◆◆◆◆ 6-85 燎氏の変(71) ◆◆◆◆
――フワァ……
【 ミズキ 】
「…………っ!?」
シジョウの四肢を吹き飛ばす勢いで放たれた、強烈無比の空刀……
だが、そんなミズキ渾身の一撃は、標的に届く前に雲散霧消していた。
シジョウの方術――ではない。
そのような離れ業が可能なのは、およそ常人であるはずもなく――
【 ???? 】
「悪いねえ、お嬢ちゃん――」
シジョウをかばうように立っているのは、徒手空拳の女。
ありえない速度で割り込んできて、空刀を片手で受け止め……いや、打ち消したのである。
【 ミズキ 】
「! あなたは――燃拳豪仙……!?」
燃拳豪仙こと、燃・カツミ……
人を超えた存在、すなわち神仙である。
【 カツミ 】
「ランハに頼まれてね。こいつを生かしたまま、連れてくるようにってさ」
【 ミズキ 】
「……譲ってはいただけないのでしょうね」
【 カツミ 】
「そうだなあ……そうだ、なんならあたしと一勝負してみるかい? 一本取れたら、譲ってやってもいいぜ!」
【 ミズキ 】
「……っ、ご遠慮しておきます」
【 エキセン 】
「(……いいのかっ? ミズキ殿……)」
【 ミズキ 】
「(……仕方ありません。相手が相手ですから)」
捨て身でかかれば、あるいはかすり傷くらいは与えられるかもしれないが……そこまでだろう。
神仙と生身の人間とでは、それほど隔絶した差があるのだ。
【 カツミ 】
「そうかい? 残念だな~。まあでも、お前さんは素質があるよ! さすがは〈天下七剣〉だっけ? 剣を封じられてるのに、その腕だもんな!」
【 カツミ 】
「あ、今度、あたしが本家本元の〈燃家拳〉を指南してやろうか?」
【 ミズキ 】
「……機会がありましたら、ぜひ」
【 カツミ 】
「おう! じゃあ、こいつは預かっていくよ。なぁに、ランハがいらないってことになったら、すぐに返してやるからさ!」
そう告げると、カツミは軽々とシジョウを抱え上げる。
【 シジョウ 】
「……っ、燃拳豪仙様、私は――」
【 カツミ 】
「おっと、喋ると舌噛むぜ? じゃあな――」
【 シジョウ 】
「…………っ!」
――ヒュウンッ!
そのまま、カツミはシジョウを小脇に抱えたまま、電光のような速度でその場を立ち去っていった。
【 ミズキ 】
「…………っ」
唇を噛み、拳を握り締めるミズキ。
【 エキセン 】
「ミズキ殿……」
【 ミズキ 】
「いえ……大丈夫です。あの者を取り逃がしたのは痛手ですが……陛下に、報告に参りましょう」
と、ミズキらが立ち去ろうとした矢先、
――ヒュンッ!
【 エキセン 】
「うわっ!?」
【 カツミ 】
「――そうそう、言い忘れてたっ」
これまた電光石火の勢いで、カツミが戻ってきた。
そのすさまじい速さたるや、抱えられたシジョウは身がもたず、あえなく泡を吹いて失神しているほどである。
【 カツミ 】
「急いだほうがいいぜ。鉄虎門だっけ? 厄介なことになってるみたいだからさあ――いろんな意味でっ!」
――ドヒュウンッ!
それだけ口早に告げると、カツミは再び姿を消した。
【 ミズキ 】
「……っ、急ぎましょう!」
【 エキセン 】
「お、おおっ……!」
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