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【第一部完結】薄明のエンプレス~大宙帝国興亡記~  作者: おおがみ陣矢
第一部 「落華流帝」編
180/421

◆◆◆◆ 6-85 燎氏の変(71) ◆◆◆◆

 ――フワァ……


【 ミズキ 】

「…………っ!?」


 シジョウの四肢を吹き飛ばす勢いで放たれた、強烈無比の空刀そらがたな……

 だが、そんなミズキ渾身の一撃は、標的に届く前に雲散霧消うんさんむしょうしていた。

 シジョウの方術――ではない。

 そのような離れ業が可能なのは、およそ常人であるはずもなく――


【 ???? 】

「悪いねえ、お嬢ちゃん――」


 シジョウをかばうように立っているのは、徒手空拳としゅくうけんの女。

 ありえない速度で割り込んできて、空刀を片手で受け止め……いや、打ち消したのである。


【 ミズキ 】

「! あなたは――燃拳豪仙ねんけんごうせん……!?」


 燃拳豪仙ねんけんごうせんこと、ネン・カツミ……

 人を超えた存在、すなわち神仙である。


【 カツミ 】

「ランハに頼まれてね。こいつを生かしたまま、連れてくるようにってさ」


【 ミズキ 】

「……譲ってはいただけないのでしょうね」


【 カツミ 】

「そうだなあ……そうだ、なんならあたしと一勝負してみるかい? 一本取れたら、譲ってやってもいいぜ!」


【 ミズキ 】

「……っ、ご遠慮しておきます」


【 エキセン 】

「(……いいのかっ? ミズキ殿……)」


【 ミズキ 】

「(……仕方ありません。相手が相手ですから)」


 捨て身でかかれば、あるいはかすり傷くらいは与えられるかもしれないが……そこまでだろう。

 神仙と生身の人間とでは、それほど隔絶かくぜつした差があるのだ。


【 カツミ 】

「そうかい? 残念だな~。まあでも、お前さんは素質があるよ! さすがは〈天下七剣てんかしちけん〉だっけ? 剣を封じられてるのに、その腕だもんな!」


【 カツミ 】

「あ、今度、あたしが本家本元の〈燃家拳ねんかけん〉を指南してやろうか?」


【 ミズキ 】

「……機会がありましたら、ぜひ」


【 カツミ 】

「おう! じゃあ、こいつは預かっていくよ。なぁに、ランハがいらないってことになったら、すぐに返してやるからさ!」


 そう告げると、カツミは軽々とシジョウを抱え上げる。


【 シジョウ 】

「……っ、燃拳豪仙様、私は――」


【 カツミ 】

「おっと、喋ると舌噛むぜ? じゃあな――」


【 シジョウ 】

「…………っ!」


 ――ヒュウンッ!


 そのまま、カツミはシジョウを小脇に抱えたまま、電光のような速度でその場を立ち去っていった。


【 ミズキ 】

「…………っ」


 唇を噛み、拳を握り締めるミズキ。


【 エキセン 】

「ミズキ殿……」


【 ミズキ 】

「いえ……大丈夫です。あの者を取り逃がしたのは痛手ですが……陛下に、報告に参りましょう」


 と、ミズキらが立ち去ろうとした矢先、


 ――ヒュンッ!


【 エキセン 】

「うわっ!?」


【 カツミ 】

「――そうそう、言い忘れてたっ」


 これまた電光石火の勢いで、カツミが戻ってきた。

 そのすさまじい速さたるや、抱えられたシジョウは身がもたず、あえなく泡を吹いて失神しているほどである。


【 カツミ 】

「急いだほうがいいぜ。鉄虎門てっこもんだっけ? 厄介なことになってるみたいだからさあ――いろんな意味でっ!」


 ――ドヒュウンッ!


 それだけ口早に告げると、カツミは再び姿を消した。


【 ミズキ 】

「……っ、急ぎましょう!」


【 エキセン 】

「お、おおっ……!」

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