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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
183/421

◆◆◆◆ 6-88 燎氏の変(74) ◆◆◆◆

【 カズサ 】

「…………っ!?」


 眼下の黒い霧が晴れるや、月明かりの下に浮かび上がったのは、あまりにも異様な、まがまがしい代物であった。


【 ???? 】

「オ゛、オ゛、オ゛オ゛オ゛……!!」


【 カズサ 】

「な――なんなの、あれはっ……!?」


 しいて言うならそれは、巨大な肉の塊であろう。

 その表面からは、異様なものがたくさん“生えて”いる――


【 ???? 】

「――キヒ……イイ……イイィアアアアッ……!!」


【 ???? 】

「――ヨコ、セ――カネ――オンナ――オタカラ――ア、アアア……」


 人の形をしつつも、全身に無数の口を持つ奇怪なものが、面妖な高笑いを放ちながら、手に武器を構えている。

 そんな異様な物体が、数百単位で肉塊から生えているのだ。

 それは、一つの塊でありながら、なおかつ軍でもあるのだった。


【 カズサ 】

「……っ、うっ、ぐっ……!」


 カズサは思わず、吐き気を催した。

 ひと目見ただけで狂気に陥りそうな異形の姿に加えて、放つ声というか音もまた、ひどく耳障りで、奇怪そのものである。


【 カズサ 】

(これは……ミズキ大姐おねえさまたちが撃退したという、妖魔ばけもの……!?)


 “それ”は、城門目がけて、ゆっくりと動き始めた。

 ズルズルと、巨体を引きずる音を響かせつつ。


【 守備兵 】

「ひいいっ……!?」


 この世ならざる巨大な怪異を目の当たりにして、守兵たちは怯えの色を隠せずにいる。

 そんなところへ、


【 異様なる兵たち 】

「――アアア――キイイィアアアア……!!」


 ――ドドドッ……!!


 肉塊から生えた兵士たちが弓をつがえ、一斉に射放ってくる!


【 カズサ 】

「くっ……このっ!」


 怒涛の勢いで飛来する矢を、左右の剣で打ち払うカズサ。

 しかし、茫然自失の守兵らはそうもいかず……


 ドシュッ! ドッ! ドドッ!!


【 守備兵 】

「ぐええっ……!?」


【 守備兵 】

「ひっ、ぎゃあああっ……!」


 なすすべもなく矢に貫かれ、城壁から落下していく。


【 カズサ 】

「……っ! 皆っ、身を守りなさいっ……!」


 雨あられと飛んでくる矢を片端から切り払うカズサだったが、一軍を相手に一人ではどうにもならない。


【 カズサ 】

「っ! しまっ――」


 体勢を崩したところに、矢が降ってきて――


 ――ブォンッ!


【 カズサ 】

「っ! 大姐おねえさまっ……!」


【 ランブ 】

「無事か、カズサ殿!」


 駆けつけたランブの大斧の一閃で、ことごとく矢が吹き飛ばされていた。

 片腕となっても、なおその一撃は尋常ならざるものがある。


【 カズサ 】

「は、はいっ、助かりました! でも――」


【 ランブ 】

「これはっ……容易では、ないなっ……」


 悪夢のような光景を目の当たりにして、さしものランブも気を呑まれている。

 彼女たちですら怖気を覚えるのだから、並みの守備兵たちではとても立ち向かえるものではない。


【 守備隊長 】

「……っ、ナギ公っ……」


【 ランブ 】

「隊長殿、部隊をまとめ、下がられよ。“あれ”の相手は、我らがつとめよう――」


【 守備隊長 】

「し、しかしっ……」


【 カズサ 】

「恥じることはないわ! あなたたちの役目は、人から城門を守ること……ここは、わたしたちに任せておきなさい!」


【 守備隊長 】

「……っ、面目ありませんっ……!」


 守備隊長は残った兵とともに、負傷者を抱えて下がっていく。


【 カズサ 】

「陛下はどちらにっ?」


【 ランブ 】

「侍衛たちがお守りしているが……“これ”が、門を超えては――それも危うい」


【 カズサ 】

「なるほど……是が非でも、ここで食い止めねば……ということですね!」


【 ランブ 】

「うむ――」


 身構えるランブとカズサ。


【 異様なる兵たち 】

「ギ――ア――アアアアァァ……!!」


 異形の兵たちが、奇声を上げながら城門へと迫ってくる――

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