◆◆◆◆ 6-88 燎氏の変(74) ◆◆◆◆
【 カズサ 】
「…………っ!?」
眼下の黒い霧が晴れるや、月明かりの下に浮かび上がったのは、あまりにも異様な、まがまがしい代物であった。
【 ???? 】
「オ゛、オ゛、オ゛オ゛オ゛……!!」
【 カズサ 】
「な――なんなの、あれはっ……!?」
しいて言うならそれは、巨大な肉の塊であろう。
その表面からは、異様なものがたくさん“生えて”いる――
【 ???? 】
「――キヒ……イイ……イイィアアアアッ……!!」
【 ???? 】
「――ヨコ、セ――カネ――オンナ――オタカラ――ア、アアア……」
人の形をしつつも、全身に無数の口を持つ奇怪なものが、面妖な高笑いを放ちながら、手に武器を構えている。
そんな異様な物体が、数百単位で肉塊から生えているのだ。
それは、一つの塊でありながら、なおかつ軍でもあるのだった。
【 カズサ 】
「……っ、うっ、ぐっ……!」
カズサは思わず、吐き気を催した。
ひと目見ただけで狂気に陥りそうな異形の姿に加えて、放つ声というか音もまた、ひどく耳障りで、奇怪そのものである。
【 カズサ 】
(これは……ミズキ大姐たちが撃退したという、妖魔……!?)
“それ”は、城門目がけて、ゆっくりと動き始めた。
ズルズルと、巨体を引きずる音を響かせつつ。
【 守備兵 】
「ひいいっ……!?」
この世ならざる巨大な怪異を目の当たりにして、守兵たちは怯えの色を隠せずにいる。
そんなところへ、
【 異様なる兵たち 】
「――アアア――キイイィアアアア……!!」
――ドドドッ……!!
肉塊から生えた兵士たちが弓をつがえ、一斉に射放ってくる!
【 カズサ 】
「くっ……このっ!」
怒涛の勢いで飛来する矢を、左右の剣で打ち払うカズサ。
しかし、茫然自失の守兵らはそうもいかず……
ドシュッ! ドッ! ドドッ!!
【 守備兵 】
「ぐええっ……!?」
【 守備兵 】
「ひっ、ぎゃあああっ……!」
なすすべもなく矢に貫かれ、城壁から落下していく。
【 カズサ 】
「……っ! 皆っ、身を守りなさいっ……!」
雨あられと飛んでくる矢を片端から切り払うカズサだったが、一軍を相手に一人ではどうにもならない。
【 カズサ 】
「っ! しまっ――」
体勢を崩したところに、矢が降ってきて――
――ブォンッ!
【 カズサ 】
「っ! 大姐っ……!」
【 ランブ 】
「無事か、カズサ殿!」
駆けつけたランブの大斧の一閃で、ことごとく矢が吹き飛ばされていた。
片腕となっても、なおその一撃は尋常ならざるものがある。
【 カズサ 】
「は、はいっ、助かりました! でも――」
【 ランブ 】
「これはっ……容易では、ないなっ……」
悪夢のような光景を目の当たりにして、さしものランブも気を呑まれている。
彼女たちですら怖気を覚えるのだから、並みの守備兵たちではとても立ち向かえるものではない。
【 守備隊長 】
「……っ、凪公っ……」
【 ランブ 】
「隊長殿、部隊をまとめ、下がられよ。“あれ”の相手は、我らがつとめよう――」
【 守備隊長 】
「し、しかしっ……」
【 カズサ 】
「恥じることはないわ! あなたたちの役目は、人から城門を守ること……ここは、わたしたちに任せておきなさい!」
【 守備隊長 】
「……っ、面目ありませんっ……!」
守備隊長は残った兵とともに、負傷者を抱えて下がっていく。
【 カズサ 】
「陛下はどちらにっ?」
【 ランブ 】
「侍衛たちがお守りしているが……“これ”が、門を超えては――それも危うい」
【 カズサ 】
「なるほど……是が非でも、ここで食い止めねば……ということですね!」
【 ランブ 】
「うむ――」
身構えるランブとカズサ。
【 異様なる兵たち 】
「ギ――ア――アアアアァァ……!!」
異形の兵たちが、奇声を上げながら城門へと迫ってくる――
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