所もわからないような娘っ子は、引っ込んでなっ!」


【 ミズキ 】

「……っ、阿姨おばうえ……!」


【 ???? 】

「さぁ、ひと暴れといこうじゃないかっ、野郎どもっ! この〈白銀夜叉しろがねやしゃ〉に続きなっ!!」


【 新手の兵士たち 】

「――おおおっ!」


 官軍の旗を掲げながらも、とても官兵とは思えない雑多な格好の兵たちが、ときの声を上げながら突き進んでくる。


【 エキセン 】

「おお――本隊、かっ……!」


【 ゼンキョク 】

「おやおや、ずいぶんとお早いご到着……」


 宝玲山ほうれいざんより、官軍に偽装して駆けつけた一軍。

 天侠大聖てんきょうたいせい、すなわちヨスガの私軍が、今ここに参戦!

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